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帯に短し襷に長し-適材適所とは-  作者: ワヰウヱヲ
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第2話 俺ストーリーは突然に

校長室の前で1度立ち止まった。前の廊下には誰もいないので周囲の目を気にする必要はなかった。入室の許可を得て校長室に入る。

「おはようございます。」

「おはよう。突然呼び出してすまないな。」

いや、むしろ好都合だ。鞄をすり替えた犯人を特定する必要がなくなったのは大きい。しかし、いつの間にすり替えたのだろう?そんな疑問には目もくれず校長が続ける。

「もう鞄の中身は見てくれたと思うが、あれは私から君へのプレゼントみたいなものだ。それとまだプレゼントは残っている。この世界にはない特別なものだ。」


「私からの贈り物は2つ。1つ目は防具だが、説明がまだだったな。中に入っていたマントは“向こう”の素材で作られている。海獣の強じんな水かきを加工して作った一級品だ。短剣も“向こう”で手に入れたものになっている。君の使命はただ一つ、これから失われたもう一つの世界へと行き、その世界を取り戻してきてほしいんだ。そのための冒険者装備だ。」

うわ、コイツいい歳こいて中二病とか救えねぇな。

「失われた世界って、そもそも何の話をしているのか俺、あ、ボクにはさっぱりで…」

「あぁ別に一人称を直さんでもいい。これからは勇者になるのだからな。私よりよっぽど偉くなる。」

「は?ちょっとさっきから大丈夫ですか?人の鞄勝手にすり替えたり、勇者だとかいって装備渡したり、正気の沙汰とは思えませんよ?」

「今はな、だがいずれ分かる時が来る。君が世界に選ばれたのは間違いないのだ。」

話についていけず混乱している風を装っているが、大体理解していた。要するにアニメ化されてる作品みたいなことをしろと言ってるんだろ?で、その主人公が俺と、

「本気なんですか?」

いつドッキリ大成功!!のプレートを持った人が現れるのかと待っていたが未だに来ない。信じられないのは確かだが、事実だったらどんなに楽しいだろうと思ったのも確かだった。


異世界って突然に着いてる…みたいな所だと思ってたけど予想以上に近場にあった。T県のN橋付近にあるとかないとか。この学校から車で30分といったところだろう。あれから“向こう”について100分も校長からありがたい?お話を頂いた。その内80分はラノベのあらすじを聞いてるみたいだった。解放された俺は授業中だった教室に向かって歩いていた。

(昨日読んでた内容が現実世界だなんて嘘だろ?)

やっぱり拭えぬ不信感があった。説明された内容を要約すると、

○今俺がいる世界以外の“異世界”は2つある。

○“向こう”は何でもありのファンタジーワールド

○名前は“エヴィング”と“タロウ”というらしい。

恐らく第一発見者の名前を付けたのだろう。

彗星みたいで良いけど、タロウはないわ。

今回俺が“勇者”として行くのはエヴィング。

○日本語に限らず、こちらの言語はほぼ通用しな

○向こうは俺のことを別名“神の使い”と呼んでくる。

どうだろう?なかなかに“主人公”してるだろ?こんな設定を中年男性が考えてるのを想像したら笑いが込み上げてくるだろ?関わらないのが身のためだ。でもどうやって鞄の中身を入れ替えたのかはわからなかった。聞き忘れていたのもあるが。


翌日登校して、下駄箱で靴から中履きへと履き替えた瞬間何者かが俺の体を拘束した。動けない。声も上げられずにそのまま校長室へと連れていかれた。校長室に入れられると、頭を汚くハゲ散らかした校長が話しかけてきた。

「おはよう。朝早くからすまんが君に渡さなければならないものがあってね。」

油断していたのと、何も言わずに強引に連れてこられたのに腹が立ったので挨拶は返さなかった。

「プレゼントの2つ目だ。今から使いたい“魔法”を2つ選んで習得してもらう。なに、練習はいらん。すぐに使えるようになるシステムで“魔法”を学習してもらう。」

いきなりすぎる。なるほど、そう来たか。これなら設定を信じなくてはならない。

「魔法って…いくつから2つ選ぶんですか」

信じてる風に尋ねると、

「5だ。火の魔法、水の魔法、風の魔法、光の魔法、油の魔法のいずれか2つをこの場で使えるようになってもらいたい。」

いや、闇でよかっただろ。なんで油出てきたし。


人の何かを求める欲は自分の持っていない“モノ”に対して働くのだろう。この世界には存在しないと思ってたから魔法や某ネコ型ロボットに憧れる人が多いのだ。まぁ結論から言うと、魔法はあった。すごい。展開が急だ、いつものことだが。それとこの場で火の魔法使ったら学校燃えんだろ…とか考えながら校長が魔法使ってるのを観た。ただ、思ったよりショボいのだ。期待ハズレな魔法も今までの話を証明するのにはうってつけ。物理法則を無視してタバコに火をつけるハゲ。見よう見まねで火の魔法を使ってみる俺。なんとも滑稽な、しかしノーベル賞モノのやり取りはなんてことない一室から生み出されていたのだ。カラクリが分からん。


選んだのは先程説明を受けながら学習した火の魔法と、まだ使ったことのない光の魔法。水と風もファンタジーには欠かせないが、俺は昔から火が好きだったのもあってこうなった。油の場違い感が凄かったので見え見えな地雷は踏まないようにした。使用魔法の属性を決定した俺はまたすぐに逃げられないように拘束されて異世界へと旅立ったのであった。

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