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天才術師の存在証明《イグジステンス》  作者: 絢野悠
【ファーランガル編】
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四話

「シューベルさん、もう一つお願いがあるんですがいいですか?」

「なんだ? できることならなんでもするぞ?」

「僕らの機体に、内部から魔法力を供給する装置なんてつけられませんか?」

「内側と外側からエネルギーを供給するということか? できないこともないが、それで一体なにをしようというんじゃ?」

「シミュレーターではあるけど、一応いろんな機体を触らせてもらいました。その上で、必要な時にだけ魔法力を供給したい状況というのが多かったです。もしも自分の意思でブーストできるのならそれに越したことはない。機動力にも攻撃力にも転用できるはずですし、僕らはスーベリアットで魔法力を日常的に扱っていました」

「ふむ。小型の魔法力供給装置と変換回路を取り付け、指向性を定めてやればいいだけだ。問題ないだろう。それでどうする。部屋は用意してあるが、今日は帰って寝るか?」

「いいえ、もう少しやってきます。いつミュレストライア兵が攻めて来るかもわかりませんしね。できることはやっておきたい」

「その意気やよし、こちらも尽力しよう」


 シューベルさんが指を鳴らすとドアが開き、食事や着替えが運ばれてきた。


「言ってくれれば自室には案内する。それまではここにいてもいいぞ」

「ありがとうございます」

「データはシミュレーターから取れる。思う存分練習するといい。ワシはこれでも現役の開発者兼整備士なので、ここで一旦失礼させてもらうとしよう」

「はい、お心遣い感謝します」


 シューベルさんやおつきの人の背中を見送った僕たちは、運ばれてきた軽食をたいらげた。サンドイッチとサラダとミルクみたいだったが、スーベリアットとの違いはあるだろう。まあ、口にして問題なければいいさ。


「さて、もう少しやろうか」

「アナタの場合、もう少しで済まないでしょ」

「よくわかってるじゃないか」

「妙にアクが強いところもあるし、もう慣れたわ」

「それはどうも」


 僕はそう言いながら、再度コクピットへと乗り込んだ。


「そうだ、ちょっと訊きたいんだけど」


 ハッチを閉める直前にエルアが声をかけてきた。腕を組み、その俯瞰した態度

はいつもと変わらない。


「ファーランガルでやることはただの戦闘? どれだけいるかわからない敵を掃討するのが目的なの?」


 もっともな意見だな、と心底思った。


 先の戦闘のように、頭を潰せば終わりというわけではないのだ。しかし、ファーランガルにもゲートは存在する。単純にまだ見つけられていないだけ。


「今父さんがゲートを探してる最中だ。きっとこの世界にも新しいゲートを作ろうとしてるに違いないからね」

「でも、そのゲートだけを破壊しても意味はないんでしょう? 結局ミュレストライア兵を全員倒すしかないじゃない」

「それが、そうでもないんだな」

「どういうこと?」

「なんでファーランガルには十二領帝がいないのか。将がいない状態で、本当に世界一つを征服できると思う?」

「実際に征服されかけてるけど」

「そうじゃないんだよ。たぶんだけど、大将はちゃんといるんだと思う。まだ解析できていないだけでね。その将とゲートを探し出し、この手で叩く」

「なるほど、それが今回の目的ってわけね」

「この先どうなるかはわからないけど、今は耐えることに集中しよう」

「わかった、従うわ」


 彼女は「やれやれ」といった表情をしてコクピットに乗り込んだ。


 最初に比べればだいぶ素直になったなと感じていた。


「悪くない」


 ハッチを閉め、操縦桿に手を添えた。


 敵を倒すことも大事だけれど、それ以上に世界を救うためにどうしたらいいのかを考えなきゃいけない。そして、今は防衛という道を行くしかない。少し歯がゆいけれど、時期が来るまではと、シミュレーターに集中することにした。

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