(2)
「なら決まりだ。仕方ねーから俺も一緒に行く」
「え? えぇ!?」
思いもしない言葉に呆気にとられる。
「買い取った義務として、この世界にいる間はお前の面倒をみてやる」
「で、でも! ラフはその権利はなくなったって……」
正直うっかり嬉しいなんて思ってしまった。
だけど、サガラにそこまで迷惑をかけるなんて、さすがに出来るはずない。
「そういうことだよ。君は今、彼女に対して何の権利もないんだよ」
「そうだな。けど、まだ手続きもされてねーってことだろ? つまり、そいつは今フリーだな?」
「……」
サガラの言葉に、ラフは肯定も否定もしない。
「えっと、この場合は、新たに見つけた人が自動的になるのですよね?」
「そういうこった」
「ん? えーと、つまりどういうこと?」
「はぁ。つまり、この場合は私かサガラ、どちらかが君の保護者になる。そして、それは君に決める権利がある」
「そうなの!?」
唐突に振られて、思わず狼狽えてしまう。
「……」
「……」
ラフを選べばこのままで、サガラを選べば、一緒について来てくれるってこと?
「だけど、サガラにこれ以迷惑は……」
「馬鹿か、お前は」
「え?」
「側にいない方が迷惑なんだよっ。俺のいないとこで、どーにかなっちまったらって思うと、オチオチ昼寝も出来ねーし」
ぶっきら棒に言葉を放ちながら、その目は真剣みを帯びていて、何だかすごくドキドキしてしまう。
「な、なにそれ。意味わかんない」
「だから……」
「大切なユーミがいないと、心配で何も手に付かないってことなのよ!」
「へ?」
「なっ」
サガラが言いよどんでいる間に、唐突に現れた人物が力強くそう断言する。
「ジュリア!?」
「話は聞かせてもらったわ。ユーミ。あなたを一人でなんて行かせたりしないわよ」
やってきたジュリアが、潤んだ瞳で私の手を握り締め力強く言い放つ。
「もちろん、僕もです! 僕だって精霊ですから。ユーミのお手伝いします」
「ザット……」
ジュリアと共に力強くザットに言われ、いつココに来たのか? とか、どこから聞いていたのか? なんて、ジュリアにツッコむタイミングを逃してしまった。
「いやはや。君の周りは過保護な輩ばかりだね」
何とも言えない表情でラフは肩を竦ませる。
「……ホントにいいのかな?」
「いいも悪いもねーだろ。これが俺の……俺たちの意志なんだ」
サガラの言葉に同調するように、ザットもジュリアも頷き私を見た。