第十二章 魔界、問い直される罰
魔界では、余裕が生まれたことで、仕事の中身そのものが見直され始めていた。
「……そもそもだ」
会議室で、若い魔物が恐る恐る口を開く。
「責め苦は、本当に浄化に必要なのでしょうか」
一瞬、空気が固まる。
だが否定は出なかった。
「業火で焼くと、必要なところまで焼いてしまうことがある」
「反省より、恐怖が残る魂もいる」
古参の魔物ですら、静かに頷いた。
「話せばわかる罪人も、確かにいる」
それは、忙しさの中では見えなかった事実だった。
試験的に始まったのは、対話による浄化。
面談室。
「何が、いちばん間違っていたと思う?」
責める声ではない。問いかけだ。
罪人は、初めて考える。
「……自分で決めなかったことです」
その答えに、業火は要らなかった。
カウンセリングによって浄化され、短期間で転生に進む魂が現れ始める。
「効率も悪くないな」
数字が、それを裏付けた。
結果として――
使われなくなった責め苦場が、閉鎖された。
鎖は外され、檻は解体され、炎は消される。
開放された土地は、
「……空き地だな」
魔界では珍しい存在になった。
供給が増えれば、価格は下がる。
「土地価格、少し下がっています」
「これならと家やマンションを買おうと考える者もちらほらでてきています」
帳簿係が報告する。
魔界でさえ、不動産は正直だった。
魔神は、高台からその光景を見渡した。
「罰を軽くしたのではない」
そう呟く。
「罰を、目的に合わせただけだ」
魔界は今、苦しめる場所から、理解させる場所へと、静かに姿を変えつつあった。
その変化が、世界全体に何をもたらすのか――
まだ、誰にもわからない。




