(3)
というわけで、サガラにザット、それにジュリアも一緒に、[ホープ]の修行へと向かっている途中なのだ。
[ホープ]の修行場所は、【上の方】と呼ばれる身分の人たちが住む場所の一番上、【天空城】というところだという。
今は、ロープウェーのようなものに乗っている。
見た目は、ただの木の箱みたいで頼りなかったけど、乗り心地は案外快適だったりする。
(うーん。つらい修行に行くっていうより、まるで観光地にでも行くような気分だわ)
最初の悲壮な決意は何だったんだってくらい、賑やかで楽しい旅路だ。
「まったく。追加で三人分の通行許可を取るのには、骨が折れたよ」
「ふふ。感謝しているわ」
「ご無理を言って申し訳ありませんでした」
「けっ。お前のことだから、どうせ裏ルート持ってんだろ」
「サガラってば、そういう言い方はないでしょ! ごめんね、ラフ。色々大変だったでしょう?」
「いやいや。小うるさい貴族を三人ばかり黙らせる程度で済んだし、どうということはないよ」
「そ、そっか。うん。ありがとう」
何だかその笑みに黒いものが混じっているようにみえたけど、きっと気のせいだ。
そうに違いない。
「結界の中に入った。さて、そろそろ到着だね」
「え? うわぁっ」
ラフの言葉に外を見て、思わず感嘆が漏れる。
唐突に目の前に広がるのは大きな町だ。
【上の方】のいるところも大きなお屋敷だらけで、すごいと思ったけれど、ここは更にその上を行く。
建物すべてが整然と並び、マスの目のような……そう、授業で習った、平安京とかそういう碁盤のマスの目みたいなそんな感じ。
そしてなによりすごいのは、その中央にある真っ白なお城。
キラキラと光るあの建物は、何の材質でできているんだろう?
「ここは結界を張られているからね。外部からはまったく見えないようになっているんだ」
「限られた方々しか入れない聖域。一生目にすることはないと思っていたけれど」
ジュリアもうっとりと魅入っている。
「特権階級のいけ好かない連中の住む場所ってだけだろ」
「いえ、精霊の気配も強いです。ここは、かなり上級の精霊も宿っているようですね」
なるほど。だから、ここが修行の場所になるっていうわけだ。
何となく、修業の緊張感が出て来た、というところで、目的地に到着したらしい。
ロープウェーもどきが止まった。
お気に召しましたら、拍手いただけると嬉しいです!