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落ちこぼれと呼ばれた超越者  作者: 四季崎弥真斗
3章 漆黒の暗殺者
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拐われた商人

 深夜。


 セバーラの街に向かう一団の姿があった。


 「今日は随分と遅くなったな……」


 「そうですね。すっかり暗くなってしまいましたね」


 「けど、これで隣街の店とも仲良くやっていけるんだから良いことじゃないか! これで我が商会の売り上げは上がること間違いなしだぜ!」


 一団の正体は商人達だった。隣街で大切な商談を無事に終えて、エルバーラの街に帰還する最中のようだ。


 「もうすぐエルバーラの街に到着するが、みんな気を抜くなよ。モンスターの中には夜になると活発するモンスターもいるからな……」


 「もう、脅かさないでくださいよ……」


 女性が不安そうに表情を曇らせると、隣に歩いていた冒険者が励ます。


 「安心してください、我々『守護の剣』が貴方達の命は我々が守ります」


 商人のリーダーに話しかけてきたのは商人達の護衛をしている『守護の剣』の冒険者達だった。商人達と『守護の剣』は昔からの付き合いで、いつも商人達は護衛の依頼を頼み、それを『守護の剣』が受ける間柄なのだ。


 「頼りにしてますよ、皆さん」


 「任せてください! 我々がいればモンスターや盗賊が現れても対処してみせますよ!」


自信満々といった様子の冒険者。


その時--


 「へえ、威勢が良いじゃねえか!」


 声が聞こえると同時に、進路を塞ぐように屈強な男が姿を現す。


 「な、何だ貴様ら!」


 突如現れた男に警戒する冒険者。


 「何だとは随分な挨拶だな。お前達が『常闇の団』のダイス様の役に立てることを光栄に思うんだな。冒険者達には用はねえから殺せ! 商人達は生かして捕らえて荷台の荷物もアジトに持っていけ!」


 「「「「「「「「「「へい、親分!」」」」」」」」」」


 ダイスと名乗った男が合図を送ると、周囲に隠れていた部下達が姿を現す。


 「な、こんなに隠れていたのか……」


 盗賊達の数はおよそ20人。予想以上の数に思わず冒険者は後ずさる。


 「みんな、商人達を守るんだ! 『守護の剣』の底力を見せてやる!」


 帯剣しているロンクソードを抜いて、ダイスに斬り掛かろうとする冒険者。


 しかし――


 ヒュンッ!


 風を切る音と共に冒険者の額に矢が貫いた。


 「――がっ!?」


 何が起きたのか分からないまま、冒険者は息絶える。


 残りの冒険者達もその全身を矢に貫かれることになってしまう。


 「キャアアアアアアアアッ!」


 夜の街道に少女の悲鳴が響き渡るのだった。



 ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆



 朝目を覚ました煉太郎達は着替えを済ませて、朝食を食べるべく、1階に向かう。


 「あら、おはよう。朝食はもう出来てるよ」


 「ああ、頂こう」


 厨房から顔を覗かせると、リリアンは朝食を持って来ると、テーブルの上に置く。


 「そう言えば、あんた達もダンジョンに潜るのかい?」


 「いや、俺達は旅の途中で、食料の調達の為にこの街を訪れたんだ」


 「そうなんだ。てっきりダンジョンの最新部にある古代級のマジックアイテムを目当てにこの街を訪れたんだと思ったよ」


 「古代のマジックアイテムだと?」


 気になる言葉に煉太郎が反応する。


 「この近くにあるダンジョンは昔、1人の魔法使いが造ったとされていて、何でもその魔法使いは現代では再現できないマジックアイテムを作成したと言う伝説が残されているんだよ。噂じゃ最深部にはそのマジックアイテムがあるとされているんだよ」


 (古代級のマジックアイテム、か……。もしかしたら直ぐにでもオルバーン王国に帰還出来る機能を持つマジックアイテムがあるかもしれないな……)


 顎に手を当て考え始まる煉太郎。


 古代級以上のマジックアイテムは現代の技術では到底造ることは不可能とされている。オルバーン王国にある召喚の祭壇のように空間から空間へ移動出来るようなマジックアイテムはそれこそその類いに入るので非常に珍しく、高額で売買されている。


 ちなみにリリアが言うには、ダンジョンの最深部には扉があり、その前を守っているのが強力なゴーレムが立ちはだかっている。実力はAランクモンスターに匹敵する程でこの街で唯一のBランク冒険者であるラウアでさえダンジョン攻略は出来なかったと言う。


 「せっかくだ。そのダンジョンとやらに行ってみるとするか」


 「ダンジョンに行きたいならまずは冒険者ギルドで手続きをしないといけないから、1度行ってみるといいよ」


 「分かった。行ってみるとしよう。そのゴーレムについても詳しく聞いておきたいしな」


 朝食を食べ終えた後、ダンジョンにに行く為の手続きをするべく、煉太郎達は冒険者ギルドに向かうのだった。



 ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆



 ダンジョンへ入る為の許可を貰う為に煉太郎達は冒険者ギルドにやってくると、そこでは不穏な空気が漂っていた。


 「あれってザーギィさんだよね?」


 「はい。それにラウアさんもいるようですね」


 場の中心にいるのはギルドマスターのザーギィと『守護の剣』のリーダーであるラウアだった。2人共険しい表情を浮かべている。


 2人は向き合ったまま、お互いに苦々しい顔をしている。その周囲には冒険者ギルドの職員達と冒険者達が控えている。


 (何か問題が起きたようだな。ダンジョンに入る許可を貰いに来たんだが、これは口を挟める雰囲気ではないな)


 「くそっ……何か手掛りがあれば……!」


 「すまない。こうなったのは我々冒険者ギルドの情報が足りなかったせいだ……」


 「別にギルドマスターが謝る必要はないだろう……」


 「いや、まさか『常闇の団』がこの街の近くに潜伏していたとは気付かなかった。責任は我々にあるようなものだ……」


 「こうなったら街中の冒険者に捜索の依頼を出して虱潰しに探してやる!」


 「いや、下手に大勢で捜査をすれば奴らに気づかれ、逃げられてしまう恐れがある。出来れば奴らに気づかれずに捜索したい……」


 「そんなことしてたら商人達が……!」


 悔しげに呟くラウア。


 「ねえねえ、何かあったの?」


 フィーナが近くにいたギルド職員に事情を聞く。


 「どうやら昨夜、隣街に物資を届けていた商人達が盗賊に拐われたようなんです……」


 ギルド職員によると、街道で争った形跡が発見され、商人達と物資は行方知れず、護衛をしていた『守護の剣』の冒険者達は皆殺しにされていたそうだ。


 現場では犯人と思しき品物が見つかり、商人達を攫ったのは『常闇の団』と言う最近暴れはじめた盗賊団で、現在の居場所は判明されておらず、捜査は難航しているとのことだ。


 ギルド職員の手短な説明である程度の状況を理解する煉太郎達。


 (俺達には関係ない話だな。ダンジョンに入る許可は受付の職員にでも貰えばいいか……)


 と、煉太郎は受付へと向かおうとする。


 「レンタロウの導きの羅針盤があれば見つかるかもしれないね……」


 フィーナがポツリと呟く。だが、その一言でギルド内がシーンと静まり、全員が煉太郎達に視線を向ける。


 フィーナは「しまった……」と言う表情を、煉太郎は「やれやれ……」と言った表情を浮かべる。


 「今の話は本当かい!?」


 鬼気迫る勢いで煉太郎に近づくラウア。


 「……ああ、本当だ」


 バレてしまったことは仕方がないと割り切り、煉太郎は素直に頷いた。


 「だったら頼む! アタシ達に協力してくれないか! アタシの部下は『常闇の団』に殺されたんだ! だから力を貸してくれ!」


 土下座をしてまで頼むラウア。それは殺された部下の仇を討ちたいと言う思いでのことだった。


 「儂からも頼む。拐われた商人達の中には儂の孫娘もいるんだ。報酬はいくら払っても構わん。何なら儂の全財産を渡しても構わん。それに冒険者ランクを昇格させても構わない」


 ラウアだけでなくザーギィも煉太郎達に懇願する。


 ザーギィの言葉に周囲の人間がざわめき出す。ギルドマスターと言う地位までと成ればそれなりの財産を持っている。それを全て報酬に払うとなれば大事であった。


 「いや、金はそんなに必要ないし、冒険者ランクもそんなに興味ないんだけどな……」


 煉太郎は旅に必要な費用は充分過ぎる程持っている。冒険者になったのも地位や名誉を高めることではなく、おまけで付いてくる特典の為であってそこまで冒険者ランクを上げるつもりもなかった。


 「……良いだろう。ただし2つ条件がある」


 「条件……?」


 「ああ。まずはラウア。俺達はダンジョンの最深部にある古代級のマジックアイテムに興味がある。ラウアはこの付近にあるダンジョンに詳しいんだろう? この依頼が終わったら俺達をそこに案内してくれ」


 「そんなことで良いのかい?」


 「ああ。それと冒険者ギルドには、俺達がこの街に滞在している間に何かトラブルに巻き込まれたら手を貸してくれることを要望する」


 「良いだろう。儂が出来る限りの助力をすることを約束しよう」


 「アタシもそれで構わないよ」


 「よし、交渉成立だな。じゃあ盗賊退治と行くか」


 「仲間の仇だ! 『守護の剣』出陣だよ!」


 煉太郎一行とラウア率いる『守護の剣』数十人の冒険者達は商人達を救うべく、『常闇の団』のアジトに向かうのだった。

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