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水上機にロマンを感じてるVRゲームパイロット

作者: 油まみれのペンギン野郎

インドネシア方面のとある島の入江。隠されたバンカーに水上機が隠されていた。


「整備の方はどう?」

「終わっているよ。いつでも行ける。」


パイロットが整備員を確認していた。バンカーにある機体は零式水上観測機(改)。複座の水上機で戦艦等の砲撃を支援する観測機だが、この機体には普通は無い特徴があり、戦闘機と戦える。海軍が敵戦闘機を排除しつつ任務をおこなえる機体をと要求した結果の機体だからだ。(砲撃戦時に敵戦闘機に追い回される時点で終わりでは?と思うがそこは大人の事情で)

性能も旧日本海軍の96艦戦と空戦も出来、F4Fと戦い4機落とした記録もある。(零観も4機落ちた)

そんな実力がある機体を改造を施している。エンジンを栄に交換し、機銃もホ103を無理やり積んで速度と武装が上がった。

おかげで爆撃機や攻撃機を追いかけれるし、撃墜率も上がる。 ついでに逃げれやすい


「要請は来ないですから哨戒行きます?」


無線機前からやって来た機上員が、うちわで扇ぎながらやって来た。


「いないと燃料分赤字なんだが」


あまりいい顔をしないパイロット。要請か依頼を受けないと経費が落ちない。そして100キロ圏内には陸上航空基地があって哨戒くらいは自前でやれる。


「なら出稼ぎ行けよ」


整備員も素っ気なく応える。


「ですね。搭載量が低いですから爆撃任務もいまいちですしねー」

「うるせー」


零観は6番ー60kg爆弾ーを2発しか積めないので成果も低い。すなわち報酬も少ない。


「何か依頼有った?」

「いやまったく無いですね。シンガポール~コロンボ間かトラック~ラバウル間ならいくらかは」

「決まりだな。インド洋に行って来い」


整備員は歩いて無線機に向かい、機上員は「荷物をまとめないとな~」と呟きながら去っていく。勝手に行動予定が決まって、残ったパイロットは頭を掻いて荷物を取りに向かう。


単独でやっているパイロットは華々しい活躍は無い。いかに維持費を稼ぐが重要だった。


「荷物ok、燃料満タン、機銃もよし」


チェックをしながら機体が海に降りて浮かぶ。水上機は穏やかな入江が有ればひとつの基地が出来る。


「いつでも行けると…」


無理やり着けたセルモータのお陰でエンジン起動は簡単。桟橋もどきの横に着けると燃料節約でエンジンを切って機体から降りると機上員を待った。


あーリアルもイマイチなのになんでゲームもイマイチなんだよ


辟易しながら現状を思うが、あの映画のように水上機が好きでやっているのだ。いまさらロマンの無い(彼の目線から)タイヤが生えた機体に興味は無かった。

つらつら考えていれば機上員がやって来たが何か慌ててる。機体に乗り込んでチェックする。


「哨戒機が出ました!」

「即だな!?」


頷く機上員が海図をコクピットに投げ込んで後部座席に乗り込む前にエンジンを起動。プロペラが回り始める。


「乗り込むまで待ってくれませんかね!?」

「無線で聞く!行くぞ‼」


非難を聞き流しながらスロットルを開き、栄エンジンが馬力を引き出して機体は海を滑走し、空に駆け出す。


「目標は?」

「いつものカタリナです。哨戒艇が発見したと」


伝令管でやり取りしながら機首の機銃から2、3発発射。後部も合わせて試射をする。


「俺だ。目標はレーダーで捕捉したそうだ。ただ、客は数人。まとまっていない。」


陸上で留守番の整備員からの肉声無線。


「コースは?」

「ひとつはいつもの。他は分からない」

「わかった‼」


手短に話し終り、離水地点から離れると機体を徐々に上昇させ速度も巡航に下げた。早々と高度を上げないのはこちらの基地を発見させないため。速度を下げたのは燃料を節約するため。誰だって戦闘中に燃料不足は嫌だろう。

高度4000に上がって二人は目標を探し始める。便利な世界のように小型レーダーとか目標タグなんてのは無い。自力で探す。


「何分?」

「だいたい10分くらい?」


もちろんでたらめに飛ぶのでは無く、敵機が目標へ向かう進路を横切るように飛んで、そこから来る方向に大きく蛇行して探す。


(おか)は飛んだの?」

「艦載機が来たので来ないかと」



聞いてないワードがやって来た。


拠点に聞きたいが逆探知されての攻撃はごめんのため、後ろに聞く。


「艦載機って?」

「少数の機体が何もない海上から現れた。どう考えます?」

「そりゃ空母の類いか迂回した大型水上機だろう」

「カタリナがここまで来るのにどれだけ大変か知ってます?」

「ほぼ燃料の半分…」


パイロットの目線の先には小さく点の影。見失わないように目をそらさずじっと見ている。


「…敵だ。やるぞ」

「え?見つけました?」


機体を向けて速度を210kt-約400km-まで上がて、高度を上げる。


「単発機だ。ついでの目標探しの偵察かもしれん」

「みたいですね。見当たりませんし」


目標が大きくなると周囲を自分の目で見ていないのを確認。敵は一機。


「目標も気づいた。」


目標はSBDドーントレス。爆弾もぶら下げているのかやや鈍く、緩い反応。


爆弾をぶら下げていては220ktは出せない。おまけにたかが水上機と舐めている。

実際には同等の速度に武装。旋回性能は零観が格上。奴に勝ち目は低い。


「行くぞ‼」

「どーぞ‼」


500メートルの高度差を利用して頭上からの攻撃。後部の旋回機銃の範囲外から突っ込み、OPLに目一杯映して1連射。13ミリの炸裂弾と云えど一撃では落ちなかった。

相手も機敏さにマズイと気づいて爆弾を廃棄して零観に立ち向かうことを選択。そしてそれは勝率が低い選択だ。

旋回性能の違いを見せつけるように後部機銃の死角に入り込んで再度一撃を食らわせると斜め下で平行する。敵はこちらを見失って飛んでいる。


「あとはよろしく」

「了解」


近距離から後部の旋回機銃が弾を叩き込み、耐えれなくなった機体が爆発して墜ちていく。


ちらりと見てパイロットは周囲を見る。敵機を落とした瞬間を見続けている単調な飛行の瞬間を狙われた話しは昔からのよくある話。切り替えは大事だ。


「カタリナはどこ行った?」

「さぁ?」


敵を見つけたから落とした。で、最初の目標がいない。


「下は何か言っているか?」

「なにも無し。整備員から攻撃された連絡も無し」


高度を取り直して速力を落とす。残燃料は残り7割が良いところで爆撃機を落とした分経費損失は無し。


「軽空母が来ているのは分かるが…方向がなぁ」

「どうします?」

「ドーントレスってどれだけ飛べる?」

「確か650海里でしたね」


往復だから半分の300。爆弾とマージンを取るから250。全速力で動くこともいれると…


「200海里以内か?」

「そうですね。近いかと」


零観の航続距離は540海里(1000キロ)だが、改造した分落ちたので480海里(900キロ)。交戦したので残量は7割、行くとなると交戦も考えられるから使えるのは5割分。となると480海里の1/4=片道120海里が限界。 …結論


「帰るか」

「帰りましょう」


要請は迎撃であって偵察では無い。発見したら燃料代くらいの報酬はもらえるが、居ないと遊覧飛行に成り下がる。つまりは自腹。

二人共フリーの傭兵と言う現実を見て、低確率は避ける行動をしている。


「依頼側から追加情報を聞いてみて?」


帰る進路に向けて指示を出すとあとは警戒飛行なだけ。単調な海岸線を見る飛行。


「返信が来ないですね」

「攻撃喰らったのかな?補給を済ましたら顔を出して見よう」


フリーは後ろ盾は無い。だが、行動は自由。冷たい判断も当たり前なのである。


「あ、カタリナ居たわ」

「ラッキーですね。落としましょう」


4機のカタリナを見つけて攻撃態勢に入る。たかが150ktのカタリナは獲物同然。弾が続く限り落とす。


「行くぞ‼」「カタリナ狩りだぁ!」


これが世界のあちこちで見かける、モブみたいな戦闘の一面である。

彼らの今日1日の結果はドーントレス1、カタリナ2撃墜。

そして彼らに緊急依頼をした陸上航空基地は艦載機とカタリナによる時間差空襲により打撃を受けて航空機使用不可能になり、一月ほど哨戒の穴が空き、穴埋めの為に彼らへ哨戒の依頼が出された。


「退屈な哨戒かよ!」

「これも仕事ですよ」


うんざりな哨戒の依頼にパイロットは吠えたとか…

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― 新着の感想 ―
[良い点] もう少し背景描写があればよいですが、さらっと読めて良かったです。次回作に期待
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