死んでも愛してる
───カンカンカンカンカンカン
またここだ。
───カンカンカンカンカンカン
黄色と黒のシマシマ模様の棒が俺の目の前と向こう側の道を塞いでる。
その境に鉄でできた橋のような物。
その下にいくつもの小石が積まれている。
俺はその先に行きたい。この棒を乗り越えて、この先の道に行きたい。
何故だ?
分からない。
でも、行きたい。行かなくちゃいけない。
『一緒に堕ちよう!地獄まで!』
陽気な声が、頭の中で木霊する。
きっと、誰かとした約束。
思い出せない。
この先に、俺は行けない。
───プオオオオオォォォッ!
大きな音がする。
一瞬その音の方に目を向け、眩い光が近づいてくる。
すぐに前を見ると、また誰かがたっている。
その子はいつも笑顔で、俺を待っている。
俺の事を、何年、何百年、何千年、何万年も前から待っている。
「今、そっちに───」
手を伸ばした時
「██████」
その言葉と共に、眩い光を放っていた物が俺の目の前を通り過ぎた。
全ての音が、大きな音で塗りつぶされる。
また、待たせてしまう。
▼△▼△▼△▼△
「生きてますかー?」
「··········生きてるよ」
目が覚めて一番最初に目に入ったのは牛の頭を持ち、ゴリラのような身体をした巨大なバケモノ。
それは何度か戦場で見た事のある怪物、【歩災】ベヒーモスが街を破壊しながら暴れ狂っている。
それに対抗しているサラハットの姿。
その戦いを王座で座り、酒を飲みながら見ている愚王。
(なんだ、無事じゃねぇか。心配して損したぜ···············そういば今日は見たいアニメがあるからって休暇申請してたな)
そして突然街を覆うほどの影が現れ、上を見ればこの大都市のみならず、その周りすら更地に変える程の炎に包まれた巨大隕石が現れた。
(···············控えめに言って地獄絵図)
あまりにもあんまりな光景に現実逃避の1つでもしたくなったヴァルバラは再び目を閉じようとした時、視界の端から空飛ぶバイクが物凄いスピードで隕石に向かって一直線に飛んでいく。
いや走っている。走る?空を?バイクが?
(今のバイクは空をも走れるのか)
「て、よく見たら師匠のバイクか」
「バイク?」
「なんか別の世界だとバイクっていうヒーローの乗り物があんだと」
「そんな物もあるんですね」
そんなふうに話している間に隕石が砕け散った。
砕け散った隕石は小隕石として町中に降り注ぐ。
すると地上から無数の火球が現れ、次々に小隕石を相殺していく。
恐らく【魔女】のおかげだろう。
基本何もしない、関わらない、事なかれ主義の女だが、確か魔女の家もここら辺だったはずだ。さすがに家が潰れるのは嫌だったのだろう。
「あ、落ちてきますね」
「流石に師匠も歳かぁ」
二人で話している内に、ズガアアァンと言う轟音と共に民家に激突した鋼牙。
「やったか!?」
「生きてるよ」
鋼牙は何事も無かったかのように唯一残った民家の扉を開けて出てくる。
民家がクッションとなり、ある程度のダメージは軽減できたものの、それでも無傷とは行かず、鋼牙の左腕はひしゃげでいた。
「久しぶりじゃね?変身するの」
「この歳になるとヒーローごっこも恥ずかしくなるんでな、数年ぶりだよ」
▷▶︎▷
「どーすんだこの後。負けを認めてとっとと帰るか?」
その言葉に、金神は否定も顔を縦に振ることも無かった。
「ふん、鋼牙がアルマゲドンを破壊するなど想定内だ。計画に変更は無い」
そう言うと同時に再び街を巨大な影が包む。
「一手、弱かったな。【破滅の凶星】」




