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異世界で精霊使いになったけど、俺の使えるスキルは地図だけでした  作者: 長野文三郎


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第2話 地図スキル

2/3目です

あとでもう1本投稿します。


 地図のおかげで、自分がいるのはスーダラ公園であるとわかった。

 もっとも、そんな情報はお呼びじゃない。

 知りたいことはもっとあるのだ。

 指で地図をピンチインして表示範囲を広げていく。

 何度か繰り返していると地形は海が見えるくらい広がり、ここがロウンド王国ということがわかった。

 俺はロウンド王国の首都ロウンドナにいるようだ。


「…………」


 地名だけではピンとこないな。

 もっと情報が欲しいところだ。

 そう言えば、この地図の画面は地図アプリにそっくりである。

 ひょっとしたらあれと同じで、ロウンド王国の文字に触れれば情報が出てくるかもしれない。


「ビンゴだ!」


 俺の予想は当たりで、指を触れると地図の左側にずらずらとテキストが並んだ。


 ロウンド王国

 大陸東部にある絶対君主制国家。

 現国王ロイエンティールの治世の元、治安・経済は比較的安定しており、魔導文明の先進国の一つに数えられる。

 また、首都ロウンドナ郊外にあるロウンドナダンジョンは魔結晶の豊富な産出地として有名。


 首都:ロウンドナ

 面積:31,000平方キロメートル

 人口:242,772人

 通貨:レーメン(1レーメンはおよそ1円)


 この情報機能はかなりありがたいぞ!

 通貨のところにはこの国のコインの写真も説明付きで載っている。


 必要な情報を読んでしまうと俺はピンチアウトで地図の縮尺をさらに大きくした。

 ずっと気になっていたんだよ、異世界も星は丸いのかなって。

 なんでもありの異世界だから、世界が平面でもおかしくはないだろう?

 今日は長年の疑問を解決するぞ。


「…………」


 おお、やっぱり丸いんだ!

 この惑星の名前はテラーヌ。

 大きさは地球とまるっきり同じで、一年は三六五日。

 時間の概念も一緒のようだ。

 そういえば地図の右上に時計が表示されているな。

 現在の時刻は午後3:05。

 あと数時間もすれば日が暮れてしまいそうだ。

 それまでに食料と今夜の寝場所を確保しておくべきだろう。

 だが俺は一文無しだ。

 金目のものだって持っていない。

 軽い散歩のつもりで出かけたから、スマートフォンさえ家に置いてきてしまったのだ。

 こうなったら、どこか安全で人目につかない場所で夜を過ごすしかない。

 橋の下なんかがいいだろうか?

 そうやって夜をやり過ごし、明日になったら日雇いの仕事でも探してみるつもりだ。

 地図に出てきたロウンドナダンジョンとやらで働くのかなあ?

 まあ、とりあえずの食い扶持を稼がないとな!


 こんなふうにポジティブに考えてみたものの、やっぱり俺は心細かった。

 朝ご飯を食べたきりだから、そろそろ腹も減ってきた。

 夜はどれくらい冷えるのだろう?

 Tシャツとパーカーだけでしのげるだろうか?

 強盗なんて出ないよな?

 俺、盗られるものなんてなにもないぞ。

 いや、服を強奪されるかもしれないか。

 そうなったら詰みかもしれない……。

 働きたくても働けず、葉っぱで前を隠して物乞いをするなんて未来が頭にちらつく。

 時間とともに不安が募り、思わずこんな本音が口をついて出てしまった。


「あ~あ、どこかにお金が落ちていないかなぁ……」


 我ながらあさましいと思うけど、それくらい追い詰められている証拠だった。

 だが、待てよ……。

 ひょっとしてこれは……。

 いやいや、期待するだけ無駄か?

 でも、試してみる価値はある。

 ふと思いついた俺は再び地図を開いた。

 そして検索ボックスに以下のワードを書き込む。


[落ちているお金]


 そんなものが出てくるとは思わないが、溺れる者は藁をもつかむだ。

 やるだけやってやれ。

 そんな気持ちで俺は『検索』ボタンを押した。


「まじっすかっ!」


 思わず叫んだ俺を通行人がぎょっとした顔で見つめた。


「さーせん……」


 ごめんね、でも勘弁してくれ。

 だって俺はギリギリの状態で救いの女神にキスをされてしまったのだから。

 戯れに落ちているお金を探したところ、地図上には検索結果を示す赤いマーカーがたくさん並んだのだ。

 これを喜ばずにどうしろという。

 ありがとう、女神様。

 俺は救われました!

 でも、お金ってこんなに落ちているものなんだね。

 まあ、ここは首都だから、うっかり者だって多いのかもしれない。

 それか、八兵衛さんの団体が通ったか……。

 って、こんなことを考えている暇はないな。

 本当に検索結果があっているのか、いそいで試してみなくては。

 ここからいちばん近い場所はここだな……。

 赤いマークをタッチすると詳細情報が表示された。


 雑貨屋ミシェルの前、植木鉢の後ろに1000レーメン銀貨。

 距離:およそ1キロメートル

 所要時間:徒歩14分


 おいおい、ご丁寧に雑貨屋や鉢植えの画像まで出てくるぞ。

 便利すぎだろう、この機能!

 ふむふむ、経路ボタンを押せば道順が示されんだな……。


「おおっ!」


 VRゴーグルみたいに目の前の空間に道が示されているじゃないか。

 ウィンドウではなく、こんな表示もできるのだな。

 素晴らしいスキルを授かったものだ。

 よし、急ごう。

 誰かが拾ってしまう前に1000レーメン銀貨は俺がゲットしなければならないのだ。

 落し物は警察に届けろと教わったけど、いまは生死がかかっている。

 それにここは異世界だ。

 道徳や倫理には目をつむっていてもらおうか。

 だいたい、拾ったものをどこに届けるのかがわからない。

 警察なんてあるのかな?

 え、地図で調べろ?

 すまん、ちょっと時間がないんで……。

 俺は急ぎ足で雑貨屋ミシェルへと向かった。


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