五七五
私の名前は、平亜由。
平、五画。
亜、七画。
由、五画。
とっても川柳が得意そうな名前なんだって。
歌人だったおばあちゃんがつけたとか、なんとか。
夏休みの宿題では、いつも交通安全の俳句とかかかされたっけな。
たくさん良いうたを詠みなさいねっていわれた。
ステキなうたを詠めるはずよっていわれた。
うたを詠むのは、嫌いではなかった。
たくさん、たくさん、うたを詠んだ。
自分では、ステキなうたを詠んでいるつもりだった。
もっと良いうたを詠みなさいねっていわれた。
ステキなうたを詠めるように勉強しなさいっていわれた。
これはなに?
これはおかしい。
こんなんじゃだめ。
こんなのは認めてもらえない。
これでは全くお話ににならない。
こんなにみっともないものなんか書いて。
おばあちゃんの納得できるようなうたを一度もよめずに、大人になった。
藤ノ木亜由になった私は、戯れに俳句をよんだ。
五七五の呪縛を逃れて詠んだうたは、広い、ひろい世界に向かって羽ばたいた。
何、コレ!
ぜんぜんダメね。
こんなのがベストセラー?
頭の悪い人しかいないのね。
自由奔放?ただの恥知らずじゃない!
…私の詠んだうたは、おばあちゃんには認めてもらえない。
けれど…、たくさんの人が、私のうたを求めてくれるから。
私は今日も…、五七五で、うたを…詠む。