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この作品には 〔残酷描写〕 が含まれています。

ある若騎士

作者:好き者
 処女作です。
 心の赴くままに書きました。大してアクション等はないです。あとすっごい短いです。
 「まて!とまれ!」
 若い男の荒げた声が路地に抜ける、その路の両壁は、所々ひび割れ、路自体もひどく埃っぽく、淀んだ雰囲気だ。
 走る男は声の通り若く、少年といっても過言ではない出で立ちであった。黒髪に切れ長の目を持つ少年は、白い服を着て、茶色で簡素な下服を履きやや太めのベルトを腰に巻いていて、それには大人の腕程度の長さの無骨な剣を提げていた。そして心臓のあたりに、剣の紋様が彫られた小さな銅板を付けていた。
 そんな少年が走りながら声を荒げている先には、少年よりも更に小さな少女が必死の形相で駆けていた。
 少女の髪は爽やかな栗色で、顔立ちも柔らかで美しいが、服は粗末で、靴も履いておらず、肌は所々が傷付いていたり、砂で汚れていた。
 彼女は少年から追われていた。それは、少女が両手抱えた、数個の林檎が原因だった。
 少年が再度大声をかける。

 「まて!その林檎を返すんだ!盗みは罪だぞ!」

 そう、少女は市場で林檎を盗み、丁度、そこを警備していた少年に発見された。その時少女は少年の腰提げられた剣ばかりに目に行き、見た目にも判るほどに平静を失い、近くにあった、普段は通らない裏路地へ逃げ込んだのだった。
 少女の足は既に疲労で震えていた。顔には幾筋も汗が流れ、息も無理やり出し入れしているようであった。それでも少女は止まらず走り続ける。少年の方が歩幅が大きく、体力も有ったのだが、追い付けない。想定外の速度に少年は小さく舌打ちをしながらも、心を落ち着け、短い祈りを謳い始めた。

 『風の神よ、我に力を貸したまえ、風よ、我と共に駆けたまえ、我に追い風を与えたまえ!』

 少年が謳い終わると、身体が柔らかな緑色の光に包まれた。すると、少年はぐんぐんと速度を上げ始めて、二人の距離が縮まり始めた。
 しかし、それも束の間のことであった。なぜか少女も少年と同等、いや、それ以上の速度で駆け始め、寧ろ、引き離され始めたのだ。

 「何が起こっているんだ!?神の御力をお借りしたにも関わらず、追い付くこともできないとは…!」

 少年が驚き顔を歪め、つい、微かに足を緩めたが、直ぐに気を持ち直し追いかけた。
 少女が角を曲がり、見失うまいと少年が急いでそこを曲がり見たのは、来た道を除いた三方が少女の背丈の三倍はある壁で囲まれた行き止まりであった。
 行き止まりにぶつかってしまった少女は少年の方に向きなおる。少女は、瞳いっぱいに涙を溜め、頬を真っ赤に、唇を強く引き結んでいた。少年がそんな少女の元に向かおうと一歩踏み出したとき、少女が叫んだ。

 「こないで!」

 見た目通りに幼く、しかし良く通る声であった。少年は言われた通り立ち止まり、叫び返した。

 「行かないわけ無いだろう!何度も言った!物を盗むのは罪だと!さぁ、その林檎を返すんだ!返せば強い行動に出なくて済む!」

 少年は一歩踏み出しながら、右手を差し出した。しかし、少女はそれに応えない。

 「うそよ!周りの人たちは言っていたわ!きし達はつみをおかした人をつかまえたらすぐに殺すって!けんで何回もさして遊ぶんだって!」

 少女は顔をうつむけながらそう言った。顔は見えないが、その見えない瞳から、幾つもの涙の粒が零れ落ちるのが見えた。林檎を潰さん程に抱きしめている腕が見えた。肩が震えるのが見えた。

 少年が、すらりと剣を抜く。その音に少女の肩が跳ねた。良く手入れされたその刀身は、薄暗い路地の中でも良くきらめいていて、切れ味の鋭さを窺わせる。柄を両手でしっかりと握り締めおもむろに持ち上げると、なんと地面に思い切り突き刺した。少年は大きく息を吸い、声の限り叫ぶ。腹の底から、心の底から。

 「私は確かに騎士だ、しかし神に仕える者でもある!だから、私の剣と、神に誓おう!君が素直に林檎を返してくれたら、命は決して奪わない!確かに君は罪を犯した。神からの罰は逃れられないだろう。だが、君が言った様な酷いことはしない!何人も!何人にも!させはしない!」

 言い終えた少年は大きく呼吸し始めた。それ以上は何も言わなかった。近づかず、待つことを選んだのだ。
 少女はまだうつむいていた。しかし、涙はもう落ちてはいないし、体の震えも止まっていた。そして、少女が顔をゆっくりと挙げた。

 そして、少女の顔は驚愕に染まった。
 少年はその顔に見て背中が粟立ち、地面に刺した剣を右手で掴み、後方へ払いながら少女の方向へ飛びすさろうとした。しかし既に遅く、払いきる前に、何か硬いものと少年の頭が鈍い男を発てて衝突した。 
 揺れる視界を振り払い、右目にかかる血糊を拭って送った視線の先には、みすぼらしい格好の大の男が3人。全員が短い棍棒を持って立っていた。
 少年が、剣を右手で持ち、半身で構えながら、話し掛ける。

 「誰だ!一体、なんのつもりだ!」

 聞かれた男達のうち、先頭に立っている男がにやけ面を向けながら応えた。

「へへっ、なぁに、大したことじゃありやせんよぉ騎士様。ただ、後ろのガキが一人じゃ食べきれねぇほどリンゴを抱えているのを見掛けたもんで、こりゃあ食べるのを手伝ってやらねばなぁと思ったわけでさぁ」

 明らかな嘘に少年は反発する。

 「嘘をつくな!」

 「嘘じゃぁございやせん。我々は己の良心に従い。良いことをしようとしてるんでさぁ」

 後ろの片割れが続ける。

「ええそうです。ついでに、食うの手伝ってやった礼もしてもらいてぇなぁ。このところ、ガキは隠れるのが上手くていけねぇ。せっかく遊んでやってんだ、あっちから出て来て欲しいくらいだぜ」

 「へへ、違いねぇ」

もう一人がそう言うと、三人揃ってばか笑いを始めた。この人数の大声ならば、周囲の誰かに聞こえても可笑しくないのだが、様子を見に来る者はいない。
 少年は剣を構えたまま動かない。その様子を見た男達は囃し立てる。

 「どうしましたぁ?騎士様ぁ。もしや、剣が重くて動けないんですかぁ?それでしたら、あっし達がお預かりしますよ」「ついでに服もお預かりしましょう」「そりゃあいい!」

 男達のばか笑いは止まらない。少年は動かない。そんななか、少女は恐怖に震え、林檎を持つ気力すらも失っていた。地面を転がる林檎を呆然と見ながら、視界の端にあった少年の左手に、少女はすがるように触れた。少年は少女の方を見もせず、ただ、一瞬だけ手を握り返した。驚く少女は顔を見上げたが、少年の表情は窺えない。ただ、厳かに呟く声が聞こえた。

             「下衆が」

少年は剣を水平に持ち、左手人差し指を剣身にあて、剣先へ滑らせる。鉄が震え、音が鳴る。それに少年は祈りを重ね謳う。

 『「火の神よ、我に力を貸したまえ。我が剣に力を与えたまえ。戦神たる火の神、戦いを尊ぶ御方よ、奪われんとする弱者に救いを、罪を受け入れ救いを求める者に慈悲を、誓いを果たさんとする騎士に称賛を、窮地に抗う戦人に勇気を、、、」』

 少年が祈りの言の葉を重ねる度に、剣は赤い光を纏い、より大きく震え鳴らす。少女もその光を浴びていたが、熱くはなく、むしろ、暖かさに包まれ、心が解れるのを感じていた。そして、当の少年もまた、赤い輝きに身を包まれ、それは更に、増していく。

『「奪わんとする者に裁きを、欲深き者に制裁を、、、、火の神よ、願いたもう、、、!」』

 どこまでも広がり続けるかと思われた赤い光は、突如、剣へ、少年の体へと集い始めた。そして集まるごとに、赤みを強くし、そしてある時、まばゆい白へ変じ始める。その眩しさに男達は目をつぶるしか出来なかった中、少女をその姿を見つめ続けた。眩しかった、目が潰れるほどに。しかし見つめずにはいられなかった。逸らすことなど出来なかった。
少女には一体何が見えたのだろうか、その時間の中で少女が放った言葉はたったのひとつだけだった。

 『「良心を無くし、嘘を重ねるつみびとに、言の葉の大切さも知らぬ愚か者に、【闇に侵された悲しき息子達に、、、!」』】

                「火の神、、、さま?」


 【『「慈悲深き、断罪を!!」』】


 剣が降り下ろされる。光の奔流が、影も、その他の色も全て消し飛ばす。光が晴れると、そこには誰もいない。文字通り、影も形も無くなってしまったのだ。
 少年が剣を納めて振り向くと、呆けた顔をした少女がぺたりと座り込んでいた。
 少年は疲れた顔をしていたが、左手を差し出して、笑顔を向けた。切れ長の、微かに赤みを帯びた瞳を細めて。

  「さぁ、商人さんに林檎を返して、一緒に謝ろう!」





 




 



 
 最後まで読んでいただきありがとうございました。
 なにぶん適当にかいたもので稚拙な部分が目立つだろうと思いますが、今後の糧とするため、ぜひ、感想等を書いていただければなと思っております。

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