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落ちこぼれと呼ばれた超越者  作者: 四季崎弥真斗
3章 漆黒の暗殺者
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打ち上げ

今年最初の投稿です。今年もよろしくお願いします。

 救出した商人達を連れて冒険者ギルドへと辿り着くと、ギルドマスターのザーギィ自ら煉太郎達を出迎えてくれた。


 「おお、無事だったか……!」


 「お爺ちゃん!」


 祖父であるザーギィに泣きながら抱き付く孫娘。


 「良かった……無事で本当に良かった……」


 孫娘が無事に帰ってきたことに、流石にギルドマスターと言えども孫娘が心配だったようで、思わず涙を流す。


 「お前が無事で本当に良かった。娘達も心配していたぞ。さあ、早く顔を見せてあげなさい」


 「お父さんとお母さんが……直ぐに帰ります!」


 ザーギィは孫娘に両親に会いに行くよう促す。


 「『守護の剣』の皆さん、そしてレンタロウさん達も、助けてくれてありがとうございます」


 孫娘は礼を言うと、そのまま行ってしまう。


 孫娘が出て行った後、改めてザーギィは煉太郎達と向き合うと、深々と頭を下げた。


 「孫娘を救ってくれたこと、感謝する」


 「気にすんじゃないよ。商人達を救出出来たのはレンタロウ達のお陰なんだからね」


 そう言って、視線を煉太郎達に向けるラウア。


 ラウアの言う通り、煉太郎達がいなければ今頃商人達はどうなっていたか分からない。最悪の場合は死人が出ていただろう。


 「君達のお陰で助かった。約束通り君達の冒険者ランクをCに昇格させよう。それとお前達がこの街に滞在している間は可能な限り後ろ盾になることを約束しよう」


 ザーギィの言葉に周囲がざわつく。僅か2日でランクCまで昇格。普通だったらあり得ない早さの昇格だった。


 それにギルドマスターの後ろ盾が出来るとなると、誰もが羨む状況であった。


 「さあ、皆酒場に集まれ。これから打ち上げだ。今夜は儂の奢りだ」


 ザーギィの言葉に冒険者達は歓喜の声を上げる。


 酒場のテーブルに大量の酒や料理が運び込まれる。


 出される酒や料理にゴクリと唾を呑み込むと、大いに飲み、食べ、騒ぎ始める。


 せっかくなので煉太郎達も打ち上げを楽しむことにした。


 出されている酒はユーラシス王国産の麦芽で作られたエールで、料理は冒険者が多いからか肉料理が多かった。


 「お、こいつはオークの肉か。美味そうだ」


 ステーキにスープなどの料理に使われている肉はオークの肉でどれも非常に美味だった。


しかし、日本人の煉太郎には少し物足りなく感じていた。


 「やっぱり豚肉はしょうが焼きが1番だろう」


 煉太郎は料理をするべく厨房を借りる。


 まずはしょうが焼きのタレを作る。


 必要な食材は生姜、砂糖、醤油、酒、蜂蜜。


 最初に生姜をすり下ろす。すり下ろした生姜に醤油:3、酒:2、砂糖:1の割合で加える。コクが生まれ、タレが絡みやすくなるようにする為に蜂蜜を加えて、混ぜ合わせる。生姜が均等に混ぜればタレの出来上り。


 次は肉。オークロースを異空間から取り出して薄切りにし、肉の両面に薄力粉をまぶす。


 玉葱を用意してスライスし、フライパンに油を薄く引いて、中火で熱して透明になるまで炒める。


 次に薄力粉をまぶした肉を強火で焼く。


 両面を焼いたらタレを加えて絡めれて皿に移す。


 最後に千切りにしたキャベツを皿に盛れば完成。


 「へえ、これがしょうが焼きかい?」


 ラウアが物珍しげに煉太郎の作ったしょうが焼きを見つめる。


 焼いたオーク肉と甘いタレの香りが漂い、思わず唾を飲み込むラウア。


 皿に並べられた薄切り肉の1つを口にする。


 「美味いじゃないか!」


 ラウアの絶賛する声が酒場中に響き渡る。


 甘く、僅かに辛い独特のあるタレがオーク肉の持つ肉汁と脂と混じり合い、味を昇華させる。


 「おっと、こいつを忘れてたな」


 煉太郎は異空間から炊きたての白米を出し、ラウアに渡す。


 「確かこれはリムラスカ連合国の穀物だね。おお、このしょうが焼きに合うじゃないか!」


 濃い味付けのしょうが焼きと柔らかで淡白な白米の組み合わせがラウアの腹を満たしていく。


 周りの冒険者達もゴクリと唾を呑み込むと、まるで群がるかのようにしょうが焼きに殺到して食べ始め、絶賛の声を上げる。


 皿のしょうが焼きをあっという間に平らげ、お代わりを要求する冒険者達。


 煉太郎は次々としょうが焼きを作り、厨房に残っていたオーク肉だけでは足りなかったので異空間に収納していたオーク肉も使うことになった。


 「ふう……」


 ようやく一息入れることが出来、席に着く煉太郎。その隣をラウアが「お疲れ」と言って座る。


 「強いうえに料理まで出来るなんて、つくづく良い男だね、あんたは」


 「お褒めに預り光栄だ」


 褒められて素直に喜ぶ煉太郎。自分の作った料理を美味しいと言ってくれれば、誰だって嬉しいものだ。


 「ところでさ、レンタロウ。あんたさえよければだけどフィーナ達と一緒に『守護の剣』に入らないかい? あんた達なら大歓迎だよ」


 煉太郎達をクランの勧誘をするラウア。煉太郎達の実力を考えれば勧誘するのは当然のことだろう。それに加えて煉太郎達のことを気に入ったという理由もある。


 「せっかくだが俺達には俺達の目的がある。その勧誘は受けられない。悪いな」


 煉太郎達の目的はオルバーン王国へ行き、地球へと帰還することなのだから。


 「そうかい、それなら仕方がないね……」


 ラウアは残念そうに呟くと少し考え事をして口を開く。


 「だったらさ、アタシと決闘してくれないか?」


 煉太郎にそう告げるラウア。


 「何?」


 唐突にラウアの口から出た、自分と決闘して欲しいと言う言葉。


 いったい何の冗談かと煉太郎は思わず驚くが、ラウアは真剣な瞳で煉太郎を見ていることから、冗談ではないようだ。


 「理由を聞いてもいいか?」


 「単純な話さ。昨日の続きがしたいんだよ」


 昨日の続きとは、ラウアが煉太郎のことを卑怯者と勘違いして襲いかかった時のことだ。


 「あの時はあんたのことを卑怯な奴だと思って戦いを挑んだ。けど、実際のあんたはアタシの予想を遥かに越える程の実力を持っていた。それこそアタシ以上の実力をね。だからこそ、今度は強者としてあんたに挑みたいんだ」


 剣士として更なる高みを目指しているラウアにとって、煉太郎は途方もない壁だと感じたようだ。だからこそ強者である煉太郎と決闘して自分の実力を見極めたいと思っているのだ。


 「どうしても決闘を受けなければならないのか?」


 ラウアは小さく頷くと席を立ち、大剣を煉太郎に向ける。


 「頼む。アタシと決闘してくれ。アタシがアタシである為に……」


 「……」


 ラウアの覚悟のある言葉に黙り込む煉太郎。


 フィーナやセレンも声を掛けることが出来ず、他の冒険者達もどう反応していいのか分からないでいた。


 やがて、煉太郎はラウアが決して退かないと判断したのだろう。小さく頷いて、口を開く。


 「良いだろう。その決闘を受けてやる」


 決闘を承諾した煉太郎にラウアは笑みを浮かべるのだった。

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