意思
完璧な連携。
高熱の光線に無数のミサイル。
鉛の弾に鋭利な刃。
生物を殺すことに特化し、それ以外の全てを捨てた種族。
曰く、それは神が罪人を罰する為に作ったと言う。
曰く、増えすぎた生物を選別する為の神の意思だと。
曰く、それは神の代行者と言う。
故に奴らは機械仕掛けの神なのだ。
「シッ!」
俺は鎌のような鋭い刃で俺の首と心臓を狙ってきた前後の二機のエクスマキナを大剣、ダインスレイヴで前の一機は頭から真っ二つにして心臓部にあるコア事真っ二つにし、後ろから来たエクスマキナは後ろに下がり、自ら懐に入ると、裏拳で顔面を潰して後方に飛んだエクスマキナを袈裟斬りでコアを破壊する。
2機が機能停止したというのに、周りの奴らは顔色一つ変えない。
無表情や、表情が硬いなど、そんな生易しいものではなく、まるで顔には既に『顔』と言うシールを貼っているように。
刃や近接攻撃が主な攻撃法のエクスマキナは「爪」。
光線や遠距離攻撃してくるエクスマキナが「指」。
俺が先程機能停止させたのが「爪」だ。
こいつらの恐ろしいのはその連携だ。
今の3秒にも満たない一瞬の攻防で俺は爪を2機行動不能にしたが、「指」は俺が「爪」を行動不能にしたと同時に光線で俺の脇腹を貫いていた。
「ぐふっ」
内蔵が負傷し、口から血が溢れている。
まるで計算されたような動き。
恐らくコイツらには既に俺を殺す計画が頭の中にインストールされているのだろう。
焦ることは無い。
コイツらは確実かつ計画的に、俺を殺す。
「自爆セヨ」
「了」
「は
───?」
一瞬の事で俺の理解が遅れたが、コアを破壊し行動不能にしたはずの「爪」から返事が聞こえ、俺が振り返った頃には俺は空高くに飛び上がっていた。
突然の浮遊感に脳の処理が一瞬遅れ、その隙に「指」の光線が俺の心臓と眉間目掛けて飛んでくる。
俺はすぐに身を捩って回避するが、心臓を狙った光線は心臓の代わりに左肺を貫いた。
「ラァッ!」
俺はダインスレイヴを「指」に向かって思いっきり投げ飛ばし、近くを飛んでいた一機の胸を貫き、「指」はそのまま撃墜された。
しかしそれでも光線は止まらない。
コイツらは司令塔、もしくは全員殲滅するまで泊まることはない。
俺が落ちている間に、3機の「爪」が刃を俺の急所を的確に狙い向けてきた。
そして俺は取り囲んでいた「爪」3機の頭、胸を的確に潰し、逆にその3機を「指」の追撃を防ぐ盾として使い、そのまま地面に着地する。
「⋯⋯⋯チッ」
しかし、全て防ぎ切る事はできず、先程の「爪」の攻撃で腹部を切り裂かれ、刃物がそのまま突き刺さっている。
他にも光線の他に鉛を何発か食らってしまった。
俺は刃物を無理やり引き抜き、それを未だ動いている盾にした「爪」のコアに突き刺し、動かなくなったのを確認すると、そのまま地面に放り投げた。
「ヒール」
俺は傷の箇所に手を当て、回復魔術を唱えると、傷は癒える。
あの機会人形達にはこの戦い方が1番有効だ。
体の負傷など気にせず兎に角コアを潰し続ける。
機械人形達は一定の攻撃をすると、ほんの一瞬だけ司令塔から次の指示があるまで動かない。
数字にすれば0.6秒ほどだろうか。
その隙に回復。
その繰り返しだ。
「⋯⋯⋯0.2秒か」
回復したのを確認する前に既に攻撃が開始されてるのを見るに、司令塔が近くに居るのが分かる。
恐らく「心臓」もしくは「スキッパー」のどちらかがこの近く居る。
「心臓」と言えば、先代勇者の模倣品。
歴代最強と呼ばれた男。
かつての魔人大戦で名を馳せた勇者。
英雄と呼ばれた生きた伝説。
それを模倣したのが「心臓」。
「───ハハッ」
あの憎き機械人形。
体が震える。
かつて他種族が手を組んで3万の軍勢で「心臓」の討伐に向かい、殆どが殲滅された。
その討伐に俺も参加していた。
あの圧倒的戦力に、俺は何も出来なかった。
───早く副隊長を連れて逃げろ!
───俺たちが時間を稼ぐ!早く副隊長を!
俺がを庇い、部下は全員「心臓」に殺された。
目の前で次々殺されていく俺の部下。
「⋯⋯⋯⋯良かった」
俺の顔が歪む。
「こんなに早く、お前に会えるなんて」
少しでも「心臓」が居るという可能性に、俺は心が踊る。
目の前の機械人形を壊し、潰し、先程の大きな魔力がぶつかり会った場所に向かう。
会いたくて、会いたくて
殺したくて。
「ハハハハハハッ!」
俺は喜びで目の前の機械人形達をゴミに変え、投げたダインスレイヴを拾い、更に多くの機械人形を潰していく。
腹を貫かれ、体を切り裂かれ、臓物を飛び散らせ、それを直ぐに治し、目の前の機械人形を潰していく。
待ってろ。
「殺してやる」
あの時の借り、今返しに行くぞ。
(うっわ、血だらけになってるのに笑ってますね)
リヴァイは血だらけの重症になりながら発狂したように笑って目の前のエクスマキナを叩き潰し破壊するヴァルバラにドン引きしていた。
▷▶︎▷
「ハッハーッ!どうだオンボロイド!これが失敗作の力じゃボケぇッ!」
「····················」
強大な魔力と質量のぶつかり合いにより生じた爆発で付近の全ての物質は蒸発し、平らな地面だけが残った。
二十八号の使う剣は先代勇者の剣の模倣品。
しかし勇者の剣とは似て非なる別物であり、その能力と性能は模倣することは出来ず、どれもワンランク下のものとなっている。
だがカルディヤの使う勇者の剣はかつて先代勇者が使った本物の勇者の剣。
だが、勇者の剣は元々誰も扱うことが出来ず、先代勇者以外が使えばただの鉄の塊と同じ代物だが、カルディヤはどういう訳か勇者の剣の性能を最大限活かしている。
なぜ勇者の剣をカルディヤが使えるのか、それはカルディヤ本人にも、カルディヤを創った者も知らない。
よってなぜ使えるかは、カルディヤ自身の何らかのバグと言う結果で処理されている。
膝をつき、左腕が砕け、一部顔や体のパーツが露出するほどの損害を受けてなお、カルディアは笑っていた。
そんなカルディアの姿を見て、怯むことも、疑問を抱くことも、賞賛することも、見下すこともせず、カルディヤは淡々と今の状況を解析し、最も安全で確実に目の前の失敗作を排除するプランを立てていた。
「天罰ヲ降スハ神ノ理。天罰ニ裁カレルハ天ノ理。抗ウナ、逃レルナ、否定スルナ。天神ノ理ハ天上天下不変デアリ、天命」
「───マジか」
その魔法は曰く、神の天罰と言われた。
「平伏セヨ、屈服セヨ、従順セヨ。音アルモノハ聞ケ、見ルモノハ見ヨ、感ジルモノハ感ジ、願ウモノハ祈レ」
(どうするどうする!?今から最大火力で··········ダメだ!時間が足りない!魔力も残ってない!何よりアレは正規品、私の最大火力をぶつけても恐らく壊れない!)
それは曰く、全ての理を書き換える魔法。
「終ワリハ罰デハ無イ、始マリコソ罪デアリ、神ハ断罪スル。咎人ハ今開放サレル」
「···············ここまでか」
世界の理を書き換える、神の御業。
生者と死者に等しく罰と罪を与える魔法。
その魔法は太陽星君の権能の一つ、「不動」を持ってしても防ぐことが不可能である魔法。
全ての理は白紙にされ、再び自身の都合のいい理に書き換える魔法の名は
「───『天理創生』」
眩い白い光が、全てを呑み込み破壊する。
「はいちょっと失礼」
「お前は───」
カルディヤが魔法を発動したと同時だった。
鋼牙はカルディヤの胸を貫いていた。
カルディヤの装甲は魔力を全て弾き、装甲の強度は大気圏から紐なしバンジーをしても傷1つ付かないほどの強度を誇る。
装甲には更に加護が着いており、全ての攻撃を弾く加護、攻防の加護が着いている。
それを鋼牙はいとも容易く貫いていた。




