二話
僕はPDを取り出し「失礼」と言って席を立った。父さんに連絡を入れるとすぐに通信が開始される。
『どうした、なにかあったか』
「今シューベルさんに話を聞いてる最中なんだけど、ファーランガルには十二領帝はいるの?」
『いや、今は確認されていない。ただ、投入された一般兵はどの世界よりも多い。今までのようにリーダーを倒せばいいという勝負ではないだろうな』
「大衆戦闘か、なによりも持久力がものを言うな」
『ただし、そこがファーランガルであるということを忘れるなよ。そこは大衆戦闘に秀でた兵器が多い。特に自身の魔法力ではなく、空気中から魔法力を吸収して動かすものばかりだ。シューベル氏にそれらを借りて上手くやってくれ』
「了解、なんとかしてみるよ」
『検討を祈る』
通信を終了させ、もう一度シューベルさんに向き直る。
「お待たせしました。父が大衆戦闘向けの兵器があると言っていましたが、僕でも扱えるような代物なんですか?」
「大衆戦闘向けか。戦車に戦闘機、人型のロボットなどがある。ロボットよりも小型で、身体の三倍くらいの大きさのパワードスーツもある。が、小回りが利いて数多くの戦闘をこなすのであれば人型のロボット、こちらではアーマードギアというが、そっちの方が向いてるじゃろうな」
「ロボットって、すぐに使えるものなんですか? スーベリアットでは自動車に自動二輪、戦車に戦闘機に小型潜水艦に小型船舶くらいなら免許をとらせてもらいましたけど」
「若いのになかなかやるのう」
「父の職業が特殊なもので。特別にとらせてもらったんですよ。とったのは僕自身じゃなく、少し前まで僕の中にいた人格ですけど」
苦笑いをして見せれば「これ以上は聞くまい」と、シューベルさんも苦笑いで返してきた。
「アーマードギアに免許はいらないが、一般人が持てるようなものではない。軍事施設でのみ扱い、一般人の所有は禁止されている。そのかわりと言ってはなんだが、軍部の技術力を集結させてある。初心者でも運転できる仕様にもできる」
「オートパイロット、ということですかね」
「半オートパイロット、という感じじゃな。飛行、旋回、攻撃、防御、回避、狙撃など様々な機能に対してアシスト機能が備わっている。例えば相手からロックオンをされたり視線を感知すると注意を促す、実弾用のバリアやビーム兵器用のバリアも自動で展開してくれる優れものじゃ」
「じゃあパイロット全員がその機能を使えば、ミュレストライア兵も掃討できるのでは?」
「それがそうもいかんのだ。それらの機能は結局相手の行動を予測するものではない。つまり受動的な機能だ。事前に予測し、ある程度の行動を捌くために予備動作をするマニュアルよりも劣る」
「つまるところ、マニュアル操作をしつつ、オートパイロットを完全なアシストとして使用しなければ意味が無いと」
「意味が無いとまでは言わないが、完全に活用することはできんじゃろう。それにアーマードギアも数に限りがある。なにぶんコストがかかる上に、侵略されてしまった大陸からパーツが輸送できん。このバド大陸だけの生産量では限界がある」
「なるほど。ただ、そのアーマードギアには一度乗ってみた方がいいかもしれませんね」
「はっきり言うが、あまり時間はないぞ。乗りこなせるようになるまで修練を積む、という行為ができん」
「その辺はまあ、なんとかしましょう」
「ほほっ、期待しておるよ」
白く長い髭を触りながら、彼は嬉しそうに微笑んだ。
僕とエルアートは、彼に連れられてアーマードギアの格納庫へと案内された。
町一つが入るのでは、と思うほどに広い格納庫。左右の壁に背を向けて、何十体ものアーマードギアが直立の状態で並んでいる。機体の間には整備用の通路がかかり、それを使ってコクピットへの搭乗もするのだろう。
アーマードギア。機巧兵装とも呼ばれるらしい人型兵器。全長十メートルよりもやや小さく、基本的に人体の構造を元にして関節部などが作られている。油圧、空圧、蒸気圧、電動を駆使してその関節を動かす。
顔も胴体もそうだが、全体的に線が細くバックパックのスラスターなども非常に小型だ。腕や脚にもブースターが付いており、空中での旋回や軌道変更の自由度は高そうに見える。機動力に重点をおいているようだが、重装備のアーマードギアも何体かあるようだった。
エネルギーは空気を漂う魔法力で、なにをするのにも魔法力を必要とする。が、エネルギーのインプット能力よりもアウトプット能力の方が高いため、供給したエネルギーを一気に消耗してしまうと再起動までは動くこともできなくなる。バッテリーを取り払った分だけ軽量化、電気さえも魔法力で補っていることの弊害だろう。
重苦しい重機の音や、金属を叩く高い音を聞きながら、シューベルさんに渡された説明書を読む。
アーマードギアにはいくつかのタイプがある。
近距離戦闘をフロント、中距離戦闘をミドル、遠距離戦闘をリア。
拳や剣を使って戦う機体をチャージャー。
鎖鎌や槍などを主体にして戦う機体をゲイナー。
弓矢や銃器を使用して戦う機体をブラスター。
三つのどれかを基礎にして全ての役割をこなすのがラウンダー。
近接用の拳銃などを使って接近戦を得意とする機体があるのなら、それはフロントブラスターなどと呼ばれるらしい。




