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(11)


 夜空には月が出ていて煌々と輝いている。

 昼間じゃないかって思うくらいに、外は明るくて、サガラを見失わずに追いかけることが出来た。


 家からはさほど離れていない、ちょっと開けた空間。

 何をするんだろう? 

 と見ていると、何もないそこでサガラは鞘から剣を引き抜く。


 シュッ!


 風を切る音が耳に届く。


(うわぁ)


 その剣技に目を奪われる。

 剣を振るその姿は、まるで何か舞でも舞っているように軽やかで、それでいて驚くくらいにキレがあった。

 ものすごく癪なのだけど、文句をつけようがないほどにカッコイイのだ。


(けど、なんでだろう? 綺麗だけどすごく切ない……)


 心の奥底を鷲掴みにされたみたいに、胸の奥が熱くて痛い。


「誰だっ!」


 サガラの殺気立った声で我に返る。


「なっ。ユーミ?」


 おずおずと姿を現す私を見て、毒気を抜かれた顔で、サガラは素早く剣を鞘に収める。


「なにやってんだ、お前?」

「サガラの姿が見えたから、追いかけてきちゃった」


 誤魔化しようもない状態だし、そのままを口に出す。


「げっ。お前ごときにつけられてたのを気づかねーなんて、一生の不覚だな」

「ごときって何よ。ていうか、サガラこんなとこで何してるわけ?」


 夜……というか、多分今は真夜中だ。剣の稽古をするには遅すぎる時間だと思う。


「別に。眠れねーし、体動かしてただけだ。今夜は明るいしな」

「そっか」


 木へ寄りかかり、サガラは月を仰ぎ見る。

 月……というには大きすぎる気がするけれど、夜空にあるんだし、月ってことにしておこう。


「……悪かった」

「へ?」


 月に見惚れていた私は、唐突な謝罪に訳が分からず、サガラを見返す。


「その、さっきはきつい言い方しちまって……」

「別にサガラが謝ることないじゃない。無理矢理聞きだしたのは私なんだから。ていうか、あんな大けがしたのに、体動かしたりして大丈夫なの?」


 いつも嫌味ばっかりのサガラが、こんな風に謝罪を口にするなんて、今日の昼間に引き続き、やっぱり何だか様子がおかしい。

 なぜか、私の方が落ち着かなくなってしまって、話題を変えてみる。


「……平気だ。俺はあいつらと近いからな」

「え?」

「お前にまだ言ってねーことがあるんだ」


 月ばかり見ていたサガラが、フッと視線を私へと向ける。


「……俺も傀儡かいらいなんだ」


 静かな、本当に静かなその場所で、サガラの声はよどみなく私へと届いた。


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