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5章 真相(1)


「どうしても教えてくれないの?」


 私は黙々と食事をしているサガラへと、おもいっきり不満をこめた視線を向ける。


「この汁物、少し味が薄くないか?」


 返ってきたのは、すっとぼけた言葉。


「そんなのどうでもいい! ちゃんと人の話を聞きなさいよっ」


 思わずテーブルをダンッと叩いて声を荒げる。

 昨日はあの後、部屋に入ってそのままふて寝してしまった。

 その所為か、ものすごく夢見が悪かった。

 内容は覚えていないけど、ものすごく不愉快な夢。

 この世界に来てから、時々そういうことがある。

 そういう日の朝は決まって、どうしようもなく苛々するのだ。

 昨日のことがある分、苛々はいつもの数倍だ。


「食事中に行儀悪ぃぞ」


 ちっとも動じず、シレッとした顔をしてそんなことを言われた。

 離れたところでオロオロしたザットが見えて、我に返って座り直す。


「……時夜とどういう関係なの?」

「時期が来たら、全部話してやる」


 ため息とともに、サガラがやっと答えを返す。


「それっていつなの?」

「今日明日じゃねーのは確かだけどな」

「それまで、時夜に会うなって言うわけ?」

「あぁ」

「納得いかない」

「……」

「理由を言ってよ」

「……」

「なら、時夜に聞きに行く」


 だんまりを決め込んだサガラにそう言い捨てて、席を立って扉へ向かう。

 と、唐突に腕を掴まれ、そのまま壁に押し付けられる。


「!?」


 目の前に、苛立ちを全身に漂わせたサガラの顔があった。

 いつの間にか両腕を掴まれ、身動きが取れなくなっている。


「いいかげんにしろ。ガキじゃねーんだから、聞き分けろ」

「り、理由も分からないで、聞き分けもなにもないわよっ」


 至近距離から凄まれてその迫力に思わず声が上ずってしまったけれど、負けじと睨み返す。

 こっちだって相当頭に来ているのだ。


「……」

「……」

「おはよう。ユーミ、サガラ。朝摘み野菜をおすそ分けに来……」


 睨みあっている私たちの緊迫したその場に飛び込んできたのは、籠を抱えた嬉しそうなジュリア。


「見つめ合う二人……やだ、私ったら! 二人きりの時間を邪魔しちゃったっ」

「え、違っ……」

「空気読まないお姉さんでごめんなさいっ。お邪魔しました!!」


 茫然とする私とサガラの横をすり抜けて、早送り的速さでテーブルの上に籠を置いて、ジュリアはそそくさと出て行ってしまった。


(見つめ合ってないし! そもそも二人きりじゃなくてザットも側にいるんですけど!)


 誤解を解く暇もなく、すでにジュリアの姿は消えていた。


「……あ」

「……うわっ」


 腕を拘束されて、サガラの顔が目と鼻の先。

 これは見ようによっては誤解出来るシュチュエーションだ。

 そんな事実にようやく気が付く。

 そしてサガラも同じことを思ったに違いない。

 慌てて私から離れる。


「あー、くそっ。ザット! ちゃんとこいつを見張っとけよっ」


 バツが悪そうに言い放つと、マントと剣を掴みとる。


「何よっ。サガラの分からず屋! 陰険男っ」


 サガラの背に罵声を浴びせるけれど、結局サガラはそのまま出かけてしまった。


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