始点と力点2
───魔力がない者は人ではない。
───我が一族の汚点。
───失敗作
俺は生まれてから魔力が無かった。
魔法を使うことは出来ず、自身の肉体を魔法で強化することも出来ない。
だから己の五体を武器にした。
ただ鍛え、鍛え、鍛え、鍛え、魔力が無くても強くなるためなら何でもした。
魔力が籠った武器を使い、魔力が籠った装具を纏い、己の肉体は鍛えて武器とし、ただ強くなるために鍛え、集め、使った。
ただ俺の憧れた騎士になるために。
───へぇ、おめぇさん魔力がなねぇのか。
───おもしれぇ、俺の弟子になれ。
今も昔も、俺のあこがれは変わらねぇ。
▷▶▷▶
始点。
全ての力が始まる瞬間。
それを止めることで、全ての攻撃は止まる。
視点は全てにある。魔法、技、武器、自然、全てに存在し、しかしそれを見極めるのは至難の業。
だが、それを見極めることが出来たなら、全ての攻撃は無となる。
力点。
全ての力の始まり。
始点は力点の始まり。
始点無くして力点は無い。
力点は始点が終わり、力が入り始める場所。
始点を止めることは、力点を止めることでもあり、視点を見極め、相手の力点を止める事が重要である。
師匠はかつて俺にこう言った。
『始点と力点があるならこの世界だって一撃で壊してやるよ』
そして師匠はやった。
目の前に落ちてくる隕石を見事破壊してのけた。
魔法も使わず、ただ己の力で破壊して見せた。
始点は相手の攻撃を止める。
ならば力点はなにか。
力が最も入るタイミングとは即ち、最も防御が薄いタイミングだ。
そこを殴れば、例え星でも破壊できる。
そう、目の前の隕石だろうとも。
「師匠、あんたやっぱりバケモンだよ」
口で言うのは簡単だ。
だが目の前の世界を破壊する一撃を、自分が本当に止めることが出来るのだろうか。
例え力点を見極めることが出来たとして、自分にこの隕石の破壊が可能なのだろうか?
いいや、師匠は俺を免許皆伝を与えた。
それはもう師匠が俺に教えることは無いと判断したからだ。
ならば師匠にできることは俺にもできる。
「鋼牙流・八式奥義」
それはかつて若き【戦鬼】鋼牙 正門が魔界解放軍三席【巨人兵団団長】ヨルムンガンドとの戦の中で見出した奥義。
人間の体は小さく、圧倒的物量の前では無力。
【巨人兵団】の様な巨大な種族たちの前では人間の肉体はどれほど無力で、心もとないか。
だから鋼牙は編み出した。
例え自身より遥かに巨大な相手も屠れるような技。
その技は相手の内部に振動を与え破壊する技、自身の運動エネルギーを推進力とし、貫く発勁の応用。
そしてカウンター技である、相手の攻撃や力を吸い込み、コントロールする【化勁】と、僅かな距離で相手に衝撃を与える【寸勁】、そしてそれらを最も効率的に使うために使われる【箭歩】と【勁力】
魔力がないヴァルバラはさらに肉体強化として【鋼牙流・一式】である【爆心熱血】により心臓の鼓動を限界まで上げ、自身の人間にかけられているリミッター強制的に外す【鋼牙流・二式"剛力豪体"】を使いそれを補った。
そして隕石からしてみれば小さな、まるで象に爪楊枝を刺したような衝撃は内部で何十、何百と反響させ、巨大なものとし、相手を内部から破壊する技
「"破砂鼓"」
そうして巨大隕石にしてみれば小さな、小さな蟻が噛み付いたような小さな衝撃は内部で反響し続け、隕石の破壊にいたる。
普段は治癒魔法のような初級魔法は黒兜に宿ってる魔力で使ってる。
視点は動きの始まり。
力点は相手の弱点。
そう覚えとけばいいです。




