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「何か知ってるの!?」


 何の進展もない、傀儡かいらいである時夜を元に戻す方法。

 ラフはそれを知っていて、私を此処に連れてきたってことだろうか?


「私は天才魔術師と呼ばれているんだ。知らないことはないよ」


 テーブルに置かれた紅茶に優雅に口をつけそう答える。


「何が天才魔術師だ。詐欺師の間違い……」

「うわっ」


 言いかけたサガラの横を、淡い光の玉が掠めていく。

 それは、ラフの人差し指から放たれたものだった。


「すごい……」

「ラフは魔術師の中でも群を抜いた存在なんです。血筋もよく【上の方】と呼ばれる、特級階級なんですけど、少々意地の悪い……いえ、きまぐれな方で。サガラはよく、面倒ことに巻き込まれているんですよね」


 確かに変わった人だと思うけど、悪い人には見えないし、それに何より、縋れるものは藁でも縋りたいというのが本音だ。


「あの、何でもいいから知っていることを教えて! お願いします」

「あぁ。構わないよ。私もそのつもりだったし」


 頭を下げた私に、あっさりとしたラフの答えが返ってくる。


「ありがとう!」

「ただし、交換条件がある」


 少しだけ意地悪な笑みを浮かべて私を見る。


「私に出来ることなら、何でもするわ」


 炊事洗濯系なら何とかなるんだけど、そうそううまくはいかないだろうなぁと。

 緊張した面持ちでラフの回答を待つ。


「……」

「……」


 サガラもザットも、何も口を挟まず静観している。

 二人は、私の気持ちを分かりすぎるくらいに分かっていてくれているし、特にサガラは憮然とした表情をしているけれど、黙ってくれている。


「けっこう。それじゃあ……」

「うん」


 部屋の中に緊張した空気が流れているけれど、ラフは言葉を区切りまたものんびりと紅茶に口をつける。

 カチャリと、ソーサーとカップがぶつかる音が響き、ラフはゆっくりと私へと視線を戻す。


「ユーミはサガラを捨てて、私の元に来る……なんてどうだろ?」


 それはもう清々しいほどの爽やかな笑みと共に、ラフからそんな言葉が飛び出してくる。


「な、なにそ……」

「馬鹿馬鹿しいっ。帰るぞ」

「へ? サガラ、ちょっと待ってよっ」


 唐突にサガラは、私の腕を掴んだまま出口へと歩き出す。


「誰があんな奴にやるかよ」

「……」


 ボソッと呟いたサガラの言葉が耳に届く。

 なぜかその言葉がくすぐったい。

 私を掴むその手が嬉しいのはなぜだろう?


「まぁ、そう慌てることもないだろう」

「!」


 あと数歩で出口というその時、ラフの言葉と共に扉が勝手に閉じてしまった。

 たった一つの出口が閉ざされる。


「何のつもりだ、てめぇ」

「冗談だよ。そんな必死にならなくても、盗らないから安心したまえ」


 殺気立ち噛みつくように言い放つサガラに、まったく動じず楽しそうですらある。


「ラフ。“傀儡かいらいを戻す方法”っていう話も冗談なの?」

「いや。それはきちんと実のある話しだよ」

「それなら話してくれない? 私はサガラのところを離れるつもりはないけれど、それ以外のことなら、どんな交換条件でも呑むわよ」


 そう言い放つ私に、探るような目を向ける。

 ふざけているようで、この人の目はどこか真剣みを帯びている気がするのだ。

 真意がどこにあるか分からないけれど、少なくとも遊びでただ私を連れてきたわけではないように思う。

 だから、向けられた目を真正面から受け止める。


「へぇ。驚いたな。見た目が変わっているだけの普通の子だと思ったけど、なかな胆が据わってるんだね。うん。気に入った。じゃあ、ゲームの続きをしようか」

「はぁ!? 何がゲームだっ。いいから、サッサとここから出しやがれ」

「待って。いいよ。ゲームをすることに何か意味があるんでしょ?」


 胡乱な目をするサガラを制し、ラフへと言葉を向ける。


「ご名答。あと一勝。それが出来ればすべてを話そう」

「了解。勝負しよう。サガラ、もうちょっと待ってて」


 改めて席に着く。

 向かい側にはラフがいて、不敵な笑みを浮かべている。


「どういうことなのでしょう?」

「知るかよ」


 心配そうなザットと苛立つサガラをしり目に、私は大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。


「では、始めよう」


 ゲームは至って単純。

 お題を決められ、中央に置かれたカードから、それぞれ五枚カードを引き抜く。

 その五枚をお題の絵柄に早く揃えられた方が勝ち。

 頭脳戦というよりは、直観力と運で決まる勝負だ。


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