8章 天空城へ(1)
「高いー」
眼下に広がる風景に、思わず感嘆の声が漏れる。
建物がまるでミニチュアのオモチャみたいだ。
「ユーミ! 危ないから身を乗り出してはダメよっ」
隣りに座るジュリアが潤んだ瞳で、私の腕を強く引っ張る。
「ジュリアは高いところが苦手なのですよね」
私の肩に座るザットが小さく笑う。
「だから来んなっつったのに」
仏頂面のサガラが呆れ顔で視線を向けて来る。
「だ、だって、私はサガラとユーミを見守る義務があるものっ」
「意味わかんねーし」
「外に出ると開放的になるっていうし、サガラを見張っておかないとっていう姉心だろ? 間違いがあってはいけないからね」
「起こるか! 脳みそ腐ってんじゃねーのか? 似非魔術師がっ」
シレッとしているラフに、サガラが殺気立った視線を向ける。
「こんなところまでノコノコ付いてきてしまう、君の厚かましい精神ほどは腐ってないから、安心したまえ」
「お二人とも、喧嘩はだめですぅ」
一触即発の二人を、ザットが涙目で止めに入る。
「あらあら。ユーミったら、モテモテなのね」
それを見て、目をキラキラとさせるジュリア。
「あはは」
恐ろしく前途多難。
どこをどうしてこうなったのか……。
一応、一大決心で[ホープ]を使えるようになるために、一人でラフに付いていくことを決めたはずだった。
それが、こんな賑やかな旅路になるなんて。
話は三日前に遡る。




