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竜の本望  作者: 夜乃 凛
本都決戦
32/38

鬼神

 カーラの騎馬部隊はベルーナ帝国の街の入り口までやってきた。

街には人気が無いように見受けられた。


 そして、兵士達が街で警備している様子はない。

出払っている。


「城を目指す!!邪魔をする兵士のみ、斬れ!!」


 カーラは号令を出して、街に入っていった。

 ベルーナ本都の住民達は驚いた。突然騎馬部隊が侵入してきたのだ。

住民達は驚いて逃げている。叫んでいる者もいる。


 カーラ達の行く手を阻む者はいなかった。

城まで一直線、街の中を駆けていく騎馬隊。

 全員無傷で、白の手前までたどり着いた。妨害が無かった。

城の手前に、人気はない。


 カーラは白馬から降りた。部下もそれに倣い馬から降りる。

ここからは自分たちの足で、城に入っていくのだ。

街に兵士達はいなかった。しかし、城の中にはいると思われた。


 室内戦が想像される。しかし、時間を喰ってはいけない。

より素早く、無駄なく、王の首を取らなければならない。

 カーラは城の入り口の境界まで歩き、城にはいったタイミングで叫んだ。


「レテシアのカーラ、参る!」



 ジャコンは執務室で何をするでもなく座っていたが、城の中に響いた声に驚いていた。

レテシア?カーラ?

わけがわからなかったので、ジャコンは急いで執務室から出た。


 嫌な予感がしていた。

通路の階段から下のフロアが見える。

 ジャコンは愕然とした。

敵兵に攻め入られている。甲冑の兵士達が侵入している。


 何故?

先ほど、レテシアと聞こえた。侵入してきているのは、レテシア兵?

レテシア国は、今頃踏み潰されている最中のはずでは?


 ジャコンは明らかに動揺していた。

このまま上がってこられたら、殺されてしまう。

入り口からも逃げられなそうだ。

 ジャコンは、急ぎバラージの元へ向かった。

廊下を駆けて、玉座の間へ。

玉座の間には少数の兵士と、玉座に座っているバラージがいた。

玉座の間の兵士達とバラージは、異変に気が付いていない。


 ジャコンはバラージの目の前まで走った。

兵士たちが怪訝そうな表情でジャコンを見ていた。


「バ、バラージ様!!」


「ジャコンか……何をしている」


「敵兵が城内に侵入しています!!」


「なに?」


 バラージは流石に立ち上がった。


「どこの兵士だ!?」


「レ、レテシアと聞こえました……」


「馬鹿な!レイジスが今攻めている最中ではないか」


「そ、そうなのですが……」


 ジャコンはその時、わかってしまった。

おそらく。おそらくだが、陽動作戦だ。

囮だ。レテシア本都を囮にして、その間にレテシアはベルーナを落とそうとしたのだ。


「兵士達を動員しろ!」


「間に合いません!それに、数もいない!」


「なんとかしろ、ジャコン!」


「無理です!出来ることは、逃げるだけです!」


「逃げる?馬鹿を言うな!ベルーナ帝王が逃げてたまるものか!」


 バラージの態度に、ジャコンはキレた。


「ベルーナ帝王?はっきり言うが、思い上がりだ!状況もわからんのか!」


 ジャコンは迫りくる脅威から、本音を出してしまった。

動揺していたこともあり、しまった、と思ったが遅かった。

怒ったバラージは、ジャコンに近づき、剣を引き抜いた。


「お、おやめくださ……」


 バラージは聞く耳を持たず、ジャコンの首をはねた。

ジャコンのあっけない最期だった。


「城内に入った敵を撃退するのだ!私も戦う!」


 バラージが周囲の兵達に命令した。バラージは抜いた剣を持っている。

 玉座の間には少数の兵士がいる。

少数の兵士たちは、戦う気でいるようだ。



 カーラ達は城内に突入した。


「邪魔をすれば命は無いものと思え!!」


 カーラの叫び声が響く。

城内には兵士達がいたが、数は本当に少なかった。

突然の侵入者に、心構えもしていない兵達が対応出来るはずもなく、棒立ちの兵士が目立った。


 カーラは、この状況は良い、と直感していた。

邪魔をする兵士がいない。完全に不意打ちを出来ている。

 カーラは部隊を分けることにした。


「王を探すのだ!見つけ次第、首を持ち帰れ!各自分散!」


 カーラの号令を聞いた兵達が別れだした。

カーラは入った広間から赤い階段を上がって、王を探している。

周囲を見る。走って探すカーラ。そこに、敵兵の殺気が向けられた。


 バラージの命令を聞いた兵士だった。その兵士が、カーラに襲い掛かってきた。

 だが、数は一人。相手にならない。カーラは兵士の胴を一閃して、振り返りもしなかった。

兵士は剣を振る間もなく、廊下に倒れた。自分が何故倒されたのかわからないまま、

兵士は死んだ。


 そして次々に、億の部屋から兵士が出てきた。その数、五人。

カーラは直感した。あそこの部屋に王がいるのではないかと。

 一対五の状況より、王のいる部屋に気が向いていたカーラ。

 兵士達が襲い掛かってくる。

 一人目を突き殺す。

 突いた剣を即座に引き抜き、下から振り上げる。二人目。

 左上から、右に一直線の薙ぎ。三人目。

 右上から下に振り下ろす。四人目。

 五人目に、足元への剣撃。五人目。

 あっという間に五人を片付けた。

そのまま兵士達が出てきた部屋に飛び込んだ。


 カーラの視界に玉座が映った。

ここだ。ここに王がいる。

 銀髪のバラージが、突然現れたカーラに驚いている。

しかし、すぐに周りの兵士に命令を下した。


「侵入者を撃退せよ!」


 バラージは勇ましく叫ぶと、自らも剣を手に取った。

 カーラはバラージを見据えている。

 この男がレテシア国を攻めた。

 無意味な侵略行為。

 許せなかった。

 カーラの部下はついてきていない。分散している。

 カーラ一人しかいない。

敵は右手に五名、左手に四名、真向いにバラージ。

一人で十人を倒さなければならない。


 しかし、カーラに怯んだ様子は見られない。

国を攻めるという悪行に対する、怒りのみがあった。


「時間がないのだ」


 そう呟くとカーラは左手の四名に斬りかかった。

 素早いカーラの剣。

 俊足の二振り。兵士が二人倒れた。周りは、反応出来ない。左側が残り二名。

 右から五人、慌ててカーラに向かってくる。

 カーラは接近される前に、残りの左の二名を切り捨てた。

 バラージは怯んで立ち止まった。四人、あっさりとやられてしまったのだ。

 右手から、兵士達がカーラを襲う。

 兵士の一振りを剣で流すように受け止め、返しで一撃。

 兵士が残り四名。

 カーラの間合いに入ることに、兵士は怯んだ。怯んでいる兵士を突き刺し、残り三名。

残り三名が倒れるのも早かった。剣こそ抜いていたものの、

それを振るう暇も無く、カーラに倒されてしまった。

 結局。カーラは無傷で兵士を全滅させた。

カーラがバラージの方を向く。鬼神のような表情だった。

 バラージは初めて、恐怖という存在に直面した。

 強い。強すぎる。

 死の気配。

 バラージにはもう戦う気力は無かった。

目の前に現れた恐怖に対し、逃げようとした。

しかし、カーラがそれを許すはずがなかった。

カーラがバラージに素早く接近。


「言い残すことはあるか」


 鬼気迫る表情だった。


「ま、待て、私を殺せば、どうなるか……私はベルーナの王だぞ」


「だから……」


 だからどうした、とカーラは思った。

無意味な侵略を兵士に任せ、自分は逃げようとするとは。

話にならない。時間の無駄だ。

 カーラはすぐにバラージの首を飛ばした。

首が足元に転がり落ちる。

カーラに返り血がついたが、状況は、一刻も早く、城を出なければならなかった。

 仲間たちが待っている。

首をカーラは拾い、急ぎ部屋を出た。


「王の首を取った!!帰還するぞ!!皆が待っている!!」


 部屋を出て大声で叫ぶ。

これにより、ベルーナ国の王は死に、跡継ぎはいなくなった。

ベルーナの圧政が終わった瞬間だった。



 カーラは急ぎ、入り口の馬の元へ向かった。

部下を全員合流させてから帰還したいところだったが、

城内に部下は分散している。

声の届く範囲の部下だけ集め、とにかく早く出発する必要があった。


「出発するぞ!!一刻も早く、このことを敵と本都に伝えるのだ!!」


 カーラはもう一度叫んだ。

城の入り口に置いてきた白馬に乗る。

部下たちは少数、ついてきている。

レテシア本都へと、カーラ達は急いだ。

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