6章 急展開!?(1)
今日の朝は、ふっくらホワホワだし巻き卵 (っぽいもの)と焼き魚(多分?)に野菜の煮物(一部野菜か不明な物体もあるけど)。
それに納豆……はさすがにないけれど、代わりにこちらの世界では一般的だという、肉を乾燥させて細かく砕いた、ふりかけみたいなものを用意してみる。
後は炊き立てごはん(きっとごはん)で出来上がり!
「おはよう。ザット。ジュリア」
ちょうどテーブルにセッティング完了したところで、二人が姿を現した。
「おはようございます……」
「お、おはよう」
ひどく驚いた顔で答え、二人は顔を見合わせている。
「朝ごはん出来たから食べよう。今日はなかなかの力作なんだよ」
「すごいですねぇ」
「私までいいの?」
「もちろん。昨日は此処に泊まってくれたんでしょう? たくさん食べて言ってね」
昨夜は結局、眠ることが出来なくて、何だかいてもたってもいられず、明るくなるのと同時に、キッチンであるだけの材料で朝食作りをしていた。
作っていたら、こんがらがっていたいろんなことが吹っ切れて、自分の気持ちもしっかりと固めることが出来た。
「うん。あとはサガラね。起こして来……きゃっ」
言いながらドアを開けると、目の前に障害物。
そこに思い切りツッコんでしまった。
「なんだ? 朝っぱらからうっせー」
いつもと変わらない気だるい顔で、障害物であるサガラは言い放つ。
「いるなら言ってよね」
「開けてツッコんできたのはお前だろ。前見て動けよ」
「気配がないサガラが悪い」
「んなっ。言いがかりもいいところだつーのっ」
「本当のことじゃない」
「可愛くねーガキ」
「うっさいわね」
「ふふっ。よかった……」
言い争う私たちを見て、ジュリアが嬉しそうに呟き、ザットが潤んだ瞳でこちらを見ている。
「二人ともどうしたの?」
「何だよ」
二人の反応に、私とサガラは思わず言い争いを中断する。
「だって、二人がいつも通りすごく仲良しだから嬉しくて」
なぜか涙ぐみながら、ジュリアはそういって、目じりをぬぐう。
「な、仲良しって……」
ジュリアの言葉に、思わず声が上ずる。
なぜか、時夜から助け出してくれた時、抱きしめられたことを思いだしてしまったのだ。
「ばっ、冗談だろっ。何で俺がこんな奴……」
サガラの視線とかち合って、ますます居たたまれない気持ちになってしまう。
それはサガラも同じようで、ひどく居心地が悪そうに、明後日の方向を向いている。
「お二人とも顔が赤いですよ? どうかされたのですか?」
キョトンとした顔のザットに、更に追い打ちをかけられる。
「ふふ。野暮なことを聞いてはダメよ。私の知らないうちに、二人の仲も進展していたのねぇ」
「ち、違うからっ。何にもなかったわよ! あれは、そういう意味のことじゃないしっ」
「まぁ! うふふ。あれなことがあったのね。それはぜひお姉さんにも聞かせてもらいたいわ」
「あれもそれもねーよ! おかしな想像してんじゃねーぞっ」
「そうだよっ。ジュリア、妄想しすぎ!」
「あらあら。やっぱり息もピッタリね」
「「……はぁ」」
久々のジュリアの暴走に、私とサガラは同時にため息を吐いた。
………
一通りの騒ぎが落ち着いてみんなが席につき、私は昨夜の決意を二人にも伝える。
「トキヤを元に戻す方法を探す?」
「それは難しい……です」
私の言葉に、二人はひどく途方に暮れた顔をする。
「勝手な行動はしないっつーし、あいつが現れるまでの話だ。それで納得すんなら、止める理由もねーだろ」
黙々と料理の皿をカラにしていたサガラが静かに言い放つ。
「……そう。サガラがそう認めたのなら、私も出来得る限りの協力をするわ」
「はい。僕も色々ともう一度調べてみます」
「ありがとう! ジュリア。ザット」
反対されるだろうと思っていたけれど、二人の答えにホッと胸をなで下ろす。
「サガラもありがと」
「別に。……ただ、最悪の場合の覚悟はしておけ。俺はいざとなったら、躊躇わない」
「……うん。分かってる」
殺す側でも殺される側でもあるサガラ。
そんなサガラの言葉に私はただ頷くことしか出来なかった。
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