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竜の本望  作者: 夜乃 凛
竜の英雄
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英雄の誕生

 城へたどり着いたルシルは、フォージに入り口で待ってくれるように言ったあと、王に会いに行った。


 例のごとく、すれ違う兵士からは敬礼される。

ルシルは丁寧に対応するが、やはり慣れない。


 王は城の窓から外を見下ろしていた。

よく見ると、王の白い髪はかなり長い。足元くらいまである。

背筋はピンと伸び、後ろから見たら、老いているとは思えない。

 優しげな目で窓の外を見つめている王。

 王はルシルに気が付くと、ひょいひょいと手招きした。


「よく来てくれた。外を見てみるといい」


 王は窓の傍から離れ、ルシルに窓を覗かせた。

ルシルが外の光景を見ると、なんとも大量の人たちが集まってきている。

住民と兵士達が、全員集まってきているのだろう。ルシルは規模の大きさに驚いた。


「城の上層に向かう。ついてきなさい」


 王はそう言うと、緑色の螺旋階段を上り始めた。

 ルシルはもう一度窓の外を見てから、王についていった。

螺旋階段はそれほど長い造りではない。

 何故、螺旋階段なのだろうかとルシルは疑問に思った。きっと意味があるのだろう。


 螺旋階段を上り終えると、円状に壁がある場所についた。

絨毯は緑。石の壁が、人を通さないとばかりに円状に広がっている。


 しかし、石の壁は完璧ではない。外に出られそうなスペースがある。

ここから鳥が出入りしたりしないだろうか、とルシルは想像した。

鳥が入ってきて、円形の石壁に驚いて去っていったと想像すると、微笑ましい。


「ここから街全体が見渡せる。出てみなさい」


 王は外へのスペースの傍に寄り、ルシルを促した。

 言われた通りにルシルがそのスペースから外に出てみた。

外のスペースは案外広い。白い柵が楕円上になって、人の落下を防いでいる。

フォージも座れそうだ。

太陽が眩しい。雲一つない。まるで英雄の誕生を祝福しているかのように。

 街全体が見える。多くの人たちが城の近くへ集まっている。


 ルシルの姿を捉えたフォージが、羽ばたいてルシルの隣に着地した。

街の人たちが驚く様子が遠目に見えた。フォージに視線が集まっている。

 ルシルが柵越しに街を観察していた。仲間たちも集まってくれているのだろうか……。


「皆のために英雄を紹介せねばな」

 観察しているルシルの後ろから、王が声をかけた。

 王がゆっくりと動き、ルシルの隣へ。

 そうしている間にも、人々はどんどん集まっている。

下にいる街の人々と兵士達を確認すると、王は演説を始めた。


「皆の者!聞こえるか!ここにいるのはドラゴン、そしてドラゴンに乗る竜騎士だ!

竜騎士は国を守るために勇敢に戦った!我々の国を救った英雄だ!」


 街の人々はどよめいている。


「我々はベルーナ帝国と戦う!しかし、心配は無用だ!

この竜騎士の名はルシル!この英雄がいれば必ず勝つことが出来よう!

見よ、この雄々しきドラゴンを!今こそ結束する時だ!

臆するな!英雄の名のもとに戦うのだ!」


 王の声が響いた。

兵士達から歓声が上がる。


「レテシア国のために!」


 兵士たちは高揚している。

全体の士気が明らかに上がっている。

 英雄。

英雄は戦いにおいて、人の心の拠り所だ。

人は一人では生きていけない。

誰かがいるときこそ、力を発揮できる。

怖い相手にも立ち向かえる勇気を持てる者は少ない。

しかし、この頼もしいドラゴンと、竜騎士の存在が、兵士たちを勇気づけた。


「見よ、皆の士気が上がっている。ドラゴンと共にこの国を導いてくれ」


 王はルシルの肩を叩きながら言った。

ルシルは、頷いた。皆が団結して、平和が訪れるのであれば、英雄にだってなればいい。そう思った。

フォージと共に国を守るのだ。

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