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不思議なお話し  作者: 藍本 彩夢


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2/2

王子の花嫁

 不思議の世界の王子殿下の后選びのパーティーと言われているこのパーティー…この国では一月から新学期が始まる。その為卒業迄 残す所一学期となったこの時期に多くのカップルが誕生する。そして夏休みが終わるとその人数はまた増えると言われている。ただこれは不思議の世界にも属している人達だけの現象である。

 王子のお相手はまだ決まっておらず、条件も多少あるらしい。お后候補の名前の書かれたリストがあり、そのリストの中から選ばれるらしい。またこのパーティーに出席するのは年頃の独身の男女が多いのでお相手探しのパーティーでもあるらしい。そのパーティーに出席するようにと、この間お母様に言われたけどやはりあたしは出席しない事に決めている。地位や権力、容貌など良いほうがいいかもしれない…財力などはないよりあった方がいいだろう。だって何をするにも必要な物なのだから‥でもギスギスしている空気は嫌い!意地悪をわざとしていたり、貶めていたり見下していたりするのを聞くのも見るのも嫌い。黒い感情が見えて嫌な気持ちになるから…そこも暗く感じるから‥明るく楽しく弾んでいるような空気感が好き‥皆んながキラキラしているのが好き。そんな空気が気流が自分をいい方向へと導いてくれる。あたしはそう思っている。

 でも后選びのパーティに限らずパーティーの場というのは、いろいろな憶測や計略が潜んでいる気があたしはする。黒い感情が場を暗くして肌がビリビリする事もある。気持ちが荒む事もある。だからあたしはあまりパーティーには顔を出さない事にしている。

 今回のパーティーは出席者も多かったらしい。フリーの年頃の人達も多く出席したと聞いている。婚約者も彼女もいない王子殿下その人気が一番大きかったんだろうけれど‥


 それから少し時間が経った夏のお休み直前の事だった。

 「えっ!あたしが王子のお相手に選ばれた!?」

 「ああ…」

 「あたし お后選びのパーティー行ってないわよ」

 「実はあのパーティーに出席したお后候補の中に王子殿下がお気に入りになった女性がいなかったらしい。それでいろいろな事情で出席しなかった候補者のリストを王子殿下にお見せした所 侍従に言われる前に王子殿下が自らの意志でお前をお選びになったそうだ。」

 お父様が言った。

 (‥王子殿下が自ら‥ふ〜ん)あたしは心の中でお父様の言葉を繰り返す。

 「分かりました。お受けしますとお伝え下さい。」

 「随分あっさりと返事したな‥説き伏せなくてはならないかと思っていた。」

 「だって このお話しをお断りしても、また次のお話しがくるのでしょ。そして高学科を卒業すればいずれ結婚をしなければならない。」

 両親が頷く。

 「だったら自らの意志であたしをと選んでくれたのだから、それでいいわ。」

 「承諾の返事は入れておく。これからの流れだが王家の日程を考えると、急だが明日王子殿下との顔合わせがあり、殿下からの正式な結婚の申し込みがある。」

 「明日…」

 「そうだ。王家のしきたりだ。」

 「分かりました。そしてそのまま結婚の儀への流れとなりその日から王子殿下と一緒に暮らす事になるのですね。」

 お父様が頷く。お母様があたしを抱き寄せる。そしてお母様とあたしをお父様が優しく抱きしめる。

 両親とあたしの複雑な感情があたし達を包んでいる。大丈夫だよと優しく囁いている。

  

 次の日宮殿の待ち合わせの場で待っていると、王子殿下が入ってきた。あたしは頭を下げる。

 「正式な申し入れをさせて頂きたいと思います。唯嬢 これから先ずっと僕と一緒に歩んでいきましょう。僕と結婚して下さい。」

 「はい」

 頭を下げたまま返事をする。

 「そろそろ 顔を上げてくれないか。」

 その声に顔を上げる。

 「伊織先輩‥先輩が王子殿下?…」

 彼は頷く。

 『近いうちに分かる‥』そう聞こえた声を思い出す。これが縁なのね。あたしは納得する。

 「唯さん。結婚なんて突然で驚いたろう?后候補のリストの中に君の名前を見つけた。全然知らない人より知ってる人の方がいいと思ってリストを見た途端 君を選んだ。君はあまりパーティーなどに出席をしないと聞いている。だから唯さんの顔を知る人は少ないのだと‥それで良かったと僕は思っている。顔を沢山の人が知っていたらこうして結婚の申し込みも出来なかったかもしれない。ありがと。パーティーにあまり出席しないでいてくれて…でもこの間のいわゆる后選びのパーティーに君がいればあの場で君に決めていた…君は知ってる人だからね。」

 あたしはクスッと笑いが溢れてしまった。

 「やっぱり そこですか?」

 「当然だ。」 

 二人して笑い出してしまった。

 「ところで君は何でこの結婚を承諾してくれたのかな?」

 「その前に王子殿下は、あたしの事をどの位聞いていますか?確か王家では結婚の申し込み受け承諾された時に、結婚は成立したと認められあたしの事が話されると聞き及んでいます。」

 「君の事は昨日君からの承諾の返事がきた時に聞いている。君は特別な存在で不思議の世界の人達に力を与えたり補助したり皆んなを見守る存在なのだと…そして姫巫女であり王女に匹敵するのだと聞いた。」

 「そうです。あたしのこの立場では、今回このお話しをお断りしても高学科を卒業する一年後には、相手を決めなくてはならないでしょう。その時のお相手が自分の意思で決めてくれるとは限りません。それでしたら無理矢理ではなくて、《あたしを》と選んでくれた方と結婚しようと思ったのです。それが正解だったようです」

 「そう思ってくれて嬉しいよ。これからも宜しく」

 「こちらこそ宜しくお願いします」

 「それで この後なんだけど僕達の年齢ではすでに成人とみなされ結婚の儀の後は正式な夫婦となり、きょうからこのままこの僕の宮殿で夫婦として一緒に生活する事になるんだけど聞いてる?」

 少し言いづらそうに伊織先輩が言った。

 「はい 聞いています。女の子は小さい頃から、夫婦という在り方は家によって違うけどその家のしきたりに従って結婚しなさいと教えられ王家では結婚の儀が行われ、夫婦と認められ夫婦の契りを結ぶのだと‥そう聞かされて育っていますので 先輩 気になさらないで下さい。」

 「分かった。じゃあ結婚の儀の後にいろいろな事を話し合おう。」

 「はい。」

 本宮殿から迎えが来て宮殿に迎う。宮殿に着くとドレスを着せられ神殿みたいな所へ案内された。扉の前にはお父様が正装で待っていた。

 お父様に手を引かれ中へ入るとお母様と一兄上夫妻とニ兄上がいた。反対側には国王様と王妃様 殿下のお姉様夫妻がいた。

 そして正面で伊織先輩が待っている。これってやっぱり結婚式だよねと思っているとあたしの手は伊織先輩の手に委ねられた。

 急にドキドキしてきた‥先輩の手があたしの手を優しく握る。

 その瞬間光が迸る…その光が先輩とあたしを包みやがて金色のキラキラとした粒が拡がり、金色の空間の中に先輩とあたしがいた。そして金色の光はそのまま神殿の中を満たした。此処にいる全ての人がこの黄金の風景を見ているんだ。何て荘厳な風景なんだろう…そんな感慨に浸る。その荘厳な金色の光の中で導かれる様に先輩とあたしはお互いの指に指輪を嵌め自然にキスをしていた。まるでそれが当然の様に…キラキラ感が増した。

 『運命の相手だ』そんな声が頭の中に直接響く。

 先輩に強く抱きしめられた…

 やがて光はキラキラと煌めきを残しながら元の神殿の中へと戻っていく…結婚の宣誓をして儀式が終わった。

 神殿の中にいた人々は慶びに溢れている。その慶びに包まれている人達に送り出され二人の生活が始まる宮殿へと移動した。

 着替え終わってリビングへ行くと既に先輩が待っていてくれた。ちょっと恥ずかしい気がする。

 夕食までの時間、お互いの呼び方や明日から始まる夏の休日の予定などを話し合った。お互いの呼び方は、学院では今まで通り…公式の場では殿下と妃 二人の時はお互いの名前を呼び捨てでと決めた。結婚については聞かれたら正直に話す。相手の名前は内密にという事だった。後は徐々に決めたり、話し合っていく事になった。

 そして二人での初めての夕食…緊張したけど中々いい雰囲気だったと思う。明日からのスケジュールを確認する為一度それぞれの部屋へ戻る。部屋へ戻るとお風呂に入ってサッパリしてからスケジュール確認をした。

 「唯 こっちの部屋で話しでもしよう。聞きたい事もあるから‥」

 「はい。今行きます。」

 そう答えながら名前を呼び捨てで呼ばれた事に少し動揺しているあたしがいた。

 呼ばれた部屋はソファーが置いてあって寝る前に二人で過ごせる空間のある寝室だった。ちょっと緊張するな‥でもそうよね。夫婦なんだもの。そんなこと思いながらソファーに座ると、先輩が飲み物の入ったカップを持ってきてくれてあたしの前に置くと隣に座った。

 「目覚めの時はありがとう…あのまま学院にいたら大変だったと後で知った。」

 「何事もなくて良かったです。」

 あたしは笑顔で答えた。

 「それと目覚めの後 学院に行った時 貰った飴を舐めたら身体が凄く楽になったんだけど あの飴は?」

 「あれはあたしの力を込めた飴です。本当は直接触れて流し込めばそれが一番いいんですけど‥まさかそれは出来なかったので…」

 「そうだったのか…ありがとう‥」

 「いいえ お礼は言わないで下さい。普通目覚める時は自分の力を自覚し、徐々に目覚めるのです。だから体に負担がかからない…なのに急に目覚めが起こった。多分あの後 気力と体力が一気に持っていかれ、起きていられなくなったのでは…?」

 あたしは聞く。

 「ああ そうだ‥意識も何度か失いかけた…」

 「そうだったんですね。ごめんなさい。大変な思いをさせてしまって‥多分あたしと接触したせいで、あたしの力が何らかの影響を及ぼしたんだと‥本当にごめんなさい。」

 「謝らなくていいよ。意識を失いかけた時も身体が大変だった時も、必ず君の顔が浮かんだ。そうすると凄く楽になるんだよ‥身体も暖かくなって‥僕はやっぱりありがとうと伝えたい。でも不思議だった。なんで身体が辛くなると君の顔が浮かぶのだろうと‥確かに倶楽部は一緒だから顔だけは知っていた。でも話したのは目覚めの時のほんの少しだけ…なのに何故 君の笑顔が鮮やかに浮かんだのかと…でも わかった。『運命の相手』だからだ。頭の中に直接 声が響いた。『運命の相手だ』と…それで納得した。そして今は既に唯は僕の妻だ。」

 「あたしも『運命の相手だ』という声が聞こえました。そして心が満たされたんです。ありがとうございます。」

 あたしと先輩は微笑み合った。それだけで何故かお互いを信頼し合っているのが分かった。

 今までしっかり話した事もないのに、数回しか顔を合わせた事がないのに、親しい訳でもないのに、不思議な事に心がお互いを認めている。お互いを愛している。離れていたくないと思っている。これからの『時』を二人で歩んでいける安心感がそこに存在した。この感覚を、この思いを、求めてきたのかもしれない。

 (二人なら 大丈夫!)

 そう声が聞こえた。

 「なぁ 聞きたい事がある。」

 「何ですか!」

 あたしは答えた。

 「俺達以外の不思議の世界の人達は、学院にもいるんだろ?」

 「ええ います。でもお互いでは分からない‥ある程度 力が強ければお互いわかるし、貴方の頭の中に直接 挨拶が届く事もあるかもしれない。貴方は王子だから‥あたしは誰があたし達と同じ世界の人なのかはわかる 姫巫女だから…でも相手には分からない‥あたしはただその人達を見守る。必要な人には力に目覚める助けをする。時に気づかせようとする事もある‥それでも気づかない人は多い…」

 「でも本人がそれを望んでいない事もある‥そうだろう…」

 「ええ‥」

 「君は何歳で目覚めを迎えた?」

 「あたしは生まれた時 既に目覚めていたようです。そして物心がついてから間もなく覚醒しました…でも嫌だと思った事は一度もないわ。窮屈な思いはしたかもしれないけど、不思議な世界の人間で良かったと思っているし感謝しているの。」

 「俺は早く目覚めを迎えたかった‥自分が不思議な世界の人間だと分かっていたし、それが嬉しかった。その目覚めは遅かったかもしれないがちゃんと受け止められた‥やがて覚醒はくる‥その時が少し怖い…」

 「大丈夫よ。あたしが側にいるわ!でしょ!」

 「ありがとう‥ホッとする…」

 何年も付き合っている恋人同士のようだと思った。でも現実には二ヶ月前に知り合って何時間か前に結婚したばかりなのに‥

 先輩は優しく抱きしめると額にキスをし次に唇に‥そしてあたしを抱き上げるとベッドへと‥ベッドでそのままキスを交わす。

 「俺‥自制が効きそうにない…唯 いいかい?」

 囁くように先輩に言われた。

 あたしは頷く。

 そしてまたキスを交わす‥そのまま二人の世界へと導かれていった。

 朝 目が覚めると、伊織先輩が隣りであたしを見てた。思わず顔を隠してしまった。

 (何と早い展開‥としか思いようがない。でも一言 言っておこう。)

 「あの‥伊織先輩。」

 「えっ 誰だって…」

  

 (あっ‥そうだ‥呼び方‥でも呼びづらい。でも呼ばないと返事してもらえなそう…)

 「伊織‥」

 「何かな‥唯。」

 あたしはドキッとした。

 「えーと あのー今更ですが、お付き合いも殆どなく こういう事になってしまったのですが、あたし 男好きとかではないので‥誤解しないで下さい。」

 「それは俺も一緒!俺も女好きではないよ‥でも俺達の場合 正式な結婚の儀を経て夫婦として認められているんだから、流れ的には自然だと思うよ。だからこれでいいんだよ。」

 「そうですね。」

 そう言ったあたしに

 「やっぱり君を選べて良かったー」

 彼はそう言うとあたしを抱きしめキスをした。そして二人の世界へと…


 


 



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