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ニートくん、家を出る

 さて、オンラインゲームをやめたニートくんは、さっそく外に出かけようと決心する。

 ニートくんは、ニートであってもひきこもりではないので、外に出るコト自体は苦ではない。とはいえ、あまり得意でもない。特にお天道様が力を発揮している時間帯には、好んで外に出たりもしない。

 とりあえず、深夜の時間帯に散歩に出かけてみる。

「オッシ!これならば、大丈夫。問題はない」

 そう、ニートくんは、深夜の路上で1人呟く。そうして、そのままの足取りで近所のコンビニエンスストアへと歩みを進める。その後、お気に入りの雑誌を立ち読みし、お弁当を買い、店員さんに温めてもらって、帰路につく。

 さすがのニートくんも、このくらいのスキルは持ち合わせているのだった。


 翌日…

「さて、いよいよ、次は昼間の外出だな。これは、ひさびさだ。なかなか勇気が要る」

 ニートくんは自分に言い聞かせるようにそう言ってから、靴を履き、玄関の扉を開いた。

「ウオッ!眩しい!」

 けれども、この程度でひるんではいられない。歩み進めるニートくん。今日は、ちょっと遠くの本屋さんまで歩いて出かける予定なのだ。

 この瞬間、ニートくんの頭の中にゲームの画面が浮かんできた。むろん、妄想である。けれども、ニートくんにとっては現実の世界と同じであった。

 魔王を倒す為、最初の城を飛び出した勇者。装備は初期装備。ザコ敵と対峙するにも苦労する貧弱な装備である。能力も何もない。レベル1の冒険者である。そこに敵が現われる。戦闘ミュージック開始!!

 敵は、近所の小学生2人組。いきなり、攻撃してくる。

「おはようございます」と、1人が話しかけてきた。

 バシュッ!

 ニートくんに、5のダメージ。


 ニートくんの頭の中にコマンド選択画面が現われる。

たたかう

まほう

ぼうぎょ

どうぐ

にげる


 試しに、まほうのコマンドを押してみる。

「ざんねん。ニートくんは、まだ、まほうをおぼえていない」と表示される。

 クッソ!それならば、たたかうだ!

 ニートくんは、心の中でそう叫んで、小学生に戦いを挑む。無論、殴りかかるわけではない。返事を返すのだ。

「おはようございます」に対しては「おはようございます」だ。いや、もっと元気よく「おはようございま~す!」だろうか?いやいや、相手は年下だ。こんな所でなめられてはいけない。落ち着いて、冷静に、威厳を持って「おはよう」だろうな。

 ちょっと待てよ。今、何時だ?確か、家を出た時にはもう午後3時を過ぎていたはず。となれば、「おはよう」ではなくて「こんにちは」じゃないだろうか?

 そんな風にいろいろと考えて、結局、ニートくんの口から飛び出したのは、こんな言葉にもならないうなり声だった。

「う、わ、あ、わわ、おは…ちは」

 小学生2人組は、「この人は何を言っているのだろうか?」という顔でポカ~ンとしている。

 撤退!撤退宣言!そう判断して、ニートくんは即座にきびすを返し、その場を後にした。逃げたように見えないように、慌てず騒がず、それでいて迅速に!


 バタン!と、玄関の扉を閉めてから、ホッと安堵の息をつく。

「ふぅ…どうにか城まで帰って来れたか。今日の冒険は、このくらいにしておこう。初日から無理をしていては、後が続かないからな」

 そう自分を説得するように言って、ニートくんは自分の部屋へと戻っていった。

 どうやら、現状のニートくんでは、人にあいさつをするというのは難易度が高すぎるクエストだったようだ。もっとレベルが上がってから挑戦した方がいいらしい。


 がんばれ!ニートくん!負けるな!ニートくん!いつか、完全に社会復帰できるその日まで、諦めずに戦い続けるのだ!!

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