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異世界で精霊使いになったけど、俺の使えるスキルは地図だけでした  作者: 長野文三郎


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第3話 ロモス亭

3/3本目


 ルート案内をたよりに歩くと、雑貨屋ミシェルはすぐに見つかった。

 かかった時間は10分ちょっと。

 地図上の所要時間は14分とあったけど、それよりは少ない。

 きっと多めにマージンがとられているのだろう。

 雑貨屋というから、かわいい小物でも売っているのかと思ったけど、そういう感じの店じゃなかった。

 雑貨屋ミシェルはロープ、紐、ロウソクなどの日用品が売られている店である。

 だが、そんなことはどうでもいい。

 用があるのは落ちているコインである。

 お、写真で見た鉢植えがあるぞ!

 ゼラニウムの花が咲いているから、あれに間違いなさそうだ。

 店主は店の奥の方にいるけど、あからさまに拾うのは目立ってしまうかもしれないな……。

 よし、靴ひもを直すふりをして探してみるとしよう。

 俺はスニーカーの紐を緩めてから鉢植えに近づいた。


「あ、紐が……」


 ちょっとわざとらしかったかな?

 大根役者のグラミー賞があれば、ダントツの一位だろう。

 鉢植えのすぐ横でかがみこみ、靴ひもを直すふりをしながら覗き込んでみる。

 あった……。

 土ぼこりをかぶって汚くなっていたけど、間違いなく銀貨だ。

 周りに人は……いないな。

 よし、いまがチャンスだ!

 俺は鉢植えの後ろにさっと手を伸ばし、コインをつかみ取る。

 立ち上がると手をすぐにポケットに突っ込んで足早にその場を離れた。


 まだ心臓がバクバクしているぜ。

 だが上手くいった。

 これだけじゃ宿代はまかえないだろうけど、食べ物なら手に入れられるはずだ。

 手の中でこすると銀貨は鈍い光を放った。

 太陽が沈むまで、もう少し時間がありそうだ。

 街中をめぐってもう少し生活資金を集めるとしよう。

 俺は再び地図を開き、よさそうな場所を物色した。


 落ちているコインを求めて俺は街中を歩いた。

 時間にして三時間、距離で言えば10キロメートル以上歩いたと思う。

 普段あまり運動をしない俺にとってはかなりの重労働だったけど、おかげで9200レーメンを集めることができたぞ。

 時給にしておよそ3000レーメンだから、かなり割のいいバイトである。

 もっとも、5000レーメン銀貨を拾うために汚いドブに手を突っ込まなくてはならない、なんてこともあったけどね。

 本音を言えばもう少し金を集めたいけど、今日はこのくらいにしておいた方がよさそうだ。

 日が暮れ始めて、人通りはかなり少なくなっている。

 たぶん、夜は治安が悪くなるのだろう。

 日本なら夜だって独り歩きができるけど、外国ならばそうはいかない地域が多い。

 ここロウンドナだって同じことだろう。

 だったら無理は禁物だ。

 俺は地図を開き、今度は宿を探すことにした。

 検索ワードは[ホテル]? 

 いや、[宿泊 リーズナブル]にしてみよう。

 やっぱり地図スキルは便利だなあ。

 検索をかけたら、すぐに五つの候補がでてきたぞ。

 ここから近いのは……、このロモス亭というところだな。


 詳細

 リアンテ通り沿いの商店や飲食店に隣接した宿。

 機能的で飾らないが清潔な客室。

 鍵のついた個室もある。

 一階にあるシンプルなレストランで簡単な食事(有料)もできる。

 夕食:1000レーメン、朝食:500レーメン。

 チェックイン:午後から

 チェックアウト:10時まで

 料金:一泊素泊まり 個室・7000レーメン、大部屋:2000レーメン

 空室:水の上節(4月)3日・個室:空室あり。大部屋:満員


 なかなかよさそうだ。

 荷物なんてないから大部屋でもいいのだけど、ベッドがないなら仕方がないね。

 今日は個室に泊るとしよう。

 宿代と食事代で有り金はほとんど使ってしまうけど、気にすることもないか。

 明日になったら仕事が見つかるかもしれないし、だめならまた落ちているコインを探せばいいのだ。

 疲れた足を引きずりながらロモス亭へと向かった。


 ロモス亭に着くころになると、あたりはすっかり暗くなっていた。

 ちゃんと宿を見つけられた安心感で疲れがどっと出てきたぞ。

 足が重くて少しの段差で躓きそうになってしまう。

 だが、この宿は悪くない。

 外から見ても清潔そうだし、客層も普通だ。

 少なくとも荒くれ者の巣窟って感じではないな。

 俺は安心して中に入ることにした。


 地図にあったとおりロモス亭には空室があり、料金も7000レーメンだった。

 地図スキルの情報収集能力はすごいな。

 どうやって集めているのかはわからないけど……。

 料金は前払いで、通された客室は日本のビジネスホテルによく似ていた。

 ベッドにサイドテーブル、洋服掛けだけの簡素な造りだ。

 それでもシーツなどはきちんと洗濯されており、清潔そうに見える。

 ただ、客室にお風呂やトイレはない。

 トイレは共用部分にあるが、お風呂はどこにもないそうだ。

 いっぱい歩いて汗をかいたから、せめてシャワーを使いたかったけど、文句を言っても仕方がないだろう。

 後で地図を使って銭湯を検索してみればいいか。

 それよりも今は飯だ。

 さっきから腹の虫がグーグー嘆いて俺を責め立てている。

 少し休んだだけで俺は食堂へ降りていった。


 食堂を利用する客は多かった。

 席は二つしか空いておらず、俺は小さなテーブルに腰かける。

 メニューは一つしかなく、夕食のセットのみだ。

 前払いで会計を済ませて待っていると愛想のない給仕さんがトレーに載せられた定食のようなものを持ってきてくれた。

 内容はパン、鶏肉と野菜のシチュー、ソースのかかったマッシュポテト。

 味付けは濃いめだけど悪くなく、ボリュームも申し分なかった。


 腹が減っていたのでガツガツかきこんでいると、隣の空席に二人連れの男女がやってきた。

 男女と言っても歳はかなり離れているようだ。

 一人はハイティーンくらいの女の子、もう一人は初老の紳士である。

 女の子は男装をしていて、なんだか態度の大きい子だ。

 紳士の方は腰に細身の剣を提げている。

 まず彼女が椅子に座り、紳士の方は立ったままだった。


「爺、座るがよい」

「しかし……」


 女の子は席を勧めているけど、紳士の方は遠慮しているみたいだ。

 きっと二人は主従関係なのだろう。


「このような場だ、遠慮するな。突っ立ったままでは食事もできまい」

「おそれ多いことでございます」

「ここは屋敷ではないのだぞ。いいから座れ」


 少女に促されて紳士はようやく席に着いた。

 おかしな二人組に興味を覚えた俺は、飯を腹に詰め込みながら聞き耳を立てることにした。


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