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指と爪




───お前らは勇者を倒す為の"実験台"だ。


私達は勇者のコピー品として、勇者を倒すためにありとあらゆる情報を入れられ、様々な機能を追加で搭載された。

しかし先代勇者の力は凄まじく、その情報量に耐えきれず、またはその力に耐えきれず、次々と実験台は壊れて行った。

先代勇者の情報と力を完全にコピー出来たのはたったの5機。

この5機で先代勇者に挑んだ結果、残ったのは私と、もう1機だけだった。

その1機は撤退を余儀なくされ、ほぼ機能が停止していた私は、撤退することもでぎず、その場に取り残された。

本来ならば帰隊出来なかった場合は即座に目標諸共自爆するよう設定されているのだが、今回は何らかの影響で自爆機能が停止していた。


私達は道具。

心を持つことすら許されない兵器。

その兵器としての役目も果たせなかった私は、何?


『私は、何?』

『心がありゃぁ人間だろ。見た目的に』


それが(自我)の生まれた瞬間だった。




§§§




「欠陥品は要らねぇんじゃなかったのか?」


「───否定」


「否定?」


「A-00-28ハ唯一ノ『失敗作』ト記録サレテイル」


「あいっ変わらず見る目ねぇなぁ」


その言葉を皮切りにお互い戦闘態勢に入る。


「女神ニ愛サレシ剣ヨ、深淵ヲ照ラシ月光ヨ、天ヲ照ラス光トナリテ今我ココニ告ゲン。───【魔力限定解除】【目標設定】【擬似的魔力変換完了】【先代勇者模倣完了】【詠唱省略】」


「我は神に愛されず、地を這う虫になろうとも、我が名は雷鳴の如く天に響かん───【魔力解除】【予備電源始動】【勇者模倣完了】【詠唱省略】」


2人の魔力が、2人の持つ剣へと集められてゆく。

その魔力を濃密なまでに練りあげられ、その魔力を二人が持つ剣が更に濃く、何倍にも多くしていく。


「───我、神ニ至レリ」

「───我、人に至れり」


選ばれし勇者の剣(エクス・カリバーン)

機械仕掛けの剣(デウスエクスカリバー)



§§§




「ふぅ〜、やっと逃げきれたぜ」


「逃げて恥ずかしくないの?」


「頼む、1発だけ全力で殴らせてくれ」


「レディを殴りたいなんて、サイテーね」


(俺かコイツの頭に隕石落ちてこねーかな)


空を眺めながら、心の底から神に願うヴァルバラ。

今二人は魔王軍でも屈指の火力と戦闘力を誇るエクス・マキナ。


アレらは「スキッパー」と呼ばれる主人格が存在し、スキッパーの手足となっているのが今俺たちを追っているエクス・マキナ。アレらは通称「指」と呼ばれている。


エクス・マキナ達は自身の役割によって「頭」「目」「口」「歯」「爪」「指」「脚」「心臓」等に別れ呼ばれている。

今俺たちを追っているのはその中でも屈指の攻撃力を誇る「爪」と「指」だ。

一体一体が1個師団を優に超える戦闘力を持っており、しかもそれが何十体も息のあったコンビネーションで攻撃してくる。

厄介極まりない。


「酷道平原を思い出すな」


かつて、まだ俺が近衛隊の副隊長をしていた頃、「爪」「指」「脚」そしてエクス・マキナ最強の火力と戦闘力を持つ「心臓」が攻めてきた時、俺と近衛隊数人によって増援が来るまでの時間稼ぎをしたあの戦いが脳裏にチラつく。


助けを叫ぶ仲間と、逃げる仲間と、特攻して行った仲間達。

不幸な事に、仲間の屍を盾に、俺だけが生き残った。


俺の中で何かが固まろうとしていた時、俺の目をリヴァイが覗いていた。


「···············死ぬのはまだ早いか」


「当然です、貴方にはちゃんと責任を取ってもらわないと」


「ふざけんな」


何故かお腹を擦りながら顔を赤らめるリヴァイの腹を本気で殴りたくなっってしまった。


「⋯⋯⋯今、凄い魔力がぶつかり合ったな」


「懐かしい魔力ですね」


「なんだよ、お前の知り合いか?」


「えぇ⋯⋯⋯本当に懐かしい」


魔力がぶつかり合った方を懐かしげに眺めるリヴァイ。

そんなに嬉しいのか、吊り上がった両頬が裂けている。普通に怖い。


「それにしても街中だってのにあの人形ども良くやりやがる。咄嗟にうちの愚王が全員地下に転送してなきゃ大事故だぜこりゃ」


「あら、人がいないと思ったらそういう事でしたか」


「うちの愚王はまがん持ちでな。左右に別々の魔眼があって、特に左目の死線の魔眼は本当にデタラメだな」


「えぇ、よく知っています(・・・・・・・・)


魔眼。

魔眼にはそれぞれなにか特殊なものを見る力がある。

そしてその瞳に写ったものを触れることが出来る。

()()()()()()()が出来るのが魔眼だ。


太陽星君の持つ魔眼は左右にそれぞれ一つずつ。

左眼は【死線の魔眼】と呼ばれ、生物には決められた死期があり、死期が近づくとその人の体から糸が現れ、それが切れると人は死ぬらしい。

太陽星君はその不確定の存在であるその糸、死期の運命の糸を意図的に無くす、もしくは切ることが出来る。


太陽星君はこの力で何度も民の命を救ってきた。

今回の様に突然の襲撃の際に備え、民の一人一人に自らの足で家を訪ねては転送陣を民の体に刻んでいた。

赤ん坊が生まれればその日にでも魔法陣を刻む為にその者達の家に訪ねた。


そしてその甲斐あってか、この様な襲撃があるにもかかわらず民の死人な一人もいない。


「【黒兜】」


「あら、もう行くのですか?」


「まぁな」


俺はそう言って物陰から姿を顕にさせる。

それと同時に先程まで破壊行為をしていた「爪」と「指」がこちらに注目すると、即座に攻撃を開始する。


それと同時に俺は武器を構えた。


「啜れ、血餓えの魔剣・ダインスレイヴ」






【人形】エクスマキナ(「爪」「指」)VS【黒騎士】ヴァルバラ

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