その日、神は世界を救った。
「チャンスは残り三回です」どこか楽しげに声は告げた。
それに対し少年たちは顔を見合わせる。
「え?別にいらないです、それ……。」
「……は??」
迷惑そうに答えた彼らの返答に、それは低くそう呟いた。
先程までの楽しげな雰囲気とは打って変わり、苛立ちと困惑を込めて少年たちに呼びかける。
「え?もう三回しかチャンスが無いのですよ?」
「むしろ、今まで何でチャンスなんて与えてきたんだよ、おい。」
「え?!」
「そうだよね。そうやって甘やかして救ってきたから、僕らが苦しんでいる訳で……。」
「だよね~。もっと前に一回ミスったら即終了って事で、終わらすなら終わらせちゃえば良かったんだよ……。」
「……君たち、何を言っているかわかって言っているのかい?」
声には怒りと困惑と焦りが見えていた。
ある日の事だった。
三人の少年は神の声を聞いた。
そしてそこで切々と神判について聞かされた。
人間は過ちを犯し過ぎた、だから神は選ばなくてはならなくなるのだと、このまま行けば滅びに向かうのだと、少年達に長々と語った。
少年たちはといえば、まるで長い朝礼の話を聞き流すように無表情で突っ立っていた。
それをあまりの事に呆然としているのだと解釈した神は、意気揚々と言ったのだ。
「チャンスは残り三回です」と。
これから世界に訪れる事に、間違いない選択をしなければならないと。
その選択に三回間違った時点で人類は滅びると。
しかし少年たちの反応は神の予想と違っていた。
彼らは言うのだ、滅ぼしていいんじゃないか?と。
これまで神が運命の選択を託してきた子どもたちとは明らかに違った。
自分の声を聞き、使命感に燃え世界を救おうと考える者は誰もいなかった。
むしろ、何故、今までそうやって三回もの機会を与えて助けてきたのかと言われた。
「どうして……?」
「いい加減、気づきなよ、神様。今までも何度も運命の選択ってヤツを誰かにさせてきたんだろ?」
「でもまたそれをせざる負えなくなってるんだ。」
「つまりさ、何度その機会を与えても結果は変わらないって事さ。」
「たとえ俺らが今回それを食い止めたって、同じ事なんだよ。」
「ここで終わらせてくれた方が、俺らもその先の奴らも辛い思いをせずに済むんだよ。」
本当なら未来に希望を抱いて一番輝いているはずの少年たちの口から出たのは、将来に対する諦めだった。
神は理解した。
それを少年たちに言わせてしまったのが誰なのかを。
自分の過ちを……。