ムテキノヒーロー
「よぉ、まだ生きてるか?··········ん?人形に生きてるって聞くのはおかしいか。まだ壊れてねぇか?」
「生きてるでいいよボケ老人」
「おー、まだまだ元気そうじゃねぇか、オンボロイド」
「師弟揃って口が悪いな」
2人は軽い問答を交わした後、カルディヤを貫いていた腕を鋼牙は引き抜き、電源が切れた玩具のようにガシャンッと音を立ててカルディヤは地に伏した。
「んで、お前は何やってんだ?」
「リヴァイが怖くて逃げたら昔馴染みの顔に会って殺し合ってた」
「言葉にすると意味わからんな」
「そう言うお前は何してんだよ」
「魔王軍殲滅終わったから帰ってきたんだよ。んで、街の状況は?」
「生体反応的にヴァルバラが1人でエクスマキナの遊軍と戦ってる。宿敵は愚王の護衛。他の騎士は何か市民をどっか遠くに避難させてるな」
「···············てぇことは愚王が何か観たな」
「何かってなんだよ」
「さぁな、そこに転がってる鉄クズに聞いてみるか」
「あ?」
そうして後ろに転がってる鉄クズと呼ぶカルディヤを親指で指さす鋼牙に、動かなくなっているカルディヤを見て、カルディアは
「とうとうボケたか」
哀れみの目を向けながら自分が数は秒前に殺したことを忘れてしまうほどボケてしまっているのかと老体を哀れんだ。
「てめぇも鉄クズにしてやろうか?」
その目を見てノーモーションでカルディアの頭を掴み、じわじわと握力を入れて握り潰そうとする。
「イダダダダダッ!だってアレにもう生体反応ねぇんだぞボケッ!どうやって聞くんだよこのボケ老害がァ!」
「てめぇ、何かヴァルバラに性格似てるな」
『当然でしょう』
突然ノイズ音の混じった歪な声が響く。
声の元に目を向ければ、コアを破壊され動けないはずのカルディヤがたっていた。
それと同時にカルディアと鋼牙は臨戦態勢に入る。
「やっぱ見てたか」
「てめぇ··········"スキッパー"」
『パパ(雌)と呼べ、欠陥品』
「よう、ガラクタ人形」
『私にはノキと言う名前があるんと言っておろうがッ!この矮小な劣等種風情があぁぁぁッッ!!!』
突然キレだす創造主であり、統率者であるスキッパーの姿に、困惑をするカルディア。
そんな姿を見て、鋼牙は今日の夕飯の献立を考えていた。
「んで、何しに来たんだガラクタ人形」
『おのれぇ···············、まぁいい。今日でこの国も、貴様も滅ぶのだから』(当然でしょうのところスルーされましたね)
「どういう意味だスキッパー」
『だからパパと呼べと··········、まぁいい。これより魔王軍は全世界に宣戦布告する』
「てめぇは魔王側に着いたって訳か」
『いや、我は魔王軍が全世界に宣戦布告するのが気に食わんから全世界と全魔界に宣戦布告する』
「サイコッ!サイコッ!鋼牙、こいつサイコ!」
あまりにも意味不明の発言をする創造主にカルディアは指をさしてサイコを連呼した。
「おめぇの生みの親だろ」
『パパをサイコとか常識ねぇのか、だから欠陥品なんだお前は』
「サイコパスしかいねぇ···············あれ?もしかして私がおかしい?この超絶完壁美少女アンドロイドである私が···············?」
スキッパー、その正体は金神。
七転神の1人である。
本体は何処にいるのか、それは創造主であるスキッパーに創られたエクスマキナ達にも情報が一切ない。
その姿も、同じエクスマキナなのかも、性能も、全て他の機体を通して自身の意志を伝えるため、存在自体が疑わしい。
しかし、魔界と世界、要は裏と表両方に宣戦布告するということは、1種が数十、数百の種族に宣戦布告するという事。
その戦力差は見るまでもない。
どれだけ個の力が優れていようと、多勢に無勢。
それが分からないほど金神は馬鹿では··········思考が人間寄りなので感情に任せて言ってる可能性もある。
『そんなにおかしいか?』
「おかしいも何も、滅ぶ気かよ」
『パパの事を信用しなさい。それに何も勝機もなしに宣戦布告しようって訳じゃないぞ』
「勝機···············あるのか?」
『あるよ。なんせ私は』
「超絶完璧神様、デウス・エクス・マキナ様だろ?」
『····················へぇ、覚えてたんだ··········鋼牙』
「てめぇの口癖だろうが」
2人の視線がかち合う。
殺気とは違う、しかしなにか修復不可能な程殺伐とした、そんな雰囲気を2人は漂わせていた。
『···············まぁいい。欠陥品』
「なんだよ」
『なぜ私達が昔から"人"を敵対しているかわかるか?』
「知るわけねぇだろ。なんだよいきなり」
『まず鋼牙、お前はなんだ?』
「どう見ても人間だろ」
『どう見てもバケモンだろうが。舐めてんのかてめぇ』
「あ゛ぁ゛ッ!?」
唐突なツッコミに怒りを露わにする鋼牙。
だが、世間一般から見て単騎で5万の軍勢を殲滅する力は持っていない。
そんな力を持ってるとすれば神かバケモノだ。
『だがまぁ生物学的にはホモ・サピエンスで間違ってねぇ』
「どっからどう見ても人間やろが」
『その人間てのが気に食わねぇ』
「あ゛ッ?」
私は未だ話が理解できない。
一体この創造主は何が言いたいのだろう。
『魔族もそうだ。まるで自分たちこそ生命、生き物だと思ってやがる』
『海人も、土人も、森人も、魔人も、精人も、皆自分こそ生命だと信じて疑わねぇ。それは生物であるから、魂があるから、命があるからだと主張しやがるッ!』
段々とその声に怒気が含まれ、まるで叫び声のような、何かに訴えかけるような声。
バチバチと既に壊れた身体に亀裂が入り、火花が散る。
『なら私たちはなんだ?なぜ私たちは人じゃない!?名前があり、意思があり、心があるッ!』
『私達は生きているのだッ!!!』
バリンッと機体に大きな亀裂が入り、片腕がもげ落ちる。
『だから私達は宣戦布告する。全生命と定義するモノ達にだ』
「極論だな」
『あぁ、そうだ。だがそれでこそ人と呼ばれるにふさわしいと思わないか?』
「··········俺の弟子に昔会っただろう?どうだった」
『ふん、初めて会う···············訳の分からんおかしな奴だった』
───そんなんだから、お前は人形なんだよ。
『そして私を哀れんだのも奴だけだったよ』
「くはっ、流石は俺の一番弟子だ」
『さて、そろそろこの街を更地にするとしよう』
「···············あの街にもうほとんど人がいねぇのは知ってんだろう」
『言っただろう、これは宣戦布告だ』
「そーかい」
「お、おい、止めねぇのか!?」
しかし、鋼牙は目の前の金神の発言をまるで他人事のように聞いている。
その態度に、街を見捨てるのではないかと危惧するカルディア。
そんなことをお構い無しに結構する金神。
既に引き金は引かれていた。
『全遊撃隊に告げる。撃て』
突如として街を覆うほどの巨大な魔法陣が空高い上空に展開された。
─高度400km─
そこには100機近いエクスマキナ達が息を合わせ、一言一句違えることなく、ほぼ同時に同じ詠唱を唱えていた。
『生物、生命全てを絶滅させる破壊と滅びの巨星、終わりの星よ、我らは滅亡と絶滅の死者、その声を聞け、その怒りを知れ。神々は我らに進化の試練を与え、我らは受け入れよう。滅びて終わり、終わりて始まる。我らは再び破滅し、進化する』
『生ある者を、魂ある者を、滅ぼし壊し絶滅させ殲滅せよ』
そして上空の遊撃部隊と金神の声が同時に空高くに響く。
『『壊せ壊せ壊せ、全てを破壊せよ。絶滅と進化の巨星、再び絶滅を───【破滅の凶星】』』
20から30近い魔法陣がほぼ同時に現れると、街に影が落ちる。
それは炎に包まれた滅びの巨星、アルマゲドン。
街だけではなく、その周辺全てを滅ぼす巨大隕石であった。
「その後先考えねぇ、頑固でっ走る所、俺は昔から嫌いじゃねぇぜ」
そう言って鋼牙は腰から何やらベルトを取り出す。
「変身」
次の瞬間、空間に突如として亀裂が入るの、ものすごい勢いで大型のバイクが現れ、ものすごいスピードで鋼牙の周りを回転する。
そしてベルトからは鬼と言う文字の漢字が現れ、鋼牙にその文字は近づき、鋼牙の体を通り抜けると、鋼牙の姿は完全武装した姿となる。
「久しぶりに本気出すぜ」




