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第一章 俺が地球を離れる理由

第一章 俺が地球を離れる理由

 お支払いを確認しました。————


 銀行にある自動支払機の画面にこの様な文字列が映し出された。ついにこの時が来た。完全なるブラック企業の社畜となり早十年働き続けた甲斐があったと言うものだ。もうおじさん泣きそう。


 3XXX年、人類は自分たちの起源である星「地球」を環境汚染などが原因で住めない星に変えてしまう。住めない星と言っても人類はある程度、科学を進歩させていたため室内だけならなんとか生活できた。

 しかし問題は食料問題。地球の生命体はほぼ絶滅した。残された作物や家畜は室内で育てなければならないため限られた食材しか育てられない。当然ながら食材の値段は高騰し、供給量は減少した。そこで、人間は地球とよく似た惑星グリーゼへと移住を始める。ワープ技術を確立できなかったため、コールドスリープを用いてその星へ向かう。その移住費は、全額自己負担なため限られた人間しか移住はできない。取り残された貧しい人達は「働き移住費を稼ごうとする者」、「諦めて地球にとどまる者」に分かれた。働き、移住費を稼ぎ終わったある人間がいた。


 俺の名は境翔太郎。38歳。会社以外にもアルバイトを3つほど掛け持ちしていた。未婚で、彼女いない歴=年齢だ。おっと勘違いするなよ。彼女を「つくれなかった」ではなく「つくらなかった」のだ。

 会社帰りに、ついに移住費を払い終えた俺は浮かれ気分で地下道を辿り家へと向かう。

 家に着いて早々俺は、旅行の電子パンフレットを広げ移住のための荷造りを始める。

 (何をもっていこうか。50㎏まで大丈夫らしいけど。親父の形見は持っていくとして…。)

 荷造りは夜遅くまでかかった。明日の移住のため、いつもより早く眠りにつく。

 

 


 ピピピピピピ…

 いつもは嫌気が差す目覚ましの音も今日は心地よく感じた。 

 身支度を整え荷物を持ち宇宙旅行会社の宇宙船格納庫に向かう。



 ロビーに入るとカウンターの奥に受付嬢が一人立っていた。この時代にロボットではなく生身の人間が受け付けをしていることに俺は驚いた。歳は20代前半だろうか。髪は短くクールな顔立ちに似合うスーツを着ていた。文句無しに可愛い。

 「おはようございます。今日、惑星グリーゼに移住する方ですね。ここに必要事項の記入をお願いします。」

 俺は差し出されたタブレットに名前等を入力した。

 「境翔太郎様ですね。お待ちしていました。私は今日あなたを御案内させていただく桜木舞です。こちらへどうぞ。」

 ロビーの脇にあるエレベーターに案内された。エレベーターの中でよくあるあの沈黙に耐えられなかった俺は、ついに言葉を発してしまった。

 「舞さんって言いましたっけ?お美しいですね。」

 「下の名前で気安く呼ばないで下さい。セクハラですよ。」

 俺の軽い一言でエレベーター内の空気は凍りついた。気まずい…。

 そうこうしているうちに、宇宙船格納庫のある階にたどり着いたらしい。

 「境様の宇宙船はこちらになります。」

 だいぶ安い旅行プランにしたせいか小さい。船内はコールドスリープ用の機械と荷物を置くスペースが少しあるくらいで他に何もない。

 「コールドスリープに入る前にこちらをお飲みください。体の水分が凍結して体積膨張を防ぐなどの効果があります。水なしで服用できます。」

 そう言いながら一つの錠剤を渡してきた。俺はそれを飲み込む。

 「ではこちらにあるコールドスリープ用のポッドに入ってこちらのマスクを着用して下さい。しばらくすると自動でポッドの扉は閉まりますので。」

 促されるままに、コールドスリープの機械に入りガスマスクの様な物を着用した。少しすると自動的にポッドの扉は閉まった。

 「では、いってらっしゃいませ。」

 そう言って宇宙船の扉は閉まった。さっき飲んだ錠剤のせいかすぐに眠りについた。————





 


 (あれ私、境の宇宙船の行き先入力間違えちゃったみたい。このままだと訳のわからない星に到着しちゃうじゃん。まぁいいか…。)

 


 

  


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