人気の無い喫茶店にて……後半
人気のない喫茶店
女性? はコーヒーをゆっくりと飲み余韻に浸っている。
目瞑りコーヒーの香りを楽しんでいるのだろう。
そんな様子に男性は首を傾げている。
「どうしたんですかな?」
「いや、美味しいのかなと」
「失礼な」
「マスタ、ココハドコ」
「お! とうとう小人が記憶すらなくしているぞマスタ」
「嫌だからその呼び方はやめてくれ」
3人でクスクスと笑いテーブル席についている。
そんな様子に女性客は口に手を当て微笑んでいるようにも見える。
(実はあまり美味しくなかったコーヒーをどうしたら美味しく飲めるのかと研究をし、それがけっきょく分からなくて、そのまま飲み干し喉の調子を見ていたに過ぎない)
それを勘違いした3人組は、おっと、二人と一匹だったな。
女性? 客はパンに手を伸ばし一口齧った。
すると目を大きく開け、驚いた様子だった。
「マスター、このパンはなんですの」
(ゴリゴリの声で言われたらドキッとしないな〜もっと可愛い声とか出ないかなー。う〜んなんだかな〜)
【必殺ウルトラスルースキル発動!!】
「はい、そのパンは私の手作りです。お気に召されましたか?」
「えぇ、とても美味しいは。このコーヒーと、いえ、なんでもありませんわ」
「・・・」
マスターは、苦笑いをし紛らわすかのように、新聞を手に取り想像の世界へと旅立った。
「おい、マスター。逃げるなよ」
小声で男性客はマスターに問うがマスターは聞く耳を持たず、目を細め新聞を読んでいる。
そんな様子に小人は相変わらずコーヒーとその他諸々が浮いている袋の中で泳いでわ、その中のものをゴクゴクと飲んでいる。
(こいつ、キモい)
男性客は密かにそう思い、ツンツンと袋を突く。
ゆらゆらと水面が揺れ、波紋を広げている。
まるでこの空間を表しているかのように……。
静けさと、コーヒーの飲まれる音。
収束と緩和
そんな感じである。
女性がコーヒーを飲み終え、会計をするためレジに来た。
「お会計を」
「わかりました、合計五百円になります。千円お預かりいたします。はい、五百円のお返しとなります」
「えぇ、ありがとう」
女性はカバンを手にかけドアを開ける。
振り向きざまにこう言った。
「私、声の低い女の男なんです。また来ますね」
(ん? どっちだ?)
マスターと男性客は首を傾げ、眉を寄せていた。
そんな様子に小人は袋の中でフヨフヨ浮きながらチャプチャプしていた。
(相変わらず汚いな)
男性客はそう思いながら、残り少なくなったコーヒーを飲んだ。
「マスターあの人結局どっちだったんだろうな。女の子って言ってたし、でも声は男の人だよな……」
「世の中には知らなくてもいい事はあるよな」
「・・・」
「マスタアノヒト、カエッタ?」
「あぁ、そうだな。ピコ」
「ハジメテナマエデ、ヨンダ!!」
「マスターよ、なんか小さいのが喜んでるぞ。泳ぎながら」
「そうだな」
新聞に目を落としながら、生返事を返した。
「マスターそれにしても何を見てるんだ? そんなに」
「いや、新聞だよ。ほらここの記事読んで見てくれよ。すごく面白いぞ」
そう言うとマスターはカウンターに座っている男性客にそこの記事を見せた。
「ふむふむ、あー確かに。この記事はなかなかに面白いな」
「だろ、ここの記事は二日前のだけどなかなかに興味をそそられるものだ。まさかこんな近くでこんな事があるなんてな。はは、まったく面白いなー」
「マスターがそんなに楽しそうに話すのは珍しい……。いや、この記事ならそうでもないかな」
「マスタ、ナニガオモシロイ?」
「小人には分かるまい。この面白さが」
「ソウナノ?」
「そうなの!」
マスターは新聞を読み終えたのか、四つ折りにし、カウンターに置いてタバコを吹き始めた。
「マスタ、ケムイ」
「いや、お前今袋の中だろ。そんなの分かるわけないだろうに」
「ア、ソウイエバ、ソウダナ」
「は? なんて言った?」
「モウ、シラナイ!」
「ん〜? 何故か怒っているのは少し分かる」
男性客はパンを齧りながらその様子に苦笑し、さらにパンを食べている。
全く持って日常的で不思議なこの日この頃であった。




