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弐ノ巻 少女

室内にアラーム音が鳴り響く。朝が来た。

寝る前に解いた髪を縛り直し、服装を整え、これで準備完了。


「おはようございます」

居間に行くと、既に村長が待っていた。それも、何か焦った様子で。

「どうかされたんですか」

「た、大変です!また鬼が出ました!」

鬼が出ただと?

「何処で!?」

「つ、ついて来て下さい!」


急いで村長宅を出て、鬼が出た現場に向かう。そこは、比較的新しい家だった。

だがその家の壁は所々赤い染みがついている。

血か。

遠巻きに村人が見守る中、俺はその家に飛込んだ。


・・・中は凄惨そのものだ。

そういうのに慣れている俺でも、吐気を覚える程の光景だった。

被っていた帽子をとって、鼻に当てる。それ程生臭い。

だが、そこには足りないものがあった。

生臭い臭いの原因。いわゆる、死体がない。

何故?

まさか、鬼が食ったのか?


村長宅の黒電話を借りて警察に通報する。

何故携帯を使わないのかって?

単に携帯が嫌いなだけだ。文句あるか。


改めて、本日向かう予定だった神社に向かう。

そこは神社というより祠に近い。

ふと、祠の裏から何かの音色が聞こえて来た。

そこにいたのは、ギターを抱えた少女だった。

「何してんだ、こんな所で。鬼に襲われても知らねえぞ」

軽口を叩いてみた。が、彼女は気にしていない。

「いいよ。次に襲われるのは僕だから」

その言葉には、さすがの俺も舌を巻いた。

どういうことだ?

「襲われるのが怖くないのか?」

「怖いよ。僕、やっとギターが弾けるようになったのに・・・」

少女の目から、涙が溢れ落ちる。

ああ、この子も苦しんでいるのか・・・。


「貸してみろ」

少女からギターを受け取る。

音を整え、弦を弾く。よし、いいだろう。

少女の前に座る。

弦を弾き、音を紡ぎ出す。俺は大抵の楽器、音楽なら弾ける。

今はギターなので、C&(カントリーアンドウエスタン)の超有名曲、カントリーロード。この曲をフォークだと思っている人が多いが、もともとはアメリカ西部の民謡であるため、C&(カントリーアンドウエスタン)の部類に入る。作曲もジョン・デンバー(だった筈)だ。

「何処かで聞いたことある・・・」

「中学の時習った筈だろ」


最後の一音を紡ぎ終わると、少女が顔を上げた。

「結構上手いね、おじさん」

なっ!?おじさん!?俺はまだ27だ!失敬な!

「お前、名前は?」

「律」

「そうか。俺は晴間」

俺は彼女に手を差し出した。律はそれをおずおずと握る。

「よろしく」

俺がそういうと、律は小さく頷いた。

「もし、生きてたら、俺がギターを教えてやるよ」

律の表情が明るくなる 。

律と別れたあと、例の鬼が封じられていた祠を覗き込む。

中は札だらけで、木目が全く見えない。そして、中心にひとつ、小さな箱があるのみだ。

箱を凝視していると、その箱が若干動いている。

律と一緒だったときは隠していた、一振りの刀を構え、祠の中に忍び込む。


中は異常なまでに薄暗い。

がたがた動く箱を掴み、封を切ると・・・。

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