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神様、家出中につき  作者: 原田広


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第七章 魔界、魂が戻り始める

魔界では、さらに想定外の事態が起きていた。

業火の谷。断罪の塔。無数の責め苦の場。


そこで――

「終了です」

判が押される音が、次々と響き始めた。


「魂番号一三五七。浄化完了」「魂番号二九八四。清算終了」


業火に焼かれ、苦痛を通して自らの行いを理解し、逃げずに向き合いきった者たち。

彼らは、もう悪ではなかった。


「では、転生手続きに移ります」


淡々とした声とともに、魂は光に包まれ、魔界の出口へと送られていく。


「次は、正しく生きます」


誰に誓うでもなく、そう言い残して。

魔神は、その流れを腕組みして見ていた。


「回転が良すぎるな」


部下の悪魔が答える。


「偶然がないため、理解が早いのです」

「言い訳が成立しませんから」


罪は因果として理解され、清算は工程として完了する。

魔界の仕事は、かつてないほど健全だった。

だが――


「転生先が問題です」


別の悪魔が報告する。


「地上です。善人が死なない」


転生した魂は、正しく生きようとする。無茶をしない。偶然に賭けない。

当然のように、死なない側に分類される。


「増えるな」


魔神は短く言った。

地上では、兆候が数字になって現れていた。

出生率は微増。死亡率は激減。

特に――

善良層が減らない。

都市は詰まり、仕事は足りず、土地は限界に近づく。

「努力すれば報われる世界」の裏で、「席が足りない世界」が姿を見せ始めた。


その頃、魔界の城。


「循環が、詰まり始めている」


魔神の言葉に、神様は答えない。

地上に戻る魂。死なない善人。

本来なら回るはずだった輪が、どこかで止まっている。


「……次に歪むのは、どこだ」


魔神の問いは、誰にも向けられていない。

しかし確かに、世界は限界を示し始めていた。


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