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竜の本望  作者: 夜乃 凛
本都決戦
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白馬を待つ決死隊

 レテシア本都に向かうレイジスは、腹が立っていた。

ドラゴンに逃げられる。油で兵力を失う。それに、兵士の士気が高くない。

一度本都まで引き返しましょう、なんて言い出す輩までいる。

余裕の態度でバラージに接したレイジスに、逃げ帰るなどという言葉はなかった。

 兵力を多少失っていても、まだまだ相手よりは多いはずだ。

それに、もうドラゴンは虫の息だ。

ドラゴンの妨害さえ無ければ、こんな弱小の国に苦戦する道理はない。

城壁で何を仕掛けてくるのかしらないが、兵量と実力で押し切る。

レイジスは苛つきながら進軍し続けた。



 カーラの騎馬隊が草原を駆けている。

急ぎ足。

先陣を切っているカーラは、時間をかけてはいけない事をよくわかっていた。

 必死に走る白馬。

部下も遅れずにカーラについてきている。

 カーラが気になるのは、レテシア国侵攻に参加していない、ベルーナ帝国の残りの兵量が、

どれほどのものかという事だった。

 数が多ければ、突破も難しくなる。

騎馬部隊が歩兵部隊に有利とはいえ、数の問題は少し心配だった。


 しかし、どれほど敵が多くあろうとも、カーラは必ず王の首を取る覚悟でいた。

 仲間が耐えていてくれるのだ。

 ここで、自分が失敗してどうするのか、とカーラは思った。

 国王に恩返しがしたい。国を守りたい。

 そんな思いがカーラを突き動かしていた。

 いけないのだ。

 絶対に負けるわけにはいけないのだ。



 レテシア国本都にて。

街に入るための正門は、今は閉じられている。住民の収容に成功したためだ。

 歩兵部隊が正門の外に出ており、中には入れない。そこにルシルとゴルドもいる。

城壁上では弓兵隊が、地上の兵士たちを狙う形になっている。

また、塔がいくつか存在しており、ヒュンフ、それに精鋭の弓兵部隊が塔に陣取っている。

塔は比較的安全だ。相手の弓矢が当たりづらく、梯子でも上るのは難しい。


 反面、城壁上の兵士達は少し危険である。登られる恐れもあるし、相手の弓も届く。

 投石可能な設備が城壁には備わっている。城壁に設置する形で存在しており、

中で操作している人間は安全だ。

 最初にベルーナ帝国を追い払ったときの戦いでは、投石部隊をレイアが指揮していたが、

今は、レテシア国の精鋭兵が指揮官になっている。防衛のために絶対に必要な装置だ。

投石部隊の活躍が、時間稼ぎの鍵。


 フォージは動けない。ルシルはフォージに街で休んで、戦わないように言ってあった。

レテシアは、今ある戦力の全てを決戦に捧げなければならない。

 ベルーナ帝国はフォーレイを狙った。それにより、直接レテシア本都に侵攻されるより、

レテシア側に時間が与えられた。

その時間を使って、カーラの騎馬部隊がベルーナ帝国本都に接近していると予想された。


 街の中には住民がいる。扉を突破された場合、中の住民は危ない。

街の奥に行くようにレイアが誘導したが、城を狙ってくる兵士がいた場合、奥まで侵入される可能性は高い。


 いずれにせよ、最初の計画とは違う形で戦うことになってしまった。

本当は城壁の中に立てこもるのがベストだった。

しかし、そうは言っていられない状況になってしまった。雲行きは怪しい。

城壁からの援護があるとはいえ、歩兵部隊はベルーナ帝国と正面から激突する。

被害が出るのは目に見えていた。


 だが、ここで引くわけにはいかない。兵の士気は高かった。

皆、同じような気持ちだった。

理不尽な侵略者に負けるわけにはいかない。

 ルシルとゴルドは正門の外でじっと待っていた。

ルシルは槍。ゴルドは斧。

各々の武器を手に、敵の到着を待っている。

 カーラ将軍はどうなっているだろうか、とルシルは思った。

カーラの勝利を前提とした戦いだ。

騎馬隊が失敗すれば、絶対に戻ってこない仲間を待ち続ける戦いになってしまう。


 レテシア本都の部隊は、カーラを信頼していた。

 必ず戻ってくる。

 カーラ将軍なら必ず戻ってくる。

 信じるものがあるから、戦える。

 信じるものがある人間は強い。

 心の支え、軸、芯の通った心。いずれも信じるが故のものだ。

 信じることは、人間だけが出来る。

 そして、ついに敵の姿をルシルが捉えた。

 敵兵の襲来に緊張が走る。

 心に宿す信念。

 殺すために戦うのではないのだ。

 守るために戦うのだ。

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