(2)
夢を見る。
あぁ。またこの夢かとため息がこぼれる。
暗闇が広がるその場所は、相変わらず、冷たくて寂しい。
『今夜もようこそ。ユーミ』
もう何度聞いたかわからないその声。
相変わらず姿は見えない。
『今日はいつにも増して機嫌が悪いようだな』
当たり前だ。
こんな陰気な場所で、わけのわからない相手に一方的に見られて、気分がいいはずなんてない。
『嬉しくないのか? せっかく傀儡を戻す方法を見つけたのに』
「!?」
夢なのに現実とリンクしているらしい。
あんまりにも考えすぎて、夢にまで出てきちゃったってことだろうか?
「あなたには関係ないでしょ」
『そんなことはない。俺にも関係はある。大いに』
「どういうこと?」
含むような言い方が気持ち悪い。
ますます気分は最悪だ。
『ははっ。いい顔だ。……そそられるな』
唐突に耳元で囁かれているかのように、声が近くなる。
「なっ。最低! 姿を見せなさいよっ。変態!」
姿が見えないけれど、すごく近くにいる。
その事実に薄気味悪さを感じてゾッとするし、ムカムカする。
『あいつはユーミの笑顔が好きなんだ』
「は?」
唐突な言葉に思わず間抜けな声が漏れる。
『だからだろうな。俺はユーミの苦痛に満ちた顔がみたい。絶望に打ちひしがれる姿を』
愉快そうに放たれた声。
あぁ。これは、変態の方がマシかもしれない。
この人はどこか狂っている。
『もうすぐ……るさ。それまで……ろ。俺は……から』
声は途切れて電波の悪い携帯電話みたいに、うまく聞き取れない。
それは夢の終わりの合図だ。
「!?」
ホッとしたその時、人影が視界に入る。
暗闇に慣れきったその目が映した姿。
(なんで?)
見間違うはずもない。それは……。