第十六章 許可という裁定
「この騒動を見ていて、考えたことがある」
神様が、会議室の全員を見渡す。
「トップの行うことは、全部を自分で裁定することではない」
天使たちが、息を呑む。
「それぞれの裁定に、許可を与えることではないか、とな」
魔神が、口元だけで笑った。
「ほう」
神様は続ける。
「現場が判断する」「責任も、理由も、そこで持つ」
「私は――」
一拍置く。
「止めるか、通すかを決める」
大天使が、慎重に確認する。
「最終判断は、放棄しない、と」
「放棄はしない」
神様は頷く。
「だが、 最初から抱え込まない」
天界の若手が、思わず声を上げる。
「それで……充分なのでしょうか?」
神様は、迷いなく答えた。
「充分だ」
「全部を決める者がいる世界は、止まる」
「考える者が多い世界は、進む」
魔神が腕を組み、深く頷く。
「魔界では、それで回り始めている」
「天界も」
神様は静かに言う。
「地上も」
「同じでいい」
テーブルの上に、新しい文書が置かれる。
表題は短い。
『裁定許可規程(暫定)』
サイコロは、ケースの中に戻されたままだ。
振られもしない。
捨てられもしない。
「必要になったら、また考えればいい」
神様は立ち上がる。
「考えることを、止めなければな」
誰も反論しなかった。
この日、世界は初めて、自分で決めることを、許可された。




