始点と力点
『フハハハハッ!勝った!あの鋼牙に勝ったぞ!人間とはやはり貧弱で矮小な劣等種に過ぎぬのだ!寿命に縛られた、短い生に縋ることしか出来ない弱小種族!バケモノの貴様も所詮人間だったなぁッ!アーハッハッハッハッ!』
声高々に笑い、勝利の余韻に浸りながらアルマゲドンが落ちるその瞬間をメモリーに記録しようと録画する金神。
しかし、胸のコアに泥を混ぜたような不快感が拭えない。
それは人で言う所の嫌な予感と似ている。
そして頭の歯車が強く軋んでいる。
それは人で言うところの憤懣に似ていた。
木神は力を最低限しか使えない。
来る日の戦いまでその力の1割だって使うことが出来ない。
それを知っている、知っているからこそ戦いを挑み、生命側の戦力を少しでも削る為に多くの犠牲を出した。
奥の手を残し、それでもこの都市を壊滅させられるだけの戦力で攻撃を仕掛けた。
人類側の脅威となりうる駒は【老月】鋼牙、【魔女】ヴィタ、この2人を殺せれば生命側の戦力を大きく削ることができる。
『【魔女】にコレをどうにかするほどの力は無いが、逃げることは可能だろう。まぁ鋼牙を殺せるだけでも良しとしよう』
「それは無理だよ」
『ん?』
するとバカにするように笑うカルディア。
その顔を金神は知らない。
いや、カルディアの全ての行動原理、データ、機能、その全てが自身が創り出した時点では備わっていないはずのものばかり。
カルディアは全てがバグまみれの劣等品であり、完壁からは程遠い失敗作。
合理性よりも非合理的思考に基づいた行動の数々。
欠陥だらけの欠陥品。
故に彼女は同族から欠陥品と呼ばれた。
「私の旦那は最高にかっこいいからな」
『···············?お前は何を言って───』
カルディアに視線を向けた瞬間、突然の視界の外からの轟音。
金神はすぐに音の元の方に目を向ければ、"何か"がものすごい速さで上空に打ち上げられていた。
ここから見れば豆粒よりも小さな小さな、自身の放ったアルマゲドンを到底破壊できるとは思えない小さな何かは、人間だった。
鬼の姿を象った黒鎧を身にまとい、巨大な剣を構えてアルマゲドンに挑む人間だった。
▷▶︎▷
「よーし、魔女は【肉体強化】と【環境適用】系の魔法を頼むわ」
「それじゃぁお姉ちゃんの特性強化魔法注入式ラリアット、いっくわよー!」
「え、何ラリアットって。え、待って聞いてな───」
───ドゴォッ!ゴキンッ
俺は魔女のラリアットにより一瞬首の骨が砕け散ったが、俺の意識が飛ぶ前にすぐさま回復魔法により俺の首は治った。
なお魔女が回復魔法をかけなければ肉と皮膚がブチブチと千切れる音がしていたので、多分首が飛んでた。
さすが【魔女】、肉弾戦なら師匠より強いだけはある。
だが殲滅力や破壊力は師匠の方が部がある。
師匠はあの隕石を破壊したが、魔女にはあの隕石を破壊する程の破壊力は無い。
師匠を完全に回復させることも可能だが、《変身》は寿命をだいぶ削るらしく、次に《変身》したら師匠の生死に関わってくる。
「お、おごッ、オエエエェェ···············」
俺は喉が潰れた痛みと、突然の痛みの消失により、脳がバグってそのまま嘔吐した。
無理、これほんとに死ねる。
てか一瞬死にかけた。
なんか誰か知らない奴が手振ってた。何アレ怖い。
だが、強化魔法と環境適用魔法はしっかりとかけて貰ったらしい。
魔女曰く、瞬間火力なら師匠の《変身》時と同じ火力が出るらしい。
だがあくまでそれは瞬間火力であって、あと必要なのは師匠の技量だ。
果たして俺に師匠と同じだけの技量があるだろうか?
「次は私の番ですか」
俺はリヴァイの横に上げた足にそのまま乗る。
「それじゃぁ飛ばしますよ」
「よろしく頼むわ」
「おい、馬鹿弟子」
「んだよ、ボケ老害」
「···············てめぇは免許皆伝してんだ、余計な心配すんじゃねぇ」
「わぁってるよ」
相変わらずだな、師匠は。
「カウントダウンします?」
「あー、それじゃぁ1、2の3で───」
俺が最後まで言い終わることなくそのまま空高くへ蹴り飛ばされた。
うん、リヴァイはそう言うバケモンだったな。
リヴァイは普通にカウントダウンをヴァルバラがするか聞いただけなので悪くない。
感想貰えたら励みになります




