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異世界で精霊使いになったけど、俺の使えるスキルは地図だけでした  作者: 長野文三郎


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第23話 姫さまの指


「姫さま、ブラックラ家の領地の名前を教えてください」

「紙に書いた方がよさそうであるな」


 間違いがないようにと、姫さまはペンで次々と領地の名前を書いていく。

 こうやって改めて確認すると公爵の所有する地所は広い。

 税収などもかなりの額になるだろう。

 それでも返済ができないとは、いったいどれくらいの散財をしたんだ?

 あの公爵はそうとうやらかしてしまっているようだ。

 リストを見ながらキーワードを『未発見のダンジョン』で検索をかけた。


「どうであろうか?」

「二つほど候補が出ましたが、ご領地内にはないようです」


 マークは二か所出てきたが、どちらもブラックラ家の領地からはかなり離れていた。


「そうか、そう上手くはいかないものだな」

「申し訳ありません」

「いや、気にすることはない。はじめからそれほど期待していたわけではないのだ……」


 そう言いながらも、姫さまはあきらかに肩を落としている。


「まあ、未開のダンジョンなんてそうあるわけないか……」


 言い出しっぺの妖精がなにか言っている。

 レミィのアイデアは上手くいかなかったな。

 だけど、別にダンジョンである必要はないのではないか?

 魔結晶じゃなくても金になるものはたくさんあるだろう。

 例えば油田とか鉱脈とかさ。

 この世界は魔法の文明が発達しているから熱エネルギーはあまり利用されていない。

 だけど、金や銀などは貨幣に使われているわけだから、それなりの価値があるはずだ。

 金や銀じゃなくてもいい、鉄や銅だってかまわないだろう。

 項垂れている姫さまやレミィの横で俺は検索を続けた。

『未開の鉱脈』にプラスしてブラックラ家の領地名を検索ワードに設定する。

 そうやって確認すると、俺はついに見つけることができた。


「あった……」

「ん? なにがあったのだ、カミヤ?」

「これをご覧ください」

「なんだというのだ?」


 地図画面を見せようとしたら、姫さまは立ち上がって俺の隣に腰かけ直した。

 ちょっと近いけど、こっちの方が見やすいもんな……。

 肘が姫さまに当たらないように気を付けながら俺は説明を始めた。


「ここですよ。ミラージュ村の外れにある名前もない山です」

「うむ、赤いマークがついているな。これはいったい……?」


 姫さまが期待に満ちた目で俺を見ている。


「金の鉱脈です。金の埋蔵量はおよそ65トン、銀は1800トンのようです」

「そんなにっ!?」

「まあ、埋蔵量です。技術的な問題があるので、すべて掘り返すのは不可能でしょうが……」

「いや、それにしてもすごいぞこれは」


 姫さまは俺の腕に手をかけ、身を乗り出して画面を見つめている。

 指がプルプル震えているのは武者震いだろうか?


「疑うわけではないが、これは事実だろうか……」

「たしかめてみなければわかりませんが、これまで精霊の集める情報に間違いはありませんでした」


 この情報はきっと大地の精霊さんたちが伝えてくれているのだろうな。

 精霊使いとして、俺はみんなの情報を信じたい。


「現地に行ってみるのがいちばんか……」

「そうですね。さっそく公爵に相談してみましょう」

「それはダメだ!」


 掴まれた腕が痛くなるほど姫さまの指に力が入っている。


「父に知られれば、鉱山を当てにしてまた借金を増やしてしまうかもしれない。ことは秘密裏に進めなくてはならない」

「わかりました。これは私と姫さまだけの秘密にしておきましょう」

「ふ、二人だけの秘密であるか」


 まあ、レミィはカウントしなくてもいいよね。

 それと、ドロナックさんには相談しなきゃ。

 ん? 姫さまは俺の腕をつかんだまま離してくれないぞ。

 そろそろ腕が痛くなってきたのだが……。


「うむ、助かる。だが、いいのか? 本来ならカミヤが独り占めできたのだぞ」

「いえいえ、ここはもともとブラックラ家の領地ですよ」

「なにを言っておるか。ついさっき、ミラージュ村はそなたにやるという話がでたばかりではないか」


 あ、忘れてた……。


「ん~、だけど、やっぱり俺には荷が重すぎますよ。これは公爵家で管理した方がいいでしょう」

「それではあまりに……。そうだ、共同開発ということにしよう!」


 名案を思い付いたとばかりに姫さまは顔を上げた。


「開発と運営はブラックラ家がやる。カミヤには利益から何割かを渡すということでよいか?」

「それでじゅうぶんです」

「うむ! とりあえず現地を視察して、技術者に確認、それから開発資金を用意して契約書を取り交わそうではないか。忙しくなるな!」

「そういったことはすべてお任せします。俺はご褒美が少しいただければじゅうぶんなので」


 そう提案すると姫さまは不思議そうな顔で俺を見上げた。


「カミヤ、どうしてそんなに欲がない?」

「ないことはないのですが、あんまり大金だと持て余してしまう気がするんですよ。俺はのんびり過ごせれば、それが最高なので」


 領地経営と同じで鉱山の管理なんて忙しそうで嫌だもん。


「うむ……。カミヤには助けてもらってばかりだな。ありがたくあるのだが、申し訳なくも思っている……」

「気にしないでください。俺は姫さまの騎士ですよ」

「え……そ、それは……」


 姫さまは顔を真っ赤にして俺を見つめた。


「それから、そろそろ手をお放しください。誰かに見られてしまえば事ですから」

「え、手?」


 そう、姫さまはずっと俺の腕を握ったままだったのだ。

 鉱山の話で意識が飛んでしまっていたのだろう。


「うわぁっ!」


 飛び上がってソファーの端まで遠のく姫さまに俺まで驚いちまったぜ。


「まずはこのことをドロナックさんに相談しましょう」

「う、うむ、それがいいな」

「レミィ、極秘任務だ。ドロナックさんを呼んできてくれないか?」

「合点承知!」


 密命を受け、風の妖精は勢いよく飛んでいってしまった。


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