(3)
それから、サガラの家での生活が始まった。
炊事洗濯、掃除に買い物。
私の仕事は本当にそんな感じだ。
もともと両親は共働きで大体のことは出来るから、案外苦にならない。
洗濯機とか掃除機なんていうものがないから、全部手作業で、最初のうちは苦労したけれど、慣れてしまえば、どうってこともない。
(私ってけっこう図太い神経してるかも?)
自分でも驚くくらいに、ここでの生活に順応している。
相変わらずサガラは嫌みだけど、意外にも対応は紳士的だったりする。
買い物には毎回付いてきて、荷物を持ってくれる。
夕食の時間はきっちり守るし、出した食事はどんなものでも完食してくれる。
私の部屋には入らないし、家事をちゃんとこなせば後は自由時間にしてくれるし。
あれ? 何だか意外に快適ライフじゃない?
「おかしいわね」
「何がだよ?」
ただいま夕飯中。
私が作った炒め物をモリモリ食べながら、サガラが私の独りごとにツッコミを入れる。
「なんだか、異世界にいるのに私、めっちゃ順応してるのよねぇ。むしろ、勉強とかしなくていい分、楽ちんみたいな?」
「そりゃあ、何よりだ。おかわり」
「あ、はいはい」
差しだされたお皿にこれでもかと料理を入れる。
「どーぞ」
「おぅ」
ホクホクした顔でそれを食べるサガラ。
作ったものをおいしく食べてもらえるのって、けっこう嬉しかったりするんだよね。
そんなことを思ってお茶を啜る。
「うふふ。新婚さんみたいね」
と、聞こえてきたその声に私はお茶を吹き出し、サガラは炒め物でむせている。
「あらあら。やっぱり仲良しさんね」
生温かい眼差しを向けてくるジュリア。
そうなのだ。今日はジュリアが遊びに来ていて、一緒に夕飯を食べていたのだ。
「ジュリア、はっきり言っておくけど、サガラと私はただの同居人なんだからね? 変な誤解しないでよ!」
「そうだっ。こんなのに手を出すほど女に飢えてねーよ」
「って! “こんなの”って何よ!? 他に言い方あるでしょうっ」
「ぎゃんぎゃんうるせーし。色気の欠片もねーしな」
意義を唱える私に、更に失礼な発言を追加する。
私だって黙っていられない。
「なによ! サガラだって、食っちゃ寝ばっかだし、ダラダラしてて全然ダメダメじゃん」
「自分の家でくつろいで何が悪ぃんだよ! 大体、きっちり労働してるつーの」
「労働って行ったって、フラリと出てってすぐ帰ってくるし、何の仕事してるわけ?」
「……」
ん? あれ??
そっぽを向いて黙っちゃった。
何だか、拍子抜けしてしまう。
「そこまでね。うふふ。本当にこの家も賑やかになってよかったわ。こんな良いお嫁さんが来てくれるなんて、私も安心したわ」
うっとりした顔で問題発言。
ていうか、妄想がひどくなってるわよ、ジュリア!
「ツッコむ気も起きねー」
ガックリ項垂れるサガラに、今回ばかりは激しく同意したい気持ちの私だった。