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竜の本望  作者: 夜乃 凛
赤い悪魔のレイジス
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空を翔ける希望

 レテシア国本都にて。

 ルシルは、何かおかしいと感じていた。

伝令があってから、結構時間が経っている。

もうそろそろ、敵が到着してもいい頃だ。

何か、敵が準備をしているのだろうか……。


 本都は緊張感に包まれている。

ルシルの傍にはフォージとヒュンフがいた。


「おかしい」


 ルシルが呟いた。


「……確かにおかしい」


 ヒュンフも同意した。フォージは沈黙している。

敵の姿がまだ見えない。

ルシルは、言い表せない胸騒ぎを感じた。


「待て」


 ヒュンフが辺りを見渡していたが、今、フォーレイの方角の方を向いている。


「誰か来る……ルーベル?」


「ルーベル?」


 ルシルもヒュンフと同じ方角を向いた。

馬が一頭走っている。かなり速い。


「なんで、ルーベルが来るんだ?何かあったのか?」


「裏口に行こう。あそこから入ってくる」


 ルシルは頷くと、ヒュンフと共に城壁に作ってある裏口へと向かった。

フォージは空中に飛び、ルシル達より早く、裏口の真上目掛けて翔けた。


 城塞の裏口にルーベルがやってきた。ルーベルは急いで馬から降りた。

ルシルとヒュンフは何か不安を感じた。裏口の真上では、フォージが聞き耳を立てている。


「ルーベル、何かあったのか?」


 ルシルが尋ねる。


「フォーレイが、ベルーナ帝国に襲われています!!規模からして敵の主力部隊です……

僕が発った時は、まだ敵は接近中でしたが……このままでは皆が……」


 ルーベルは早口でまくし立てた。

ルシルとヒュンフ、それにフォージに衝撃が走った。


「そんなばかな!!住民と……それとリーンはどうしているんだ?」


「リーンさんは、僕に伝令を任せて、自分はみんなの為に残ると……住民はまだ退避していません!どうすれば……」


 場が静まった。衝撃と、考えなければならないこととで、喋っている余裕がない。

 カーラの騎馬部隊は出陣してしまった。動きの速い騎馬部隊がいない。

もたもたしていると、リーンも住民も殺されてしまう状況。

 ルシルはとても焦っていた。どうすれば、どうすれば……。

その時、話を聞いていたフォージが、裏口の上からルシル達に話しかけた。


「私が助けに行く」


 フォージは大きく翼を広げた。

 そして言った。


「今までありがとう……」


 ルシル達の返事を聞く前にフォージは空中に飛んだ。

元々弱っているドラゴンのはずのフォージが、

ルシルが今までに見たことのない、とても速いスピードで、フォーレイの方向へ向かっていった。


「フォージ!」


 ルシルはフォージの背中に呼び掛けたが、フォージはあっという間に遠くに行ってしまった。

同時にルシルはルーべルの乗っていた馬に乗り、走り出した。裏口を出てレテシア本都の外へ出た。

 皆が心配で、体が先に動いていた。

 ヒュンフも走り出そうとしたが、拳を強く握り、その場に留まった。

ルーベルに後を任せることも出来る。しかし、ヒュンフは一人で走っていっても、皆を救えないと思った。

 本当は、ルシルとフォージを追って走り出したかった。

だが、この状況をルーベルと共に、皆に伝える必要があると判断した。

苦しいが、それが最善だと。

 フォージにリーンと住民達の命を任せるしかない。


「ヒュンフさん!どうすれば!!どうすれば……」


「ドラゴンの力を信じるしかない!手分けして皆で情報を共有するんだ!正門を開けて、住民達を中に入れる!

俺たちの戦力では、平地ではベルーナ帝国には勝てない……絶対に誰も城壁から出すな!フォーレイの次はここに来るぞ!」


「しかし、リーンさん達が!!」


「わかってる!!」


 ヒュンフは耐えた。必死に耐えた。


「必ずドラゴンが助けてくれる!信じろ!!」


 ヒュンフに鬼気迫る表情に、ルーベルは動揺しながらも頷いた。


「お前は皆に状況を説明しろ!俺は正門を開ける!」


「わかりました!」


 二人は二手に別れた。

 二人とも祈っていた。

 頼む……ドラゴンの力で……。

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