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竜の本望  作者: 夜乃 凛
竜の英雄
11/38

戦いの歯車

 ルシルたちの大移動。

自警団を先頭に、住民が後をついていく。

不安そうな子供もいたが、大人が、大丈夫だ、と励ましていた。


 順調に歩を進めている。

カーラ将軍は騎馬部隊と共に歩いていた。


 カーラには抜けているところがある。

凛々しく振舞っているつもりだが、どうも上手くいかない。

 しかし、実力は確かだ。

本都にて開かれた武術大会があったのだが、

カーラは周りの猛者にも負けず、圧勝して、優勝した。


 それ以来、レテシア王に見込まれて、国に仕えている。

 人望も厚い。兵士達はカーラを信頼している。

 そんなカーラの隣を、黙々とヒュンフが歩いている。


「凄い弓の腕前だと聞きました」


 カーラはヒュンフに話しかけた。


「……それなりには」

 ヒュンフはぶっきらぼうに答える。心を開かない。



「謙遜していますね。自警団の結束の力には恐れ入る」


「結束の力……くだらない」


 ヒュンフは無表情だ。


「何故ですか?」


 カーラは驚いた。


「人間は一人で生きて、一人で死ぬんだ。信頼なんて、いらない」


 カーラは考え込んだ。


「かつては私も一人だった」


 カーラは遠い目をしながら、微笑した。


「それで?」


「仲間に背中を預けるのも良いものです」


「俺には関係ない」


 ヒュンフは聞く耳なしといった様子でそっぽを向いてしまった。


「苦しくはないのですか?」


「全然」


 ヒュンフは全否定している。

 カーラは苦笑した。

本当に、心が頑なだ。

しかし、国のためには戦うなど、掴みどころがない。

 ヒュンフは早歩きになり、カーラの元から去ってしまった。


 ルシル達は、どんどん本都に向けて歩いていった。

早朝に出発したため、早めに到着出来そうである。

ベルーナの動きが心配だったが、そんなに早く来れるはずはない。


 そして、疲れた様子の人が多く見られたため、

休憩を挟むことになった。

みんなで草原の上に座り込む。障害物が少ない。

幸いなことに雨は降っていない。快晴だ。

遠くの見通しも良い。


 ルシルはフォージと一緒に座っていた。

そこにレイアがやってきた。


「ルシル?」


「レイア!一緒に座ろう」


 ルシルはレイアを手招きした。

 促されたレイアは、微笑みながらルシルの隣に座った。

ルシルも笑顔である。


「なんだか、戦いが起こるなんて嘘みたいですね」


「うん。今は平和だね。しかし、確実にベルーナは攻めてくる」


「その……戦いが終わったら、どうしましょう?」


「僕の故郷に来てほしいな……」


「ルシルの故郷……どんな所なのですか?」


「綺麗な花がたくさん咲いているんだ。美味しい果物も多い」


「それは、楽しみです」


 レイアは嬉しそうだ。


「一緒に行こう。この戦いが終わって平和になったら」


「約束ですよ」


「うん」


 ルシルは強く頷いた。


「もう少し、傍にいてもいいですか?」


「いてほしい」


 ルシルとレイアは寄り添っている。

 それをフォージが見つめていた。

温かく見守るような眼だった。



 ルシル達は再び歩き出した。

本都が近づいているから、もう少しの辛抱です、とカーラ将軍が言っていた。

 緩やかな登り坂をみんなで上がっていくと、だんだんと遠くの景色が見えてくる。

本都が見えた。レテシア国の中核。


 歩いてくるのが大変だったので、皆が安心した。もう少しだ。

目的地が見えて安心したのか、心なしか進行が速くなった感じである。


 本都ではいったい何を言われるのだろう、とルシルは考えた。

自警団のことは知られているようだが、国王からなんと言われるかわからない。

だが、とりあえず、住民は避難させてもらえるはずだ。後は、自警団が頑張らなければならない。

ルシル達はベルーナ帝国を退けたが、それは本都には予想外の出来事だと思われる。

本都は自警団が現れたら、驚くかもしれない。


 カーラ将軍がルシル達の状況を、説明してくれるとは思うが、この先の戦術の展開は読めなかった。

 なんにせよ到着する。

 本都へ。


 戦いの、運命の歯車が、ギリギリと動き出す。

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