(10)
『すっげー! まさか、こんなとこで同じ世界の住人に会えるなんてな』
初めて出会った時、満面な笑顔を浮かべていた時夜を思い出す。
同じ世界の同い年の男の子。
この世界にいると、時々自分の世界のことがあやふやになって、何だかちょっと切なくなる時がある。
でも時夜といると、元の世界のことが鮮明になる。
サガラたちには、首を傾げられちゃうことだって、時夜となら普通に話せる。
そんな単純なことが嬉しくて楽しかった。
もし元の世界で普通に出会っても、すれ違うだけの、そんな存在だったかもしれない。
だからきっと、この世界で出会ったのは、奇跡だっていえるくらいの巡りあわせ。
『傀儡だっていうのが分かった時点で、駆除の対象になる。殺すしかねーんだ』
サガラの言葉がずしりと心にのしかかる。
あの後、サガラは何も言わず、部屋を出て行って、心配そうなザットとジュリアを置いて、私もすぐに部屋に戻ってしまった。
頭の中を整理しようと、何度もサガラたちの話しを思い返すけれど、全然考えがまとまらない。
「時夜が殺されるとか意味分からないよ……」
ベットに寝転んで、口に出してみたってやっぱり実感なんかわかない。
あれからかなり時間が経って、夜になって大分経つ。
体は疲れ切ってダルいのに、眠気は一向に訪れてくれない。
それどころか、目は冴える一方で、答えは堂々巡りだ。
(時夜を救いたい。絶対に死んでほしくなんかない)
何度考えても、行き着く答えはそれだけだ。
≪……ユーミ≫
「え?」
声が聞こえた気がして起き上がると、風で窓が開け放たれる。
「あれ? ちゃんと閉めてなかったのかな?」
ベットから起き上がり窓辺へとよると、外に人影が見え、よく見るとそれはサガラだった。
(こんな時間にどこに行くんだろう?)
私は慌てて部屋を飛び出し、その後を追った。




