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ミチルとハルト

作者: せおぽん

「兄のミチルは優等生で、弟のハルトはクズだ」


ここらへんでは有名な話。いや、俺だってクズになりたくてクズになったんじゃない。


ミチル兄ちゃんと俺は双子の兄弟だ。兄は優秀で運動も得意だ。俺だって馬鹿じゃない。運動も得意だ。でも、小学校のあの事件から俺は何もかも上手くいかない。


幼稚園の頃、ミチル兄ちゃんと俺はカブト虫を飼っていた。俺は一生懸命カブト虫の世話をしていたからカブト虫は元気だった。ミチル兄ちゃんのカブト虫は知らない。見せてくれなかったから。ある日に俺のカブト虫は死んでしまっていた。俺が泣いていたらミチル兄ちゃんは、その日にミチル兄ちゃんのカブト虫をくれた。元気なカブト虫だった。俺のカブト虫にそっくりの元気なカブト虫だった。


小3の時、校長室の花瓶が割られる事件があった。犯人は絶対俺じゃない。なのに、皆が俺を犯人扱いしたんだ。アレからちょっぴり俺は悪い子になっただけだ。あの時、皆の前で庇ってくれたのはミチル兄ちゃんだけだった。ミチル兄ちゃんは優しい子だね。と褒められていた。


小6の時、ミチル兄ちゃんは絵画コンクールで金賞を取ったんだ。でも、アレは俺の描いた絵だった。大人は皆、俺を嘘つきと言ったけど、ミチル兄ちゃんは俺を慰めてくれた。「きっと大人が間違えたんだよ。僕達は双子だから」あの時の賞状はミチル兄ちゃんの部屋に飾ってある。


高校に入ってから俺は学校をよくサボるようになっていた。数日ぶりに俺が登校すると、教室はいつものように騒々かった。

「お前、またやったのかよ」

クラスメイトの寺内がニヤニヤしながら、俺に話かける。近所にすむ山田の爺さんの家に石が投げ込まれ窓ガラスが割られていたらしい。俺は知らない。俺にやられたと学校にクレームの電話をあったそうだ。「俺じゃねえよっ」と俺は寺内を殴った。寺内は机や椅子と一緒に床に倒れた。やってられない。今日はもう帰ろう。皆の軽蔑の目を背に受けながら俺は教室をでた。


廊下で、ミチル兄ちゃんに会った。

「大丈夫か?ハルト? 噂なんて気にするなよ。お前は犯人じゃないよ」


ミチル兄ちゃんだけが俺の味方だ。


ーーーーー


ミチル兄ちゃんが警察に捕まった。

担任の家に火をつけたんだ。


警察に連行される時に、ミチル兄ちゃんは俺にこう言ったよ。


「ハルト、また変わってくれよ」って。


兄ちゃん。俺は知ってたよ。悪い事をしてたのは、兄ちゃんなんだろ? 俺は、もう変わってやれないよ。


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