表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/77

(3)


「あんたが、ユーミって人かい?」

「はい、そー……えぇ!?」


 唐突に聞こえてきた野太い声。反射的に答えかけ、いやいやと考え直す。


(ここは結界の中のはず。今、知らない人は入ってこないって思ったところじゃん!)


 もしかして知ってる人なのかな? 

 なんて一縷の望みにかけて振り返り、激しく後悔した。


(だ、誰!?)


 目の前にいたのは、横にも縦にも大きい、私の三倍はあるだろう大男だった。


「な、何のご用ですか?」


 そう言いながら、ジリジリと後ずさりする。


(走って逃げる。いや、死んだふり……って、それは熊の場合じゃんかっ)


 冷静を装いつつ、心臓はバクバクと音を立てて、思考が明らかにパニックだ。


「俺、あんたを迎えに来た」

「はい!?」


 唐突な言葉に、思わず素っ頓狂な声が出てしまう。


「あんたに、会いたがっている人がいんだ」


 後ずさった分だけ、相手もこちらへと近づいてくる。

 これはちょっと、いやかなりまずい状況だよね!?


(はっ! さっそく渡された防犯グッズの出番!?)


 懐を探り、手にすっぽりと収まる大きさの結界石を手に取る。


「てぃっ!!」


 思い切り大男に向けて投げた……のだけど、結界石は思った先に飛ばず、大男の頭上を飛んでいく。


(焦って上に投げすぎた……)


 ガックリと項垂れた時、予想外のことが起こった。


 パシッ。


 真上を飛ぶ結界石を、大男は手を伸ばし掴み取ったのだ。


「どうぞ」

「あ、どうも……じゃなくて!」


 うっかりキャッチしてくれたお礼を言いかけてしまった。


(結界石が効かないってことは傀儡かいらいじゃない? え? じゃあ、この人って一体……)


「とりあえず行く」

「へ? ちょっ、嫌だ! 離してよっ」


 考え込んでいた私を軽々と抱き上げる。

 暴れてみるけれど、まったくビクともしない。


「すぐ付くから我慢。暴れるダメ。くつろぐいい」

「くつろげるかー!」


 いきなり現れた大男に担ぎ上げられて拉致されかけているのに、くつろぐも何もあったもんじゃない。


(あ! 笛だわ。笛で助けを呼べばいいんだっ)


 首に下げていた笛を力の限り思い切り吹いた。


「……」

「……」


 沈黙がその場に流れる。


(鳴らない!?)


 何度吹いても、音の欠片すら聞こえない。


(どうなってるわけ?)


 半泣きで再度吹こうとした時、大男が動きだし、その振動で手を滑らせ笛は地面へと落下する。


「う、嘘でしょ!?」


 私を軽々担ぎ上げたまま、大男はものすごいスピードで走る……というよりは、飛ぶように駆けていく。

 あまりの出来事に、私はただただ茫然とするしかなかった。


お気に召しましたら、拍手いただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ