レテシア本都
一同は、本都の目の前まで到着した。
長い道のりを歩き終えたのだ。皆、頑張った。
たどり着いた本都は、流石になかなかの大きさをしている。
街があり、街の周りには城壁が巡らされている。
そして、塔がいくつかある。
防衛用の設備のようだ。
城壁も塔も立派だが、どこか古臭さを感じさせる。
風格があるといってもよい。
元々ベルーナ帝国の領土であったが、
先代の、そのさらに先代のベルーナ帝国の王が、レテシア国の独立を認め、
レテシア国は完全にベルーナ帝国から独立していた。
「カーラ将軍、僕たちは外で待っていた方がいいのでしょうか?」
ルシルが口にした。
「いえ、このまま街の中に入ってもらって構いません。王もお喜びになるでしょう。私が先導します」
カーラは先陣を切って歩き出した。
巨大な門をくぐり抜けて、街の中に入る。
煉瓦造りの建物がみんなの視界に幾つも映った。
石畳が道に張り巡らされている。
街に人通りは少ない。ベルーナの侵攻の事が広まっているのか。
本都だけに、ルシル達の街よりも大きい街の作りだ。
街の中央に大きな広場があった。
緑が広がっており、大きな池が真ん中に居座っている。
後続が広場へ入ってくるのを確認したカーラは、ルシルに手招きした。
「王の元へ参ります。ルシルさんだけ状況の説明のために来てください。
残りの皆さんは待機させておいてください」
「わかりました。みんな!ここで待っていてくれ!王に会って話をしてくる!」
ルシルはついていくことを承諾すると、皆に叫んだ。
皆、うなずいた。疲労感を見せている者もいる。
ルシルとカーラで城へ向かうことになった。
外に城壁、その中に街、街の奥に城。城の背面は海に囲まれている。
広場から既に城が見える。真っ白い色合いが特徴的だ。
「フォージもここで待っていてくれ」
ルシルはフォージに語りかけた。
了解、とばかりに頷くフォージ。
カーラが先導して歩いていくので、それについていくルシル。
街通りの家の前に、美味しそうな果物が並んでいる。お店だろう。
しかし、やはり人通りが少ないようだ。
ルーベルの伝達で国が緊張しているのかもしれない。
カーラについていくと、城がもう目の前に見える。
城の前に大きな橋がかかっている。下は川になっている。
橋の前に、二人の兵士が並んでいた。橋を監視するような形だ。
兵士は、カーラとルシルの姿に気が付くと、勢いよく駆け込んできた。
「カーラ将軍!ご無事でしたか!」
「ああ。こちらの方と、仲間の活躍のおかげで。この方は竜騎士だ」
カーラはルシルの方を見た。
「竜騎士の、ルシル……」
兵士達はルシルの金の髪を見ている。
「そう、ルシルさんだ」
カーラは頷いた。
ルシルは兵士達にも知られていることに驚いた。
フォージは、ドラゴンは、本当に奇跡のような存在なのだろう。
「急ぎ王に会いたい。ベルーナ帝国をルシルさん達が追い払ってくれたのだ」
「え!?」
「あのベルーナ帝国をですか?将軍も戦いになられたのですよね」
兵士達は驚いている。むしろ、信じられないといった様子だ。
「いや、私が街に着いた時にはもう戦いは終わっていた」
「な……」
兵士二人が言葉を失ってしまった。
「とにかく王にお会いしたいのです」
ルシルは思いを伝えた。
「わかりました!王に報告して参ります。お二人も中へお入りください!」
兵士達は駆け足で城の中に入っていった。
ルシル達も後を追う。
橋を渡り、城の中へ。入り口が広い。
城の中に入ると、緑色の絨毯が敷き詰められていた。
豪華な装飾が施されているわけでもなく、嫌味の無い質素な空間だった。
兵士たちは直進していったようだ。
左手に通路があり、右手に二階へと上がる階段がある。
ルシルとカーラは兵士の後を追い直進。
ルシルは、少し緊張し始めていた。
広い廊下を進んでいく。右手と左手の壁に、絵のような物が飾られている。
先ほどの兵士は駆け足だったので、もう先に行ってしまった。
ルシル達は、大きな扉が開いている部屋にたどり着いた。
王がいる部屋だ。扉は兵士たちが開けたと思われる。
扉の近くに兵士が数人いる。
「ご苦労」
カーラは兵士たちに声をかけた。そしてそのまま扉をくぐり抜けた。
兵士達は、カーラに敬礼している。
「参りましょう」
ルシルに手招き。
ルシルは部屋の中へと踏み出した。
部屋の中には玉座のようなものは無かった。
空間の大きさも、さほどない。
右手にも左手にも、本が棚に並んでいる。
奥には窓が四つほどある。外の海が見えるようだ。
左手奥に木製の大きな机が置いてある。
その机の近くに、入り口で出会った二人の兵士たちがいた。
そして、机の前に王がいる。座っている。
二人の兵士は、王に、カーラの帰還とルシルの到着を報告しているようだ。
王は年老いていたが、目元が鋭い。髪は白い。
老いているとはいえ、体つきは頑丈のようだった。
カーラが王に接近していき、膝をついた。
「カーラ、参りました!」
カーラが王に頭を下げた。
王はルシルとカーラの方を見た。
「ご苦労であった。兵達から少しだけ話を聞いた……詳しい話を聞かせてもらいたい。
初めまして、ルシル殿」
王はルシルに一礼した。
「初めまして、国王。起こったことを説明させていただきます」
ルシルも一礼した。そして、ルシルは状況の説明を始めた。




