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……………。


「うん。揃った」

「また負けてしまったね」


 勝負はものの数分で決まった。

 最初の四回目と同じ。私の手にはすんなりと揃った五枚のカード。

 五回とも、驚くくらいに簡単に揃ってしまったのだ。


「合格だ。君はホンモノだよ」

「へ? 何の話?」

「はぁ。何が合格だ。わけのわかんねーこと言いやがって。てめーの暇つぶしにこれ以上付き合ってらんねーんだよ。ユーミ、帰……っ」


 私の持っていたカードを奪い取った瞬間、サガラが表情を歪める。


「サガラ!?」

「な、なんだよ。これ」


 片膝をついたサガラは、ありえないというようにひどく困惑した顔をしている。


「これは、精霊の……」


 サガラの手から放たれ、床に落ちたカードを覗き込み、ザットがひどく青ざめ険しい表情になる。


「てめぇ、どういうつもりだっ。ユーミを殺す気か!?」

「!?」


 突然飛び出した単語はあまりにも物騒なもの。


「精霊が封印されているカード。別名“ナイトメア” 精霊と適合しない者は触れることすら叶わない代物だ」

「いいえ。適合する者であっても、強すぎる精霊に当たれば、魂が飲み込まれてしまいます。危険だからこそ、カードに封印が施されているんですから」


 淡々と話す口調には、静かな怒りが見て取れる。

 あの優しくて気弱なザットがこんな態度をとるなんてよっぽどのことだ。


「大丈夫だという算段があればこそだ。一応、段階は踏んでいるんだよ。最下級から始まって、大精霊と呼ばれる最上級へ。ねぇ、ユーミ。君はカードに触れて何か感じなかった?」

「え? 特には……。強いていえば、カードを引くとき迷うことがなかったていうか。その、妙に勘が冴えていたんだけど」


 騒ぎが大きくなっている中、申し訳ないのだけど、カードに触れて違和感なんて微塵もなかった。

 ただ、引きたいカードはすんなりと決まって、もともと直感は悪くないと思っていたけれど、今回は特に調子が良かった。


「勘……ねぇ」


 私の答えの何がおもしろいのか、ラフは愉快そうに口元を緩める。


「……」

「……」


 あとの二人は、険しい表情のまま無言にまってしまう。


「私、何かまずいことしちゃったの?」

「君には[ホープ]がある」


 返ってきたのはますます分からない言葉。


「はぁ!? 何を馬鹿なこと言ってんだ?」

「まさか、そんな……」

「え? な、何なのよ。ラフ、どういう意味なの?」


 まるでありえないものを見るかのような目に、狼狽えて思わず助けを求めるように、ラフを見る。


「この世で唯一傀儡かいらいを戻せる者。それが君なんだよ。ユーミ」

「私?」


 思わず自分自身を指さす私に、ラフは何の迷いもなく頷いた。


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