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メインディッシュは絶望を




───ゴーン


この街一番の時計塔。

その音が鳴る頃、街は暗くなり、あっという間に夜となる。


「楽しい時間はあっという間ですね」


「俺は今日だけで走馬灯を3回も見たよ」


何がスイッチか分からないが、突然捕食者の目で俺を見つめてきて、今から喰われるのでは無いのかと気が気出なかった。

あまりにも怖すぎて二十八号は「2人の邪魔をしては行けない、先に帰る」とか白々しい言い訳並べて逃げ出したし。

あの野郎、帰ったら両頬を掴んで変顔にしてやる。


「···············羽虫が迷い込んだみたいですね」


「それは俺達をさっきから尾行してるヤツらのことか?」


「あら、気づいてらしたのですね」


「お前が何も言わんからてっきりお前の部下か何かと思ったんだが」


約時間にして1時間と3分前あたりからだろうか、殺気も隠せない羽虫が俺たちの周りをうろちょろうろちょろしていたのは気づいていた。

微かに香る海水の匂いから種族は海洋種オーシャンズ

しかも陸でここまで動き回れるということは深潭族アビスだろうか。

だとしたら厄介だ。

あいつら海の底の底、深淵生まれの得体の知れない化け物揃い。

外見は人間とそう大差は無いが、中身がまるで別物だ。


しかもここまで殺気を隠してないとなると、最初から暗殺などする気は無い、真っ向から殺してくるつもりだ。

めんどくさい。


「どーせお前関連だよ。どうにか説得できねぇの?」


「いえ、おそらく彼らは私を殺しに来たんでしょう」


「え、お前に喧嘩売れるような奴らに尾行されてんの?俺死ぬよ?」


「私に喧嘩を売るのは馬鹿か私と同種の化け物くらいですからね」


こんな化け物に喧嘩売れるのは同種の化け物か、余程の死にたがりの馬鹿の2択だ。

こんなもん見たらわかるだろ。手を出したらヤバい化け物だって。


すると、突然裏路地の影の中からとある男が現れた。


「魔神神将が一人、"邪智暴虐"の右腕である連合軍十五席、波旬と申します。お見知り置きを」


そこには鬼の角を生やし、黒い極東の和服を身に纏う2mは優に超える筋骨隆々の男が礼儀正しく頭を下げた。


魔神神将と言えば、魔王とは別の勢力、魔神の直属兵士であり、しかもたった一人で王国を1つ滅ぼしたと言われる蟒蛇の右腕、【星喰・波旬】。

厄介なのにも目をつけられたもんだ。


サラハットは何をしてんだ?こんな化け物をみすみす街に入れるようなザルな警備はしてないはずだが?


·························殺られたか?


波旬の身体からは微かに血の匂いがする。

おそらくここに来る前に何人か殺している。


「···············周りの奴らは?」


「私とは別件の者たちですね。目障りなら私めが始末しましょうか?」


「無駄な殺生は好かん」


「かしこまりました」


「所でお前の目的は?」


「我らが頭領、暴虐様が貴方に会いたがっています」


「周りの奴らは?」


「そちらのシスターに御用がある様ですね」


淡々と答える波旬。

目的が全く見えない。

ここで殺り合うのは構わないが敵の戦力が未知数である限り、ここでの戦闘は周りの市民にも被害が及ぶ可能性がある。

相手は一人で1国を滅ぼした化け物。

そんな相手に下手に刺激して街を破壊されても困る。


「···············サラハット、この国を警備してたそこそこ強い奴がいたろ。そいつはどうした」


「安心してください、()()誰も殺していませんよ」


「まだ··········か」


さてどうするか。


「うーん、鬼族は今この国友好的な関係じゃなかったか?」


「それは元々魔神に仇なしていた鬼達、七転神が一人である茨木梅華いばらき ばいか、そして我らが頭領である暴虐様とその一味は1000年前から既に魔神と手を組んでいます」


七転神。

七転神と言えばかつて、世界を作った創世神であり、魔神の一族と、魔の王である魔王を封印した七人の様々な種族の王をかつて創世神が神として迎え入れ、望みを叶えたことで神となった7人の人柱の事だ。

そのうちの一人、暴虐こと酒呑童子は七転神の一人であり、水を司る神。

世界に水を与え、海を作り、川を作り、酒を作った。

その瓢箪からは流れ出る酒は飲むものを魅了し、皆が口を揃え「世界で1番美味い酒」と評し、その酒は瓢箪から尽きることなく永遠に流れ出るそうだ。

そして酒呑童子の実力と言えば、魔族最強と言われたあの魔王をたった一人で封印したという逸話がある。

かく言う俺の隣にいるリヴァイアサンも七転神の一人。

彼女はよく水神だと勘違いされがちだが、彼女は水神では無い。

彼女は破壊と創世を司る神、火神だ。


だが、酒呑童子は話によれば7000年以上昔から神として君臨する唯一の七転神。

それが波旬の話では茨木に変わっている。


鬼の総本山、極東の鬼ヶ島では何が起こってんだ?


「今日は機嫌がいいから見逃してあげるわ、失せろ」


考えている途中でリヴァイアサンが突然横から話に入ってくる。


「なんの冗談ですか?リヴァイアサン」


「さんをつけろよデコ助野郎」


(リヴァイアサンさん?)


睨み合う波旬とリヴァイアサン。

身の毛のよだつ様な凄まじい殺気が、2人の衝突を避けられないものとしていった。

そんな2人を周りを囲む奴らは静かにみていた。

恐らくこいつらはあわよくば2人が体力を削り、共倒れしてくれればそれでいい。そうでなくても、リヴァイアサンが少しでも弱ってくれれば、あちら側が有利となる。

考えていることはし肉に群がる気色悪いハイエナその物だが、戦場においてはそう言った者たちが生き残る。


「リヴァイアサン、貴方は今となっては我らが頭領よりも古参の神。6000年以上深淵を喰らい、最強として君臨してきた。そろそろ死んでいかがですか?」


「ハハッ!その6000年間、だーれも私を殺せなかったから私は今もあんなクソまずい深淵喰ってるんでしょ」


「なら、今その呪縛を解いて差し上げますッ!」


そう言って波旬がリヴァイアサンの距離を詰め、腕を大きく振りかぶった。

早い。

長く戦場で早い物は多く見てきたヴァルバラが目で追えないほど、早い。


───ゾブッ


次の瞬間、波旬の腕は根元から消えていた。

そしてリヴァイアサンの口の中から、肉が千切られ、骨が砕かれる咀嚼音。


「───」


唖然とする波旬に、リヴァイアサンは見せつけるかのように、ガパリと鮫のような鋭い牙の生え揃った歯を剥き出しにしながら、口角がまるで裂けたように吊り上がり、口を開ける。

牙の隙間から紅い血とともに、波旬の指の一部が顔を覗かせていた。


「ご馳走様」


次の瞬間、波旬の頭部はなくなっていた。


「あぁ、デザートがまだでしたね」


リヴァイアサンの目線が、今なお物陰に隠れている者たちの方を見て、再び口を開けた。






§§§






「おまえがおうさまかー?」

「いかにも!我が王だ!」


一方宮殿の玉座の間では、とある小さな少女と、周りには少女が捻じ曲げ、潰し、千切り、原型すら無くなるほど潰された騎士の死体の山。


「我の騎士を殺すのはそんなに楽しいか?」

「あははッ!へんなこというなー!」


無邪気な笑顔で、まるで何も知らない小さな子供がおもちゃで遊んで喜ぶような笑顔で、死体の臓物を撒き散らし、血の雨を降らせる。


「たのしーよ!」

「戯れはそこまでに」


後ろに現れる巨大な影を纏ったような、死神のような男が現れる。


「さて原王よ、"鍵"を渡せば我々はこの場を引こう。命が惜しくば"鍵"を渡せ」

「ほう、お前らは鍵が欲しいのか。あれは7つで一つ。我の物だけでは飾り程度よ。我にとってはなんの価値も無いもの」

「ならばすぐに」


「───痴れ者が」


次の瞬間、体がすり潰されるような重圧が2人の刺客を襲った。

先程のフレンドリーな雰囲気から一点、それは約8000年以上前からこの国を収める七転神が人柱


"木神"太歳星君

かつて人でありながら、"魔災戦争"を終結させた英雄の殺気だった。


腰を上げ、玉座から立ち上がる。


「我に指図をするなど身の丈をしれ、死体にたかる薄汚いネズミ風情が」


すると太歳星君は1枚の札を投げる。


「【玄武】サラハット」

「···············あの、今日俺休暇なんですが」


突然ふだから現れたサラハットは、完全に部屋着で、背中にはI♥撲殺ちゃん"と書かれたパーカー。


「知らん。それよりそこの公衆トイレにこぼれた小便以下のタンカスどもを殺せ。目に映すだけで不愉快だ」

「あー、変に怖いキャラ作っても変ですよ国王··········いや、星君」

「やかましい」


何やら面倒くさそうにしているサラハットと、完全に殺気立つ二人組。


「サアアアァァラアァァァァハッッットオオオオオオオオッッッッッ!!!!!!!」

「そんな叫ばなくても聞こえるよ···············ベヒモス」




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