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第二話 プロローグ②


「……ん?」


スマホの振動に気付いた俺は、読んでいた漫画雑誌を本棚へと戻す。

画面には『一ノ瀬(いちのせ)(はじめ)』の文字。言うまでもなく俺の父親である。だが、極度のめんどくさがりな父さんがわざわざ電話をかけてくるなんて珍しい。

俺はコンビニを出ると、すぐさま通話ボタンをスワイプし電話に出る。


「もしもし、どうしたんだ?」

『あぁ、暁嗣かい? 今日は早めに仕事を切り上げてきてな。直ぐに家に帰ってきてほしいんだ』


父さんはいつも通りの優しい口調で、だがその声色は何所か深刻な雰囲気を漂わせている。これはただ事では無いと息を飲んだ俺は、父さんに「分かった。直ぐ帰る」とだけ伝え電話を切る。



家に帰ると、広いダイニングテーブルに両親と義妹達が対面になるように座っており、何故か義妹達は目に涙を溜めている。


「暁嗣。こっちに座ってくれるかい?」

「あ、あぁ……」


全く状況が掴めていない俺は、取り敢えず指示された父さんの隣に腰掛ける。


「それで? 話ってのは?」


俺が聞くと、電話と同じ声色で父さんが言った。


「父さん達、離婚しようと思うんだ……」

「……は?」


その瞬間、俺の中で何かが弾けた事がはっきりと分かった。


「り、離婚ってあれか? 離れるに結婚の婚って書いて離婚か?」


驚きのあまり震える声に父さんは気まずそうに「そうだ」と答える。突然の事に情報の整理が全く追いつかない。ただ、これだけは分かる。このシリアスな空気の中、俺は間違いなく


――《《喜んでいる》》――


だってそうだろう。この対、俺アンチ三つ子義妹達からやっと解放されるということだ。

俺は今にも飛び跳ねそうになっている体を必死で抑える。


「ま、まぁいいんじゃないか? 父さんの人生は父さんの物だし」

「「「な!?」」」


俺があくまで父さんの意見を尊重するスタイルで言うと、義妹衆3人が驚いたように目を見開く。だがそんなことは知らん! そもそも何故泣いているのかも分からない。だがこんな下僕の様な生活はもうこりごり。


そして俺は無事、兄弟分離――いや、義・兄弟分離を遂げたのだった。めでたしめでたし――――。


とは、残念ながら終わらなかった。むしろ俺たちの生活は、これからが本編だったのだ。


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