六話
「撃墜されたりなんかしたら、アナタのせいだからね」
そう言いながら、僕とシューベルさんを追い越してドアへと向かう。
「なんのために連携の練習をしてきたと思ってるんだよ。やってやれないことはないさ。ね、シューベルさん」
きょとんしたあとで、彼は大きくため息をついた。もうなにを言っても無駄だとわかったのだろう。僕だって、ここで退くつもりはない。
「わかった。案内しよう」
シューベルさんは早足でエルアを追い越し僕らを先導する。歩きながら簡単に操作説明をしてくれた。
操縦桿を魔法力伝導体にしてくれたらしく、自身の魔導力で動かすことができるようになっているようだ。プラス、その状態ならば魔導術もキチンと使える。効果はかなり絞られるようだがないよりはずっといい。
機体を前にして息を呑んだ。白を基調とし、黒と青のラインが走っている。こんな大きなものが僕専用なのだと言うのだから、責任感だって大きくなっていく。
エルアの機体は、薄い桃色に赤いラインという非常に目立つカラーリングだ。アーマードギアには周囲の景色に溶け込むステルスシステムが搭載されているので、いざとなったらそれを使えばいい。
コクピットに乗り込むと、なんだか新品の匂いがする。シミュレーターの汗臭さに慣れてしまっているせいかかなり新鮮な感じだ。
ハッチが閉じ、コクピット内部が真っ暗になった。
目の前にある小さなディスプレイに「WELCOME」と表示されると、緑色の光の線が後方から前方に流れた。その光がディスプレイに集中すると、今度は別の文字が表示される。機体名は【ディオレット】というようだ。
「ライセンスオン、安瀬神縁」
操縦桿に手を添え、五本の指に力を込める。三回ほど握った後で、今度は足元にあるペダルを外側から順に踏む。あとは、操縦桿に魔導力を注いでパイロット登録完了。これでもう、この機体は僕しか扱えない。
『いいか二人共。撃墜されそうになる前に、必ず戦線を離脱しろ。お前たちも、その機体も、どちらも失うわけにはいかん』
コクピット上部にあるスピーカーからシューベルさんの声が聞こえてきた。
「わかりました。その時は逃げます」
両サイドにあるスイッチを押しこみ、押しあげ、周囲の景色が壁面に表示される。最初は浮遊感にドキドキしていたが、シミュレーターのお陰でだいぶ慣れた。
『検討を、祈っておる』
「「はい!」」
僕たちは同時に返事をし、機体を前へと進めた。
通路の中央に出て、レールの上にある発射台へと足をかける。膝を曲げると、発射台からワイヤーが伸びて背中に接続された。
『Lady?』
機械的な音声が問いかけてくる。
「ランチアウト。行くぞ、ディオレット」
発射台は一気に加速、全身にGがかかる。だが、そのGもすぐに緩和された。最初だけは仕方ないらしいが、あとは機体がGを制御してくれるみたいだ。この機能があるから超高速で飛行しても問題なく、敵の攻撃で落下してもすぐに立て直すことができるのだ。
一瞬にしてレールを駆け抜け、僕は外へと放り出された。
アクセルを思い切り踏み込み、操縦桿で機体を制御する。
「よし、練習通りだ」
上手く扱えてる。わざと機体を揺らしてみるが、自分で体勢を立て直せた。
レーダーを見て味方の位置を確認すると、前方に青い点が密集している。その中で赤い点が一つだけある。型番認証によって敵味方を区別してくれるのは非常にありがたい。
『遊んでる暇はないんでしょう?』
「ああ、ベタ踏みで行くぞ」
『了解了解』
短期間ではあるが、この身体にはたくさん詰め込んだ。
臆することなどあるものか。もしも怖がることがあるのなら、それは敵に対してではない。いざとなったとき、身体が動かなくなることだ。
動けなくなったら負けだ。逆に動けさえすればなんとかなる。
誰がなんと言おうと、僕がそう信じていれば、僕の身体が応えてくれるはずだ。
目的地に到着するよりも前から、味方の機体が追撃されるのを目の当たりにしていた。真っ黒でゴツゴツとした装飾が目出すアーマードギアに、為す術もなく倒されていく。
「援護を頼むぞ」
『ちょ、ちょっと待ちなさいよ!』
手のひらに魔導力を注ぎこみ更に加速していく。腰部に携えた剣を両手で抜き、二刀流のまま突撃した。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
黒い機体の前に割って入り、味方機に対しての攻撃を受け止めた。
『お前、エニシか?!』
「下がってください! ここは僕たちがなんとかします!」
『なんとかって……!』
敵の剣を弾いて攻撃に転じる。横に剣を薙ぐが、ひらりと避けられてしまった。
後方からエルアの援護射撃があり、黒い機体からの反撃はない。




