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(5)

キアヌの案内のもと、私たちは“天空城”と呼ばれる建物へとやって来た。


「はぁ。やっと解放されたぜ……」


 サガラはわざとらしく大きなため息を吐く。

 建物へ入り、私たちは責任者と謁見しなくちゃいけないとかで、キアヌは一旦席を外すこととなった。


「けっこう楽しそうだったじゃない」


 此処に来るまでの道中、キアヌはサガラにべったりでずっと離れなかった。

 二人の世界って感じで、入れる隙もないくらいに。


「はぁ!?どこをどう見たら、そうなんだよ。つかさ、なんか怒ってねーか?」

「! そんなことないわよ。大体、何で私が怒らなきゃなんないのよ。サガラが誰に手を出そうが関係ないし」


 そうだ。私がイライラする理由なんてないはずなのに、何でかものすごくムカついている。


「なっ。……てめぇ、ユーミに何ふき込んだ!?」

「おや? 私は、嘘は言っていないよ。君も心当たりがないとはいえないだろ?」


 食ってかかるサガラに、ラフは余裕のある笑みを向ける。


「うっ」


 言葉に詰まるってことは、心当たりがあるってことじゃないか。

 なんだろ? 

 このモヤモヤイライラする感じ。

 関係ないはずなのに、すごくムカつく。


「……サガラのバカ」

「なっ。バカとはなん……」

「はいはい。そこまでだ。痴話げんかをしている場合じゃないよ。厄介な相手のお出ましだ」


 サガラと私の間に入ったラフが小声で囁く。

 見ると数名のいかにも偉い感じのおじさんたちが、こちらへと歩いてくる。

 どうやら、その人たちが責任者らしい。


「お連れ致しました。彼女が“ホープ”を秘めたる少女です」


 一歩前に出たラフが恭しく頭を垂れ、優雅な手つきで私を示すように腕を広げる。


「……」


 みんなの視線が一気に私へと注がれる。


(居たたまれないな)


 その視線は険しく冷たくて、とても友好的な雰囲気じゃない。

“厄介な相手”ラフがそう言った意味が何となくわかる気がする。


「……」

「……」

「……」


 やってきた面々は、私たちには聞こえないよう、顔を寄せ合い何かを話している。

 別に普通に話せばいいのに。

 感じが悪い。

 それとも、こういうことはこの世界では、普通のことなんだろうか? 

 そんな疑問が浮かんで、チラリとサガラを見ると、不機嫌……を通りこして冷たいほどの無表情になっている。

 どうやら、サガラもこの態度は気に障ったらしい。

 ザットもジュリアも口には出さないけれど、戸惑っている感じがみてとれる。


「ラフ」

「はい」


 かなりの間放置され、ラフを呼び寄せまた内緒話。

 これって、私たちがいる意味があるんだろうか?

 なんだか前途多難って感じだ。


(え!?)


 何となく上を仰ぎ見て、そこに人の姿を見つけギョッとする。

 梯子も何もない高い位置にある大きな窓。

 その枠にもたれるように座りこみ、私たちを見下ろしている男の人。

 灰色……というよりは銀色の髪が窓から入る陽に照らされて、キラキラ光っている。

 スラリと背の高い、遠目でも分かるほどの美青年だ。

 中性的な容姿で、カッコイイというよりは綺麗なお兄さんだ。


(またイケメンだ……ていうか人間なのかな?)


 いる場所が場所なだけに、幽霊とか精霊とか、そういった類じゃないかと思ってしまう。

 なんてことを思っていると、綺麗なお兄さんと目が合ってしまった。


「!」


 透き通るように綺麗な緑の瞳に見惚れていると、そっと人差し指を口元に充てほほ笑む。


(えっと、ここにいることをバレたくないってこと?)


 確かに、あんなところで高見の見物をしている人がいるなんてバレたら大事だ。


「ユーミ? どうかしたのか?」


 訝しそうに私を見、サガラも私の視線の先を追って上を見る。


「あ! ダメッ」

「は? なにがダメなんだ?」


 慌てる私に、サガラは訳が分からないというように、ますます訝しげな顔をしている。


「え? 何って……あれ?」


 再度見上げると、そこには誰の姿もなかった。

 ほんの一瞬目を放した隙に、そこにいたはずの、イケメンお兄さんは忽然と姿を消してしまったのだ。


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