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サンタ会合

作者: 柚宮春綺


 ――カランカラン


 とある雪深い所にあるその酒場にはある職業の者達が集まる。


 「うー、寒寒(さむさむ)


 入って来たのは基本赤と白で統一された冬仕様の服。 その赤い

帽子の上に降り積もった雪は外の寒さを物語っている。


 冬になると彼らが大忙しなのだ。 さて、ここまでで分かった人

も居るのだろうか。


 この酒場に集まる職業の者達、それは……。


 「よー!! 日本サンタァ!」


 「ロシアサンタ; また飲んだくれてるの?;」


 「こいつの事は気にしない方がいいぞ、日本サンタ」


 子供達の夢、サンタクロースである。


 これはクリスマスを目前にした毎年恒例である各国サンタ会合で

ある。


 寒がりながら入って来たのは我らが祖国、日本の管轄のサンタ。

 割と年が若くまだ30歳ぐらいかそれより若く見える。


 そんな日本サンタに挨拶するのは顔を赤くしてウォッカの酒瓶を

片手に持ち瓶に口を付けてウォッカをストレートで仰ぐのは雪国で

あるロシア管轄のサンタ。 初老で彼の顎には白ひげが薄らと見て

取れた。


 そんな飲んだくれロシアサンタを心配する日本サンタに首を振っ

て一人紅茶を優雅にすするのは霧の国、英国管轄のサンタ。

 神経質そうな彼は恐らく三十半ばなのか分からないが眉間に皺を

寄せている。


 いつも五か国のサンタがこの酒場に集まる。


 「オーストラリアサンタとアメリカサンタは?」


 「まだだ。 オーストラリアはトナカイが迷ってんだろ」


 日本サンタが英国サンタの隣に座りながらカウンターにいるマス

ターに緑茶を頼んでから英国サンタに問いかけると英国サンタは不

機嫌そうに言い放った。


 「そうですか。 あ、今年のプレゼント何が多かったです?」


 日本サンタは英国サンタのトナカイを撫でながら問いかけるとロ

シアサンタが入ってきた。


 「今年はゲーム機が多いぜぇ」


 それも日本のなぁと茶化す様に笑うロシアサンタに日本サンタは

嬉しそうにそうですかと答えた。


 「まぁ、こっちもロシアサンタと同じ様な感じだな」


 「日本のゲームですか……。 なんか、こう、夢がありませんね

ぇ; 僕昔はサンタさんに幸せとかお願いしたなぁ……」


 ポスポスとスコーンを食べながら英国サンタが頷くと、日本サン

タは遠い目をして昔を振り返った。


 「お前どんな子供だったんだよ」


 「ロマンチスト野郎ってよく言われてました」


 英国サンタが食べる手を止めて問いかけるとマスターが持ってき

てくれた緑茶を啜りながら笑うと英国サンタとロシアサンタは納得

したようにまた酒を、紅茶をあおった。


 〔また、貴方の所は酔っぱらっているんですか? 臭いですよ〕


 〔分かる分かる!! でもオメェん所の優男は薔薇くせぇぞ〕


 〔主人の好きな薔薇を馬鹿にしないでいただきたい!! 酒臭い

よりいいじゃないですか!!〕


 〔いやいや、どっちもどっちじゃね!?〕


 〔日本トナカイはどう思います!?〕


 〔……いや、私に振られても……どっちも臭いという事で〕


 テーブルの上ではサンタが。 テーブルの周りではトナカイが会

合を開くこの酒場。


 なんとも不思議な空間である。


 ――カランカラン


 「遅れてきてごっめーん☆」


 〔この馬鹿が太り過ぎて遅れました〕


 今までの三人のサンタよりサンタらしい太ったオッサンとそのオ

ッサンを後ろ足で軽く蹴るトナカイが到着した。


 高カロリーの国、アメリカ管轄のサンタとトナカイである。

 顎髭は染めているのか白く、髪はブロンドが帽子の下から覗かせ

て先にいた三人はシュッとしている腹はたぷたぷと肥えている。


 「あ、マスター、俺ハンバーガー」


 〔自分は草で〕


 アメリカトナカイもちゃっかりオーダーをしてアメリカサンタは

ロシアサンタの隣に座った。


 「あれ? まだオーストラリアサンタは来ていないの?」


 「あの人は自由人で今は夏ですからねェ; 季節的には;」


 「噂をすれば来るんじゃねぇの?」


 「あ、それ素敵ですね」


 「相変わらず日本サンタはオカルト好きだなぁ…」


 「ロマンチストと言ってください」


 ひたすらウォッカを仰ぐロシアサンタは放っておいてアメリカサ

ンタと日本サンタと英国サンタは話す。


 そんな時……。


 ―――さっっむ!!!!!!


 人里離れているこの酒場の近くで少し若めの声が聞える。


 「英国サンタの言う通りですね!! 凄いです!!」


 「そんなに興奮すんじゃねぇよ;」


 「目の輝き方が思いっきりオカルトマニアだねぇ」


 「アメリカサンタ! 違うって言ってるでしょ!!」


 「あー、寒い寒い。 なんでこんなにこっち寒いの!? 北半球

怖い! あれ? 日本サンタにアメリカサンタ、何喧嘩してるの?


 興奮する日本サンタ、それを見てため息を吐く英国サンタと馬鹿

にするように笑うアメリカサンタ。 アメリカサンタのオカルトマ

ニア発言が日本サンタの癪に障り怒鳴ると同時に入ってくるのはミ

ニスカノースリーブという出で立ちの若い女性だった。


 「「「「さむ!!!!!」」」」


 「全員で声揃えなくても分かるわ! 私が一番寒いんだからぁ!

!!!」


 「まず、何でお前は行先冬だってわかってて夏服で来るんだよ!


 「だ、だって; サーフィンしてたら約束の時間だったんだもん

んんん!!」


 オーストラリアから来たオーストラリア管轄のサンタが現れると

全員が寒がりオーストラリアサンタはがちがちと震えながら怒鳴り、

そんなオーストラリアサンタに怒鳴り返すのはアメリカサンタで仕

方ないじゃないとオーストラリアサンタは逆ギレた。


 〔まぁ、許してくだしあ〕


 ケラケラと笑いながらオーストラリアのトナカイは言う。 見事

に寒さに強い毛並みは短く切りそろえられていてそれはとても寒そ

うだった。


 〔馬鹿じゃないんですか? 風邪引くのはこの方なんですよ?〕


 〔聞くだけ無駄なんじゃねェのお~?〕


 アメリカのトナカイとロシアのトナカイがため息交じりに言う。


 「ひっどぉぉい!」


 「いやぁ……。 一番ひどいのは貴方のおつむです」


 「意外と辛辣なんだな。 日本サンタ;」


 そんなトナカイたちの会話を聞いてオーストラリアサンタが眉を

八の字にさせて言うと日本サンタが真顔で否定し、その言葉を聞い

て予想だにしなかったのか、英国サンタが冷や汗を流していた。


 オーストラリアサンタは日本サンタとアメリカサンタの隣に座る。


 「さてと、これで集まったなぁ」


 「五か国サンタ会合がやっと開始か」


 ロシアサンタは流石というべきか、顔がアルコールで真っ赤にな

りながらも酒場の面子を見て仕切る。 それに続き英国サンタが深

いため息を吐く。


 そんな英国サンタにアメリカサンタとオーストラリアサンタは居

心地が悪そうに座り直す。


 「とりあえず、何を話すんですか?」


 日本サンタが問いかけるとロシアサンタがニヤリと笑った。


 「これから始まる地獄の日、クリスマスの前にパーッと祝って騒

いで精を付けるだけだ」


 「そ、それだけ?」


 「それだけだな。 毎年そんな感じだ。 日本サンタも何度か着

てるだろう」


 「日本サンタは基本的に流行に乗るの好きだから昔の事あんまり

覚えてないとか?」


 ロシアサンタの説明を受けて日本サンタが気が抜けた様に問いか

けると英国サンタが頷き首をかしげるとオーストラリアサンタが続

かる。 図星なのか日本サンタは恥ずかしそうに笑っていた。


 それを見た四人は深いため息をこぼした。


 「え、それ酷くないですか?」


 〔自業自得よ〕


 日本サンタが言うと足元で大人しくしていた日本のトナカイが言

うと日本サンタは落ち込み。 それを見たオーストラリアトナカイ

とロシアトナカイが大笑い。


 そして会合という名の宴会が開始された。


 クリスマス、それはイエス・キリストが復活した日。


 その復活を祝うための復活祭。


 今やそんな行事ではなくただの年末の一大イベントとなっている。


 子供のうちはサンタクロースにプレゼントを頼み、それが朝起きた時に届いているその光景を楽しみに子供たちは眠りにつく。


 大人になるにつれサンタクロースはいないと思いそれぞれの楽しみを見出していく。


 ただ家族と過ごす者。


 恋人と愛を確かめ合う者。


 一人で聖夜を過ごしその刺すような寒さに身を震わせいつの日か温め合える存在が出来る様に祈る者。



 過ごし方は人それぞれだ。



 コレはただのサンタクロース達の一年に一度の大仕事前の息抜きの様な会合であった。



 「あー!! オーストラリアサンタぁぁぁ!! それ俺の肉ー!!」


 「食べたもん勝ちよ!」


 「アメリカサンタ、他にもある」


 「みんなで仲良く食べましょうよ~;」


 「がっはっはっ!! マスター! ウォッカー!!」



 〔オッサン飲みすぎじゃない??〕


 〔いつもの事だから気にすんな馬鹿トナカイ〕


 〔静かに食べられないの?〕


 〔ご主人、私紅茶が欲しいです〕


 【……帰りたい】




 とてもカオスな会合。

 だがとても仲良しなサンタ会合である事は分かった。












 =サンタ会合 完 =

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― 新着の感想 ―
[良い点] なんだかそのたのしそうな風景が想像できましまた(*´∀`*) 女性がまじってるのもいいと思いました(♡˙︶˙♡)
2014/12/18 22:58 退会済み
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